
部署の壁を超えるのが難しい理由——クロスファンクショナルな協働を生み出すには
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部署の壁を超えるのが難しい理由——クロスファンクショナルな協働を生み出すには
「営業と開発が話し合わない」「製造と品質管理がいつも対立する」「バックオフィスと現場の溝が深い」——こういった「部署の壁」の問題は、どの組織でも起きています。
部署の壁は「人の問題」ではなく、多くの場合「構造の問題」です。縦割り組織では、各部署が自分の目標・KPI・予算を持ち、他部署との協働よりも「自部署の成果を最大化すること」が評価されます。この構造のままで「もっと連携してください」と言っても、なかなか変わらない。
クロスファンクショナルな協働を生み出すための組織設計と人事の役割を考えます。
縦割りが生まれる構造的な理由
理由1:目標・評価が縦割りになっている
各部署のKPIが独立していると、「他部署の困り事を助ける」インセンティブが生まれません。「自部署の数字を達成することが評価される」構造では、部署間協力は「空き時間でやること」になります。
理由2:情報が縦割りになっている
「この情報は他部署に知らせなくていい」という判断が積み重なると、「知るべき人が知っていない」状態が常態化します。情報の縦割りは意図的でない場合も多く、「どこに何の情報があるか」の可視化が課題です。
理由3:人間関係が縦割りになっている
「他部署の人を知らない」という状態では、「困ったとき相談できる人脈」がありません。人脈は意図的に作らないと生まれにくいです。
協働を生み出す3つのアプローチ
アプローチ1:クロスファンクショナルチームを作る
「部署を超えたプロジェクトチーム」を意図的に設計することで、「異なる部署の人が一緒に仕事をする経験」が生まれます。
重要なのは「誰が最終決定権を持つか」「どの部署のリソースを何のために使うか」を明確にすることです。権限が曖昧なまま「横断プロジェクト」を作ると、調整コストだけが増えます。
アプローチ2:部署横断の人材異動・兼務
「他部署を経験した人材」が増えると、部署間の「翻訳役」が増えます。1〜2年の他部署経験や、短期の兼務を制度として設計することで、人脈と相互理解が広がります。
アプローチ3:共通目標・評価の設計
「部署を超えた共通目標」を設定し、その達成度を評価に含めることで、「他部署の成功が自分の評価につながる」構造が生まれます。「全社KPIの○○%を部署横断指標にする」という設計が一例です。
人事が果たせる役割
人事は「部署の壁問題」に対して、以下の役割を果たせます。
人事異動の設計:意図的に部署をまたいだ異動を設計することで、「他部署を知る人材」を組織全体に増やします。
研修・対話の機会設計:部署を超えた社員が関わる研修・ワークショップ・対話の場を設けることで、「人脈の種まき」ができます。
評価制度の設計への関与:「部署横断協力」を評価する仕組みを評価制度に組み込むことを、経営・各部署長と一緒に設計します。
よくある失敗:「交流させれば解決する」幻想
部署の壁問題に対して「懇親会を増やす」「ランチを一緒にする」という解決を試みる企業がありますが、「仲が良くなっても構造が変わらなければ協働は起きない」というのが現実です。
「心理的な距離の縮小」と「構造的な協働の設計」の両方が必要です。懇親会は「心理的な距離縮小」には寄与しますが、「協働しやすい構造」を作るには評価・目標・役割の設計も必要です。
おわりに
部署の壁を超えることは、一日では起きません。「今年、2つの部署を跨いだプロジェクトを1つ作る」という小さな一歩から始めてみてください。
組織設計と組織開発の実践をもっと深く学びたい方は、人事のプロ実践講座でご一緒しましょう。
吉田洋介
人事図書館 代表 / 著書『「人事のプロ」はこう動く』
リクルートマネジメントソリューションズで14年間・500社以上の組織人事コンサルティングに従事。 上海駐在を経て2021年に独立。2024年に人事図書館を設立(会員740名超)。 「すべての組織に人事のプロを」を理念に、経営と現場をつなぐ人事の実践知を発信している。
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