採用・選考

面接で「いい人」と思った候補者が活躍しない理由。見極めの精度を上げる考え方

#1on1#採用#評価#組織開発#離職防止

面接で「いい人」と思った候補者が活躍しない理由。見極めの精度を上げる考え方

「面接でいい感触だったのに、入社後に全然パフォーマンスが出なくて。どこで見誤ったんだろう」

採用担当として、こういう気持ちを抱えたことはありませんか。時間をかけて選考をして、一緒に働くチームも期待していて、いざ入社してもらったら「あれ、思っていた人と違う」という感覚。自分の見る目がなかったのか、それとも候補者が「化けた」のか。振り返っても、何がよくなかったのかが見えてこない。

採用面接は、人事の仕事の中でもとりわけ難しい領域だと私は思っています。候補者はわずか30〜60分の面接という舞台で、できる限り自分を良く見せようとします。一方で、面接官も人間ですから、第一印象や話し方の上手さに引きずられてしまうことがある。双方にバイアスと不完全な情報が混在する中で、「この人は自社で活躍できるか」という判断を下さなければならない。これが面接という場の本質的な難しさです。

そして悩ましいのは、間違えたときのコストが非常に高いことです。採用にかかった費用だけではなく、内定から入社までのフォロー、入社後の育成期間、そして期待通りのパフォーマンスが出ない中でのマネジメントコスト。場合によっては離職まで至ってしまい、また採用活動をゼロからやり直すことになる。採用の失敗は、見えにくいところで組織にじわじわとダメージを与え続けます。

この記事では、面接で「いい人」と感じた候補者が入社後に活躍しない構造的な理由を整理した上で、見極めの精度を高めるための考え方と具体的な方法を、一緒に考えてみたいと思います。


なぜ面接で"いい人"が活躍しないのか

ある企業での出来事を、担当者の方が振り返ってくださいました。

「その候補者は、面接で誰もが高評価をつけたんです。話し方も明快で、質問にも的確に答えてくれて、うちの会社への志望理由もしっかりしていた。複数の面接官が全員、『ぜひ採りたい』という評価でした。でも入社後1年経っても、なかなかパフォーマンスが出なかった。」

「そのとき改めて気づいたんです。私たちは"いい人"を採ろうとしていたんじゃないかって。面接が上手い人、印象がいい人、受け答えが明快な人。でも自社で活躍する人というのは、そういう人とは必ずしも一致しない。"いい人"と"活躍する人"は違う。そのことを頭ではわかっていたつもりだったけど、見極めのための訓練をまったくしていなかった、と。」

これは決して珍しい話ではありません。私はリクルートマネジメントソリューションズで14年間、500社以上の採用・組織人事を支援してきましたが、採用の失敗の多くは「その人が悪かった」のではなく、「見極める側の仕組みと訓練が不足していた」ことに起因していると感じています。

「印象の良さ」と「活躍」がずれる構造的な理由

なぜ面接での「いい感触」と、入社後の活躍がずれてしまうのでしょうか。その理由は、面接という場の構造に埋め込まれています。

第一に、面接は「プレゼンテーション能力のテスト」になりやすいという問題があります。

自己PR、志望動機、過去の経験。これらを制限時間内に整理して、相手が聞き取りやすい言葉で伝える。この行為は、まさにプレゼンテーションのスキルそのものです。プレゼンが上手い人は、面接でも評価されやすい。でも実際の業務では、プレゼンが上手いかどうかよりも、地道に問題を分析し続ける力や、チームの中で粘り強く動ける力の方が重要だったりします。

「面接での印象」は、「実際の業務での動き方」と必ずしも相関しない。これが根本的な問題です。

第二に、面接官のバイアスが判断を歪めます。

人間は、自分に似た人を好む傾向があります(類似性バイアス)。出身校が同じ、趣味が合う、話し方が自分と似ている。こうした「共通点」が無意識に「この人はいい人材だ」という評価につながってしまうことがある。

また「ハロー効果」も強く働きます。第一印象が良いと、その後の言動すべてをポジティブに解釈してしまう。逆に最初の印象が悪いと、どんなにいい答えをしても「でも最初から△△だったし」という見方をしてしまう。人間の認知は一貫性を求めるあまり、最初に形成した印象に後の情報を合わせようとする傾向があるのです。

第三に、質問の設計が甘いことが多い。

気になったことを聞く、候補者のエピソードに引っ張られて会話を進める。こういう「非構造化面接」は、面接ごとに聞く内容がバラバラになります。比較の軸が揃っていなければ、候補者間で公平な評価ができません。また「なんとなくいい雰囲気だった」という感覚が評価基準になってしまいます。

採用ミスのコスト感覚

採用の見極めを「なんとなく」で済ませてしまう背景のひとつに、失敗のコストが見えにくいことがあります。

一般的に、中途採用1名の採用コストは、求人広告や人材紹介会社への費用を合わせると、年収の1〜3割程度になることが多いとされています。年収600万円の人材であれば、採用費用だけで60〜180万円程度です。

しかしこれはあくまでも「採用にかかった費用」です。入社後のコストはさらに続きます。オンボーディングにかかる時間と人件費、仕事を覚えるまでの生産性の低い期間、育成のために先輩や上司が割く時間。これらを合わせると、1名の採用ミスが生み出す損失は採用コストの数倍に及ぶことも珍しくありません。

さらに早期離職が起きれば、また同じプロセスをゼロからやり直すことになります。そのコストに加えて、一緒に働いていたチームの士気への影響も、数字には出にくいけれど確実に存在します。

「採用の見極め精度を上げる」ことは、単に「いい人を採る」という話ではなく、組織の資源を守るという意味でも、事業にとって重要なテーマです。

「構造化面接」と「非構造化面接」の精度の差

採用研究の分野では、さまざまな選考手法の予測妥当性(入社後のパフォーマンスをどれだけ正確に予測できるか)が研究されています。

一般的に「構造化面接」は「非構造化面接」に比べて、予測妥当性が高いとされています。構造化面接とは、すべての候補者に同じ質問を同じ順番で聞き、あらかじめ定めた基準で評価する面接手法です。一方、非構造化面接は、面接官が自由に質問を選び、評価も面接官の主観に委ねられる。

非構造化面接が否定されているわけではありませんが、評価の一貫性・再現性・公平性という観点では、構造化された設計の方が優れています。特に複数の面接官が関わる選考では、評価基準が揃っていなければ「Aさんは好きだけどBさんは苦手」という面接官の好みが結果を左右してしまいます。

見極めの精度を上げるためには、面接の「設計」から変えていく必要がある。これが私の考えの出発点です。


採用面接の"あるある"の落とし穴

理屈ではわかっている。でも実際の面接の場では、つい同じ落とし穴に落ちてしまう。そういう経験、ありませんか。

以前、ある企業の人事担当者からこんな相談を受けました。

「1on1をやってみてよかったという話を聞いて、うちでも導入してみたんです。でも半年経っても、手応えがなくて。やり方が悪いんでしょうか」

詳しく聞いてみると、その企業では「1on1が成果を出した」という手段を真似たものの、「なぜその手段が効果的だったのか」の分析がないまま動いていた。組織の課題も、職場の文化も、マネジャーとメンバーの関係性も違う。診断なしに処方箋を書いても、的外れになることの方が多い。

面接の落とし穴も同じ構造をしています。「スター候補が答えていた質問を聞けばいい」「ネットで評判の面接質問集を使えばいい」という発想は、手段を先行させている。大事なのはまず「自社で活躍する人はどういう人なのか」という診断から始めることです。

では具体的に、どんな落とし穴が多いのかを整理しておきます。

パターン①:「なんとなく」の質問で終わっている

面接の準備をするとき、「候補者の職務経歴書を読んでおく」という方は多いと思います。でも「何を聞くか」を事前に設計している方は、意外と少ない。

「気になったことを聞いていく」スタイルの面接は、候補者のペースに引っ張られやすい。特に話の上手い候補者は、「こちらが聞きたいこと」ではなく「自分がアピールしたいこと」に会話を誘導するのが得意です。気づいたら自己PRを30分聞いていた、ということが起きます。

また質問が面接官ごとに違うと、候補者間の比較ができません。Aさんにはストレス耐性について聞いたけど、Bさんには聞かなかった。それでは「どちらのストレス耐性が高いか」という評価ができません。面接が「面接官によって別々の何かを測っているテスト」になってしまっているわけです。

パターン②:面接官が「好き嫌い」で判断している

人事担当者は比較的バイアスへの意識が高い方が多いですが、現場の面接官(マネージャーや事業部長)は、自分の判断がバイアスに影響されていると気づいていないケースが多い。

「なんか違う」「うちの社風に合わなそう」という言葉が出てきたとき、その背景にあるのは「自分と違う人を採りたくない」という類似性バイアスであることがよくあります。

「社風に合う」という評価基準も要注意です。それが「自社の価値観や仕事スタイルとの整合性」を指しているなら有効な基準ですが、「自分たちに似た人」を意味しているなら、多様性を阻む評価になってしまいます。バイアスと正当な評価基準の境界を、面接官自身が意識できているかどうか。ここが大きな分岐点です。

パターン③:「実績を聞く」だけで「行動を聞かない」

「これまでで一番大きな成果は何ですか?」という質問は、よく使われます。でもこの質問だけでは、その成果が「その人の力によるものか」「運や環境によるものか」が見えてきません。

大きな実績を出した人が、自社でも同じ実績を出せるかどうかは別問題です。前職の会社のブランドや、チームの力、市場環境が良かっただけかもしれない。

大事なのは「何をしたか」ではなく、「どのように考え、どのように動いたか」です。行動の背景にある思考プロセスや、困難な状況でどう対応したかを聞くことで、その人の「動き方のパターン」が見えてくる。これが面接で見極めるべき核心です。


では、人事のプロはどう考えているのか

ここからが記事の核心です。見極めの精度を高めるために、人事のプロが実践している考え方と手法を、4つの工夫として整理します。

工夫①:「活躍する人の定義」から逆算して質問を作る

面接の質問を設計する前に、まず答えるべき問いがあります。

「自社で活躍している人は、どんな行動をしているか」

これを言語化せずに面接をしているケースが、実は非常に多い。「優秀な人を採りたい」という目標は持っていても、「うちで言う優秀さとは何か」が定義されていない。

私がこれまで支援してきた企業でも、ハイパフォーマーと呼ばれる人材に共通する行動特性をヒアリングしてみると、会社によって驚くほど違う。あるIT企業では「曖昧な課題を自分で定義し直して動ける人」が活躍していて、ある製造業では「現場のスタッフとの信頼関係を丁寧に作れる人」が高い評価を受けていました。「優秀さ」は会社によって異なるのです。

最初のステップは、ハイパフォーマーへのヒアリングです。

現在、自社で特に活躍していると思われる人を3〜5名選んで、こんな質問をしてみてください。

  • 入社から最初の1年で、どんなことを意識して動いていましたか?
  • 仕事で壁にぶつかったとき、どうやって乗り越えましたか?
  • あなたが大事にしている仕事の流儀や習慣はありますか?

こうしたヒアリングから「活躍する人の行動パターン」を抽出し、それを採用の評価基準(コンピテンシー)として言語化します。

次に、その行動特性が実際に備わっているかどうかを確認できる「行動面接(BEI:Behavioral Event Interview)」の質問を設計します。

行動面接(BEI)とSTAR法

行動面接の基本的な発想は、「過去の行動は、将来の行動を予測する最良の指標になる」というものです。

人は自分の経験をもとに行動パターンを形成します。ストレスがかかった状況での対処の仕方、チームが意見対立したときの動き方。こうした「その人固有の動き方のパターン」は、過去の具体的なエピソードを丁寧に聞くことで見えてきます。

具体的には、STAR法と呼ばれるフレームで聞くことが効果的です。

  • S(Situation:状況):そのとき、どういう状況でしたか?
  • T(Task:課題):あなたが取り組むべき課題は何でしたか?
  • A(Action:行動):あなたは実際にどう動きましたか?
  • R(Result:結果):その結果、何が起きましたか?

例えば、「チームワーク」を評価したい場合、「あなたはチームワークを大事にしますか?」と聞いても意味がありません。誰もが「はい」と答えます。代わりに、「チームの中で意見が割れた経験を教えてください。そのとき、あなたはどんな役割を担い、どう行動しましたか?結果として何が起きましたか?」と聞く。

この質問に対するSTARの各要素が具体的で一貫しているか、そこに見られる行動パターンが自社の評価基準に合致しているかどうか。これが見極めのポイントになります。

面接官として大切なのは、表面的な答えで満足しないことです。「具体的にはどういう状況でしたか?」「そのとき、あなた自身はどう判断したのですか?」「周りはどう動いていましたか?」と掘り下げていくことで、候補者の実際の思考や行動が見えてきます。逆に、具体的なエピソードを持っていない候補者は、追加質問をするほどに話が抽象的・一般論的になっていきます。これも大事な情報です。

工夫②:面接を「評価者間で統一する」ための設計

見極め精度を上げるためには、個々の面接官の「目利き力」だけに頼るのではなく、仕組みで精度を担保する発想が重要です。

その核心が「構造化面接」の設計です。

構造化面接では、以下の3点を事前に決めます。

(1)全候補者に聞く共通質問を決める

選考軸(評価したいコンピテンシー)ごとに、1〜2問の質問を事前に設計しておきます。例えば「問題解決力」「チームワーク」「変化への適応力」という3つの軸を設定したなら、それぞれを測るための質問を準備する。面接中に「何を聞こうか」と考えなくていい状態を作るのです。

共通質問が設計できると、候補者間の比較が格段にやりやすくなります。「Aさんは問題解決力の質問に対してこう答えたが、Bさんはこう答えた。どちらが自社の評価基準に近いか」という議論ができるようになる。面接の「比較可能性」が生まれます。

(2)評価基準(ルーブリック)を事前に決める

「問題解決力」が「高い」とはどういう状態か、「標準」とはどういう状態か。これを言葉で定義しておかないと、面接官ごとに「高い」の基準が違ってしまいます。例えば、「複雑な問題を構造化し、優先順位をつけて対処できる」を4点、「与えられた問題に対してはきちんと対処できる」を3点という形で言語化する。

この作業は手間がかかりますが、ここをきちんと設計した企業は、面接官間の評価のばらつきが大幅に減ります。「なんとなくいい」という印象論ではなく、「この基準に照らしてどうか」という評価になるからです。

(3)複数の面接官で評価を持ち寄る「合議」を設計する

面接後に複数の面接官が評価を共有するプロセスを設けることで、一人の面接官のバイアスが結果を左右するリスクを減らします。重要なのは、互いの評価を聞き合う前に「自分の評価を先に言語化しておく」こと。人間は、最初に強い評価を聞かされると、自分の評価をそちらに引き寄せてしまう傾向があります(アンカリング効果)。評価シートに記入してから共有するなど、各人が独立して評価した後で合議するプロセスを設計することが大切です。

工夫③:「面接官のバイアスに気づく」トレーニング

構造化の設計と同時に、面接官自身がバイアスを持っていることを自覚する訓練が必要です。

類似性バイアスの最もわかりやすい形は、「この人は自分に似ているから好感が持てる」という感覚です。出身大学や出身業界、仕事への姿勢や趣味。自分との共通点を見つけると、評価が上がってしまう。これは意識しないと止められません。

また「彼の話し方、なんか気になった」「この人は自信がなさそう」という感覚が評価に影響することもあります。でもその「気になった」理由が、評価基準に関係のない属性(話し方、外見、訛りなど)であるなら、それは排除すべきバイアスです。

バイアスを減らすための実践として、有効なのが**「評価の根拠を言語化する習慣」**です。

「この候補者は問題解決力が高いと判断した。その根拠は、過去のプロジェクトで予算が30%カットされた状況において、ゼロベースで業務フローを見直し、最終的に目標を103%で達成したという具体的なエピソードがあるから」

このように、評価と根拠をセットで言語化することで、「なんとなくいい」という感覚に引きずられる危険性を減らすことができます。

また、面接に入る前に短いチェックリストを確認する方法も有効です。

  • 候補者と自分に共通点があるかどうかを意識したか?
  • 候補者の話し方や外見に印象を引きずられていないか?
  • 評価の根拠は、具体的な行動事実に基づいているか?

たった3〜4項目でも、意識的に自分の評価プロセスを振り返る習慣が、長期的には見極め精度の向上につながります。チームで面接をしている場合は、全員でこのチェックリストを使う文化を作ることで、組織的なバイアス低減につながっていきます。

工夫④:「選考プロセス全体」で見極める視点

あるとき、内定辞退が相次いだ企業の人事担当者と話したことがあります。

「内定辞退の理由をヒアリングしてみたら、選考中の面接の雰囲気が圧迫的だった、という声が複数出てきたんです。面接官が優秀な候補者を見極めようとして、追い詰めるような質問をしていた。優秀な人ほど他の選択肢もあるから、そういう選考体験には敏感に反応して離れていく。気づいたときには手遅れで、採用した人が欲しかった人ではなくなっていました」

この話には、重要な視点が含まれています。

候補者が選考プロセスの中で見せる行動は、すべて情報になる。

でもこれは双方向で働きます。選考プロセスの中で候補者が見せる姿勢や行動が採用側の情報になる一方で、採用側の振る舞いも候補者にとっての情報になります。選考体験そのものが、「この会社で働きたいか」の判断材料になっているのです。

見極めの視点を広げると、こんな情報が得られます。

  • 応募書類の質:職務経歴書の書き方は丁寧か。自己分析の深さが滲み出ているか
  • 日程調整や連絡の仕方:締め切りを守るか、返信は迅速か
  • 選考中の質問の質:候補者からの質問が、深く考えた上でのものか、場当たり的なものか
  • 複数フェーズでの一貫性:1次面接と2次面接で話す内容に矛盾がないか

1回の面接で見切ろうとするのではなく、選考プロセス全体を通じて「この人の動き方のパターン」を観察する。これが成熟した採用の見極めの発想です。

また、複数フェーズ・複数の面接官が関わる選考設計にすることで、「1人の面接官の印象」に依存しすぎるリスクを分散できます。人事担当者と現場マネージャーでは、見ているポイントが異なります。その違いを掛け合わせることで、より立体的な候補者像を得ることができます。

さらに言えば、「どんな質問が候補者から来るか」は、その人の情報収集力や思考の深さを垣間見るための重要な手がかりです。表面的な情報だけを確認するような質問を繰り返す人と、事業課題や組織の方向性について核心を突いた質問ができる人とでは、仕事への向き合い方が違う可能性があります。

「面接は採用側が候補者を評価する場」という一方向の視点から、「面接は採用側と候補者が互いを知り合う場」という双方向の視点に移ることで、見えてくる情報の量と質が大きく変わります。


明日からできる3つのこと

ここまで読んでいただいて、「面接の見極めって、こんなに奥深いのか」と感じた方もいるかもしれません。ただ、すべてを一度に変えようとすると、何も変わりません。大事なのは、小さな一歩から始めること。

明日からすぐに取り組める3つのアクションを紹介します。

アクション①:直近で採用した人の「活躍の要因」を1人分だけ言語化する

所要時間:30分 必要なもの:紙とペン(またはメモアプリ) 最初の一歩:「最近入社した人の中で、思ったより活躍している人」を1人思い浮かべる

その人が活躍している理由を、具体的な行動エピソードで書き出してみてください。

  • 入社してから何ヶ月で、どんな仕事を任せられるようになったか
  • チームの中でどんな動き方をしているか
  • 困難な場面でどう対処したか

これを書き出してみると、「自社での活躍の定義」の輪郭が少しずつ見えてきます。この作業を3人分やれば、共通するパターンが浮かび上がってくる。それが採用の評価基準の原型になります。

「正解を出す」ことが目的ではありません。「言語化してみる」こと自体が、次の面接での見方を変えるきっかけになります。あなたが思っていた「活躍する人の特徴」と、書き出した後に見えてくる「実際の活躍の要因」が違うことも、よくあります。その気づきが貴重なのです。

アクション②:次の面接で「過去の具体的な行動を聞く」質問を1問追加する

所要時間:準備5分 必要なもの:候補者の職務経歴書 最初の一歩:「仕事で一番苦労した経験を教えてください。そのとき、どう考え、どう動きましたか?」という質問を手帳に書いておく

行動面接(BEI)の質問を1問だけ加えてみることを提案します。面接の構成を全部変える必要はありません。いつも通りの面接に、1問だけ「過去の具体的な行動を聞く質問」を追加するだけでいい。

この質問を追加することで、見えてくる景色が変わります。話が得意な候補者が「抽象的に語る」のか、「具体的なエピソードを持っている」のかが分かる。具体性こそが、その人の行動パターンが見える扉です。

質問例をいくつか置いておきます。

  • 「チームの中で意見が割れた経験を教えてください。あなたはどう動きましたか?」
  • 「仕事で一番プレッシャーを感じた場面を教えてください。そのときどう対処しましたか?」
  • 「うまくいかなかったプロジェクトの経験を教えてください。その後、どう活かしましたか?」

大切なのは、最初の答えで満足しないことです。「もう少し具体的に教えてもらえますか?」「そのとき、あなた自身はどう判断しましたか?」と掘り下げる。そこで候補者の話が深まるか、話が止まるか、その反応も情報になります。

アクション③:面接後に「なぜその評価にしたか」を30秒で言語化する習慣を始める

所要時間:面接直後30秒〜1分 必要なもの:スマホのメモ機能でも可 最初の一歩:面接が終わったらすぐに「この候補者をA評価にした理由は〜〜という行動事実があったから」とテキストに書く

面接直後の評価を言語化するこの習慣は、二つの効果があります。

一つ目は、自分の評価プロセスを可視化できること。「なんとなくいい」ではなく、「具体的に何が良かったのか」を言葉にしようとすることで、バイアスに気づくきっかけになります。「評価の根拠が、スキルではなく"雰囲気"になっていた」と気づいたとき、はじめて改善できます。

二つ目は、複数の面接官で評価を共有するときの質が上がること。言語化されていれば「なぜA評価か」を具体的に共有できる。「なんとなくいい感じがした」という評価は議論できませんが、「○○という行動事実が自社の評価基準に合致していた」という評価なら、建設的に議論できます。採用の意思決定の品質が上がるのです。

この習慣を続けていくと、「自分はこういうタイプの候補者を高く評価しがちだ」というパターンが見えてきます。それがバイアスの発見にもつながる。小さな習慣ですが、積み重ねると確実に見方が変わっていきます。


まとめ

面接の見極めは、一朝一夕には身につきません。バイアスをゼロにすることも、おそらくできない。でも、確実に精度を上げることはできます。

「活躍する人の定義」を言語化する。行動事実を聞く質問を設計する。評価基準を言葉にする。評価の根拠を言語化する習慣をつける。どれも地味なプロセスです。でも、この地味なプロセスをしつこく続けた組織が、結果として採用の精度を高め、組織の成果につなげています。「しつこく成果にこだわり続ける」ことが、人事のプロとしての仕事の姿勢だと私は思っています。

採用の仕事には、大きな意味があります。候補者の人生という観点でも、組織の未来という観点でも、採用はその人の人生に深く関わる仕事です。「この人はここで輝けるか」「この組織とこの人は、お互いにとっていい出会いになるか」。そこに誠実に向き合い続けることが、採用担当者としての仕事の本質だと私は信じています。

見極めの精度を上げることは、候補者のためにも、組織のためにも、誠実な行為です。その一歩を、今日から始めてみてください。


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