「良い質問」が「良い採用」を作る——面接質問設計の考え方
採用・選考

「良い質問」が「良い採用」を作る——面接質問設計の考え方

#採用#評価#経営参画#キャリア#離職防止

「良い質問」が「良い採用」を作る——面接質問設計の考え方

「面接で何を聞けばいいかわからない」「面接官によって聞くことがバラバラで、候補者の比較ができない」「質問への回答が表面的で、その人の本質が見えてこない」——採用面接の質問設計に悩んでいる人事担当者・採用担当者は多いのではないでしょうか。

採用の質を決める大きな要素の一つが、「面接で何を聞くか(質問の設計)」と「どう聞くか(質問の仕方)」です。「良い質問」は「候補者の本質」を引き出し、「活躍可能性の見極め精度」を高めます。

ある消費財メーカーの採用担当者が、こんな体験を話してくれました。「以前は面接官それぞれが思い思いの質問をしていて、最終的に『なんとなく良さそう』という感覚で採用していた。案の定、入社後に『思っていた人と違う』という感想が現場から出てきて、離職率も高かった。採用基準を5つ設定して、それぞれに行動面接質問を作り、面接官全員で共有するようにしたら、入社後の現場の評価が明らかに変わった。『前回採用した人はよく動く』という声が増え、1年後定着率が72%から88%に改善した」と。

今日は、採用面接の質問設計について考えてみたいと思います。


「良い質問」と「悪い質問」の違い

「仮想・未来形」の質問の限界

「もし難しい状況に置かれたら、どうしますか?」という仮想・未来形の質問は、「その人の実際の行動」を見極めることに向いていません。

なぜなら、「理想的な回答」を語ることは誰でもできるからです。「困難な状況でも諦めずに行動します」という回答は、「その人が実際にそうするかどうか」を証明しません。

採用面接で本当に見極めたいのは、「実際にこの人はどう行動してきたか」であり、そのために有効なのが「過去の具体的な行動を引き出す質問」です。行動面接(Behavioral Interview)の前提は「過去の行動パターンは、将来の行動を予測する最良の指標である」という考え方です。「仮想の話」より「実際にしたことの話」の方が、採用後の活躍を予測する精度が高いとされています。

「誘導質問」が生む問題

「うちの会社はチームワークを大切にしていますが、あなたはチームワークは得意ですか?」という誘導質問は、「得意です」という回答しか返ってこない質問です。

「会社が期待する回答を言わなければ」というプレッシャーが候補者にかかる質問は、「本音・本質」を引き出せません。「オープンエンドな質問(複数の回答方向性がある)」が、候補者の素直な経験・思考を引き出します。

誘導質問は「採用する側が聞きたいことを確認する質問」になりがちで、実際の情報量は少ないです。「どんな回答でも評価される可能性がある」という心理的安全性の中で話してもらうことが、候補者の本音を引き出します。

「圧迫的な質問」のリスク

「その程度の経験では不十分ですが」という圧迫的な言い回しや、「本当にそれだけですか?」という否定的な深掘りは、候補者の採用体験(Candidate Experience)を悪化させるリスクがあります。

選ぶ立場であっても、「候補者は会社を見ている」という感覚を忘れないことが重要です。圧迫的な面接を受けた候補者が、「この会社には合わない」「口コミサイトに書こう」という行動を取ることで、採用ブランドに悪影響を与えることがあります。「厳しい質問」と「圧迫的な態度」は別物です。厳しい質問を丁寧な態度で聞くことは問題ありません。


「活躍可能性」を見極める質問の設計

採用基準から「質問を逆算する」

良い面接質問を設計するための出発点は、「この採用で見極めたい採用基準は何か」を明確にすることです。

「自走力(自分で問題を発見して解決できる)」という採用基準があるとすれば——「これまでの仕事で、誰かに言われる前に自分から問題を発見して改善した経験を教えてください。なぜその課題に気づいたのか、どう行動したか、結果どうなったかを聞かせてください」という質問を設計します。

「コミュニケーション力(異なる立場の人と協力して成果を出せる)」という基準なら——「意見が対立した相手と、どう協力関係を築きましたか?具体的な場面を教えてください」という質問になります。

「採用基準→行動指標→質問」という順番で設計することで、「見極めたいことに直結した質問」になります。採用基準が「3つ」あれば「3つの質問」、「5つ」あれば「5つの質問」という形で、面接質問を体系的に設計できます。

「STAR法」で深掘りする

候補者の回答が「概念的・抽象的」にとどまる場合、「STAR法」を使った深掘りが有効です。

  • S(Situation):その状況はどういう状況でしたか?(背景・規模・関係者)
  • T(Task):あなたの役割・課題は何でしたか?(個人の責任範囲)
  • A(Action):あなたは具体的にどんな行動を取りましたか?(本人が実際にしたこと)
  • R(Result):その結果、どうなりましたか?(数字・変化・学び)

「状況・役割・行動・結果」を順番に確認することで、「抽象的な話」を「具体的な経験」に落とし込めます。「チームで頑張りました」という回答に「具体的にあなたはどんな行動を取りましたか?」と深掘りすることで、「本人の貢献度」が見えてきます。

「チームで○○を達成しました」という表現は、「チームの成果」であって「本人の貢献」がわかりません。「あなたが個人としてやったことは何ですか?」という深掘りで初めて、その人の行動パターンが見えます。

「反証を求める質問」で多面的に見る

「こういう強みがある」という候補者の自己評価に対して、「逆にこの強みを発揮できなかった場面がありますか?」と反証を求めることも、多面的な見極めに有効です。

「失敗した経験」「うまくいかなかった経験」を聞くことで、「失敗からの学習能力」「自己認識の深さ」「誠実さ」を見極めることができます。失敗経験を語れる候補者は、「自分の課題に向き合える人」という評価につながることが多いです。


目的別の質問例

「自走力・主体性」を見る質問

「これまでの仕事で、指示を待つのではなく、自分から課題を見つけて改善した経験を教えてください。なぜその課題に気づいたのか、どう行動したか、結果どうなったかを聞かせてください」

「新しいことを始めるとき、前例がない・反対される状況に直面した経験はありますか?その時、どうしましたか?」

深掘りのポイント:「なぜそのタイミングで動いたのか」「周囲への働きかけはどうしたか」「結果を数字で言えますか」

「困難への対応」を見る質問

「これまでのキャリアで最も難しかった局面を教えてください。どういう状況で、どう乗り越えましたか?振り返って、今ならどう動くかという点で変わることはありますか?」

「プロジェクトや仕事で、うまくいかなかった(失敗した)経験を教えてください。何が問題で、そこから何を学びましたか?」

深掘りのポイント:「失敗を他責していないか」「学びを次に活かしたか」「感情ではなく行動として語れるか」

「学習意欲・成長志向」を見る質問

「直近1年で、仕事以外で自発的に学んだことや取り組んだことがあれば教えてください。それはなぜですか?」

「この仕事での成功イメージと、そのために必要だと考えているスキル・知識の課題を教えてください」

深掘りのポイント:「学ぶ理由が内発的か外発的か」「具体的に何を学んだか・どう活かしたか」「自分の課題を正確に認識しているか」


プロの人事はこう考える:質問設計の実践

「評価基準も同時に設計する」

良い質問を設計したら、「どんな回答がA評価・B評価・C評価か」を同時に定義することが重要です。

「A評価:具体的な状況・行動・結果が語られ、本人の貢献が明確。困難への対処や学びも含まれる」「B評価:エピソードはあるが、本人の行動よりチームの行動が中心。深掘りで本人の貢献が少し見えてくる」「C評価:抽象的な話のみで、具体的なエピソードが出てこない。深掘りしても概念的な回答が続く」——この評価基準を事前に設定することで、「評価者によるブレ」を減らせます。

評価基準の定義がないと、「この候補者は良い」という感想が評価者によって異なり、面接官会議でのすり合わせに時間がかかります。事前の定義が「採用の標準化」を進めます。

「質問リストを全社で共有する」

良い面接質問を設計したら、「全社の面接官が使えるように共有する」ことで、「採用面接の品質の標準化」が進みます。

「採用基準別の推奨質問リスト」「深掘り質問の例(STAR法の問い)」「評価基準の定義」「よくある誘導表現の注意点」——こういった「採用の知的資産」を整備・共有することで、「面接官のスキルに依存しない採用プロセス」が作られます。

特に「初めて面接官を担当する管理職」への共有が重要です。「何を聞けばいいかわからない」という不安を持つ面接官が、質問リストを持つことで「採用への参加意欲」と「面接の質」が上がります。


明日からできる3つのこと

1. 「次の採用の採用基準を5つ選ぶ」(所要時間:1時間)

次の採用で最も見極めたい要素を5つ選び、それぞれを「具体的な行動指標」に落とし込んでみましょう。「コミュニケーション能力」という抽象概念より、「異なる立場の人と協力して成果を出した行動」という具体的な指標の方が、質問設計につながります。

5つの採用基準を決めたら、「なぜこの基準が必要か(このポジションで活躍するためにどう必要か)」を1行ずつ添えておくと、面接官に共有したときに意図が伝わりやすくなります。

2. 「採用基準ごとに1つの行動面接質問を作る」(所要時間:1〜2時間)

5つの採用基準それぞれに対して、「過去の具体的な行動を引き出す質問」を1問ずつ作ってみましょう。「STAR法を引き出せる質問かどうか(状況・役割・行動・結果が答えに含まれそうか)」をチェックしながら作成することで、質が上がります。

作成した質問を自分で「候補者として答えてみる」という練習が、「この質問は答えにくい・答えやすい」の判断につながります。答えにくい質問は、「なぜ答えにくいか」を考えることで改善できます。

3. 「最近の面接を振り返る」(所要時間:30分)

直近の面接で「この候補者の本質がよくわかった」「あまりわからなかった」と感じたケースを振り返り、「何が違ったか」を分析してみましょう。「わかった理由・わからなかった理由」を言語化することで、質問設計の改善ポイントが見えてきます。

「わかった面接」では何を聞いていたか——そこに「良い質問のパターン」が隠れていることが多いです。「よくわかった面接の質問を言語化して、次の面接で再現する」という積み重ねが、採用面接の質を上げていきます。


まとめ:「質問の質」が「採用の質」を決める

採用面接の質を高める最もコスパの良い投資の一つが、「質問の設計と評価基準の整備」です。

「良い質問」は「良い情報」をもたらし、「良い情報」が「良い意思決定」につながります。採用後の「定着率向上・早期戦力化」という経営効果は、「面接の精度」から始まります。採用コストを最大化するためにも、「質問の設計」への投資は確実に元が取れます。

面接質問を「なんとなく」ではなく、「採用基準から逆算して設計する」——この一手間が、採用の精度を大きく変えます。採用は「感じ」ではなく「基準と情報」で決める——この考え方の実践が、「再現性のある採用」を作っていきます。


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吉田洋介

人事図書館 代表 / 著書『「人事のプロ」はこう動く』

リクルートマネジメントソリューションズで14年間・500社以上の組織人事コンサルティングに従事。 上海駐在を経て2021年に独立。2024年に人事図書館を設立(会員740名超)。 「すべての組織に人事のプロを」を理念に、経営と現場をつなぐ人事の実践知を発信している。

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