ワークフォースプランニング——「人が足りない」を事前に防ぐ
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ワークフォースプランニング——「人が足りない」を事前に防ぐ

#採用#組織開発#経営参画#離職防止#マネジメント

ワークフォースプランニング——「人が足りない」を事前に防ぐ

「気づいたら採用が追いつかない状態になっていた」「重要なポジションに適切な人材がいなくて、事業計画が遅れた」——「人材の不足」という問題に後追いで対処し続けている企業は多い。

ワークフォースプランニング(人員計画)は「事業の成長に必要な人材を、いつ・どこに・どれだけ確保するか」を先を見越して計画する人事の戦略的機能です。でもこれを「戦略的に」実施できている企業は少なく、「欠員が出たら採用する」という後追い型の人員管理から抜け出せていない企業が多い。

この記事では、ワークフォースプランニングを人事の実務に組み込むための考え方をお伝えします。


なぜワークフォースプランニングは機能しにくいのか

「事業計画と人材計画の分断」

多くの企業で「事業計画(売上・利益・事業展開)」と「人材計画(採用数・育成方針)」は別々に作られており、連動していません。

事業計画で「来期に新規事業を立ち上げ、3年後に売上○億円を達成する」という計画を作っても、「その計画を実現するために何人のどんな人材が必要か」という問いが人材計画に反映されていなければ、「計画はあるが人材がいない」という状況が生まれます。

「事業計画ができたら、その実現に必要な人材を採用・育成するのが人事の仕事」という分業構造が、「計画は立てたが人材が揃わない」という問題の根本原因です。

「短期採用計画」しか持っていない

多くの企業の人材計画は「今期の採用予定人数」という1年以内の短期計画しかありません。

でも重要なポジションへの人材育成には最低でも2〜3年かかります。「3年後のこのポジションに必要な人材を、今から育てる・採用する」という中長期の人材計画なしには、「急に重要なポジションの人材が足りなくなる」という事態が繰り返されます。

「人材の過不足」の可視化ができていない

「どの部門・スキル・役職で人材が不足しているか」「どの部門は余剰になっているか」という人材の過不足の現状把握ができていない企業が多い。

「何となく採用が必要」ではなく「○の職種に○名不足しており、○の部門に○名余剰が生じている」という定量的な把握が、ワークフォースプランニングの出発点です。


よくある失敗パターン

失敗1:「採用数だけ」を人員計画として管理する

「今期は○名採用する」という採用数の計画のみを持ち、「どんなスキル・役割の人材が何名必要か」の詳細と「その人材をどう育成・確保するか」の方法が計画に含まれていない。

「人数」だけでなく「スキルセット・役割」を具体化したワークフォースプランが、実質的な人材確保につながります。

失敗2:「計画を作るが更新しない」

年初にワークフォースプランを作成するが、事業環境の変化(新規プロジェクト開始・事業縮小・技術変化)に応じて計画を更新しない。

事業計画は年度途中でも変化します。それに連動して人材計画も更新されなければ、「古い計画のまま採用・育成が進む」という状況が生まれます。

失敗3:「人材計画が現場に届いていない」

人事が作成したワークフォースプランが現場マネージャーに共有されず、「人事は採用を進めているが、現場は何をいつ採用したいのかを人事が知らない」という断絶が起きる。

ワークフォースプランは「人事が単独で作るもの」ではなく「各部門のニーズを集約して人事が統合するもの」です。現場との双方向のコミュニケーションが計画の実効性を高めます。


プロの人事はこう考える

「3年間の人材ポートフォリオ計画」の策定

プロの人事がワークフォースプランニングを実践するとき、「今期の採用数」だけでなく「3年間の人材ポートフォリオ(どのスキル・役職の人材が何名必要か)」を策定します。

ステップ1:事業計画(3年間の成長目標・事業展開)を確認する ステップ2:その計画を実現するために必要な人材要件(職種・スキル・人数)を特定する ステップ3:現在の人材の状況(在籍人数・スキル・退職リスク)を確認する ステップ4:必要人材と現在の人材のギャップを算出する ステップ5:ギャップを埋めるための手段(採用・育成・異動・外部委託)を決定する

このプロセスが「先を見越した人材確保」を可能にします。

「スキルギャップ分析」を定期的に実施する

現在の組織が持っているスキルセットと、将来の事業に必要なスキルセットの差(スキルギャップ)を定期的に分析することが、ワークフォースプランニングの精度を高めます。

「現在の社員のスキルマップ」と「3年後の事業に必要なスキルマップ」を比較することで、「採用で補うべきスキル」と「育成で補えるスキル」が見えてきます。

「内部人材の活用」を外部採用と並行して考える

ワークフォースプランニングでは「外部採用」だけでなく「内部人材の異動・育成・再配置」も重要な手段です。

「新規事業に必要なスキルを持つ人材が、他の部門に眠っていないか」「今のポジションでは輝けていないが、別のポジションで活躍できる可能性がある人材はいないか」——内部人材の発掘が、採用コストの削減と既存社員のモチベーション向上の両方につながります。

「重要ポジションの後継者計画」を人員計画に組み込む

ワークフォースプランニングの重要な要素として「サクセッションプランニング(後継者計画)」があります。

「重要ポジションの担当者が突然離職・転職・病気になった場合、誰がカバーできるか」という後継者の特定と育成計画を、ワークフォースプランニングに組み込むことが、組織の「人材リスク管理」につながります。

「後継者がいないポジション」を特定し、「後継者を育てる・採用する」計画を持つことが、「人材の単一障害点」を減らします。


明日からできる3つのこと

1. 「3年後の事業計画」に必要な人材要件を経営と確認する(1〜2時間)

自社の3年後の事業計画(売上・事業展開・組織規模)を担当の経営幹部に確認し、「その計画を実現するために、3年後どんな人材が何名必要か」を一緒に考えてください。この対話がワークフォースプランニングの起点になります。

2. 「現在のスキルマップ」と「3年後に必要なスキルマップ」のギャップを試算する(2〜3時間)

主要な職種・部門について「今持っているスキル」と「3年後に必要なスキル」の差を書き出してください。「育成で補えるギャップ」と「採用で補うべきギャップ」を分類することで、採用・育成計画の方向性が見えます。

3. 「後継者がいない重要ポジション」を特定する(1時間)

自社の重要ポジション(事業を左右する影響力を持つポジション)をリストアップし、「後継者が誰もいないポジション」を特定してください。そこが「最も優先して人材育成・採用に投資すべき領域」です。


まとめ

ワークフォースプランニングは「今期の採用人数を決めること」ではなく、「事業の未来に必要な人材を今から準備すること」です。

「経営数字から発想する両利きの人事」——ワークフォースプランニングは、事業戦略を人材戦略に翻訳する人事の最も根幹的な仕事です。「後追い」ではなく「先手を打つ」人材確保が、事業成長を人材面から支える人事のあるべき姿です。


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吉田洋介

人事図書館 代表 / 著書『「人事のプロ」はこう動く』

リクルートマネジメントソリューションズで14年間・500社以上の組織人事コンサルティングに従事。 上海駐在を経て2021年に独立。2024年に人事図書館を設立(会員740名超)。 「すべての組織に人事のプロを」を理念に、経営と現場をつなぐ人事の実践知を発信している。

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