
求人票で候補者を惹きつける書き方——「応募が来ない」を変えた人事の実践
求人票で候補者を惹きつける書き方——「応募が来ない」を変えた人事の実践
「求人票を出しているのに応募が来ない」「スカウトを送っても反応がない」——そんな悩みを抱えたことはないでしょうか。
実は、求人票の改善で応募数が2〜3倍になった企業は珍しくありません。でも多くの人事担当者が「求人票は人事部の仕事」として、採用コミュニケーションの核心であることを見過ごしがちです。
この記事では、候補者の視点から求人票を見直し、読まれる・伝わる・応募される求人票を作るための考え方と実践をお伝えします。
なぜ求人票は読まれないのか
求人票が機能しない根本的な原因は、「書く側の論理」と「読む側の論理」のズレにあります。
構造的原因1:会社の説明を並べているだけ
多くの求人票は「会社概要→事業内容→仕事内容→求める人材→待遇」という構成で作られています。これは会社紹介の論理であって、候補者が知りたいことの順番ではありません。
候補者が求人票を開いた瞬間に考えていることは、「自分に合う仕事か」「この会社で働いたら自分の人生はどう変わるか」という2点です。その答えが冒頭で得られないと、候補者はすぐに画面をスクロールするか、ページを閉じます。
転職サイトでの平均閲覧時間は20〜30秒という調査もあります。その短時間で「もう少し読んでみよう」と思わせられるかどうかが勝負です。
構造的原因2:どの会社にも当てはまる言葉しか使っていない
「成長環境があります」「裁量を持って働けます」「チームワークを大切にしています」——これらの言葉は否定できないし間違ってもいない。でも「だからなんですか?」と問われると答えに詰まる言葉でもあります。
ある人事の方が求人票を見直すとき、「うちの会社じゃなくても書けることは全部削った」と話していました。その結果、文字数は半分になりましたが、応募数は3倍になりました。差別化されていない言葉は、候補者の目には見えないも同然です。
構造的原因3:誰に向けて書いているかが不明確
「幅広く応募してほしい」という気持ちはわかります。でも「全員に刺さる求人票」は「誰にも刺さらない求人票」です。
たとえば「人事経験者歓迎」と書かれた求人票と、「新卒採用の立ち上げを任せたい人事担当者を探しています。創業10年のメーカーで、これまで人事が採用に本腰を入れてこなかった状態から、採用のゼロイチを経験できます」と書かれた求人票では、読んだ候補者の感情が全く違います。
後者は特定の人に刺さり、前者に合わなかった人を除外することを恐れていません。「自分のことを書いている」と感じた候補者は、強い応募意欲を持ちます。
よくある失敗パターン
失敗1:業務内容を箇条書きで羅列する
「採用業務全般」「研修企画・運営」「労務管理」「制度設計」——こういった箇条書きの羅列は、情報量はあるように見えて実は何も伝えていません。実際にどんな状況で、何を考えながら仕事するのか、どんな面白さや難しさがあるのかが全く見えてこないからです。
箇条書きを「物語」に変えてみてください。「今期は採用人数を昨年の倍にする計画が動いています。その中で採用ブランディングをゼロから設計するミッションを担います」のように書くと、候補者は自分が働く姿を具体的にイメージできます。
失敗2:会社の都合だけを書く
「即戦力を求めます」「リーダーシップがある方」「自走できる方」——これらは会社が候補者に求めることです。でも候補者が知りたいのは「この会社で何が得られるか」「どんな環境で働けるか」「誰と一緒に働くのか」です。求める条件と同じくらい、「候補者が得られること」を明示することが大切です。
失敗3:更新されていない情報が放置されている
「急募」と書かれているのに3ヶ月前から掲載されている求人、「創業〇〇周年」の年数が古いまま、写真は数年前のもの——こういった情報の古さは候補者に「この会社は採用に本気でないのかな」という印象を与えます。求人票は生きたコンテンツとして定期的に更新することが大切です。
プロの人事はこう考える
知る:求人票を読む候補者の心理を理解する
求人票を改善するには、まず「候補者がどんな心理状態で求人を見ているか」を理解することが必要です。
転職を考えている人の多くは、現職で何らかの不満や違和感を感じています。「このままでいいのか」「次のキャリアをどうするか」という葛藤の中で求人を見ています。そこに「あなたが感じている課題を、うちで解決できます」というメッセージが届くと、候補者の心が動きます。
プロの人事は、求人票を書く前に「活躍している社員が転職を決めた理由」を聞きます。「なぜ前職を辞めたか」「なぜうちを選んだか」——その言葉の中に、同じような候補者が響くメッセージのヒントがあります。
考える:「活躍する人の条件」から逆算する
求める人材を書く際に「経験5年以上」「コミュニケーション能力」などの形式的な条件を並べるのではなく、「自社で活躍する人はどんな人か」から逆算します。
ある製造業の人事担当者が行ったことは、直近3年で活躍した人事担当者5人の「入社前の状態」を整理することでした。全員に共通していたのは「現場との対話を楽しめる人」「数字に苦手意識がない人」「制度を作ることより運用を大切にする人」という傾向でした。これを求人票の「こんな方に来てほしい」という文章に落とし込むと、面接の手前で自然とミスマッチが減りました。
動く:具体的に書くための「5W1H+感情」フォーマット
求人票を書く際に意識するフォーマットとして「5W1H+感情」があります。
- Who:誰と一緒に働くのか(チームの雰囲気・人数・バックグラウンド)
- What:具体的に何をするのか(業務内容を物語で)
- Where:どんな環境で働くのか(場所・設備・リモート可否)
- When:どのタイミングのミッションか(今この会社が向き合う課題)
- Why:なぜこのポジションを作ったのか(背景と意図)
- How:どうやって進めるのか(自由度・サポート体制)
- 感情:働いてどう感じるか(やりがい・難しさ・面白さの正直な記述)
この枠組みで書くと、自然と「具体的で候補者に刺さる」求人票になっていきます。
振り返る:数字でPDCAを回す
求人票の改善は、効果を数字で測りながら進めることが大切です。「表示回数→クリック率→応募率→面接通過率→採用率」という変換率を見ると、どの段階に課題があるかが見えてきます。
求人票を書き直した後に応募数が変化したか、どんな人が応募してくれたかを確認する。この観察から「どの言葉が刺さったか」「どの情報が応募者の後押しになったか」が見えてきます。経営への報告では、「求人票改善により1人あたり採用コストが〇%削減」という数字が説得力を持ちます。
明日からできる3つのこと
1. 自社の求人票を「候補者の目線」で読み直す(30分)
明日、まず自社の求人票を候補者のつもりで読んでみましょう。「30秒読んで、続きを読みたいと思うか」「自分がこの仕事をしている姿をイメージできるか」という2点を確認してください。「何か物足りない」と感じる箇所が必ずあるはずです。そこが改善の起点です。
2. 活躍している社員に「なぜ入社したか」を聞く(1時間)
採用したいポジションで活躍している社員を1〜2名選んで、インタビューをしましょう。「なぜ前職を辞めたか」「なぜうちを選んだか」「入社前に期待していたこと」「入社後に予想外だったこと」——この4つを聞くだけで、求人票に書くべき言葉のヒントが得られます。
3. 冒頭の2〜3文を書き直す(15分)
求人票の最初の2〜3文だけを書き直してみましょう。「会社紹介から始まる文章」を「候補者の状況・悩みから始まる文章」に変えます。たとえば「私たちは創業〇〇年の会社です」ではなく「採用の仕組みがないところから、採用を作り上げることに興味はありますか」という書き出しに変えるだけで、読まれ方が変わります。
まとめ
求人票は「会社の説明書」ではなく「候補者への手紙」です。読んだ候補者が「自分のことを言っている」と感じられるかどうかで、応募数も質も変わります。
「手段ありきで人事を動かしてはいけない」という考え方があります。求人票も同じです。「フォーマットを整える」「媒体の推奨文字数に合わせる」といった形式的な作業ではなく、「誰に何を伝えたいか」という目的から逆算することが大切です。
最初から完璧な求人票を書ける人はいません。活躍社員への聞き取りを重ね、候補者の反応を見ながら少しずつ磨いていく。その積み重ねが、自社らしい採用コミュニケーションを生み出します。
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吉田洋介
人事図書館 代表 / 著書『「人事のプロ」はこう動く』
リクルートマネジメントソリューションズで14年間・500社以上の組織人事コンサルティングに従事。 上海駐在を経て2021年に独立。2024年に人事図書館を設立(会員740名超)。 「すべての組織に人事のプロを」を理念に、経営と現場をつなぐ人事の実践知を発信している。
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