OJTトレーナーを育てなければ新人育成は機能しない
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OJTトレーナーを育てなければ新人育成は機能しない

#評価#研修#組織開発#経営参画

OJTトレーナーを育てなければ新人育成は機能しない

「新人を現場に配属したら、OJTで育ててくれると思っていたのに、3ヶ月後に『あの子、全然使えなくて』と言われた」——そんな経験はないでしょうか。

OJTは多くの会社で「育成の主軸」と位置付けられています。でも実態を聞くと、「OJTトレーナー(指導役)の育て方を考えていなかった」というケースが大半です。

この記事では、OJTを機能させるための「OJTトレーナー育成」の考え方と実践をお伝えします。


なぜOJTは機能しないのか

OJTが機能しない理由は、「OJTをやれ」と言うだけで、「どうやるか」を教えていないことにあります。

構造的原因1:「背中を見て覚えろ」の文化が残っている

自分たちがそうやって育ってきたから、部下にも同じようにする——この再生産が続く限り、OJTは機能しません。「仕事を見せる・やらせる・フィードバックする」という基本的なサイクルを言語化し、トレーナーに教えなければ、トレーナーは自分が育ってきた方法を再現するしかありません。

「背中を見て覚えろ」が有効だったのは、仕事の複雑度が低く、暗黙知の伝達が比較的容易だった時代の話です。現代の仕事は複雑で変化が速い。言語化しないと伝わらないことが増えています。

構造的原因2:OJTトレーナーへの負担が高すぎる

「自分の業務もあるのに、新人の面倒まで見るのか」——OJTトレーナーに任命された若手・中堅社員のリアルな声です。OJTは追加業務として課せられることが多く、自分の業務をこなしながら新人を指導する余裕が生まれにくい。この状態では、OJTの質が上がるはずがありません。

OJTトレーナーを支援する仕組み——業務負荷の調整、トレーナー同士のコミュニティ、人事からの定期的なサポート——がなければ、OJTは形式だけのものになります。

構造的原因3:OJTトレーナーの「育成力」を評価していない

多くの企業で、OJTトレーナーを担うことは「評価上のプラスになりにくい」実態があります。良いトレーナーであっても、それが評価・報酬に反映されないと、「損な役回り」という感覚が生まれます。

組織として「人を育てる力」を評価する仕組みを持てるかどうかが、OJTの文化を根付かせる鍵です。


よくある失敗パターン

失敗1:OJTトレーナーを「仕事ができる人」で選ぶ

仕事ができる=教えることができる、は成立しません。高いパフォーマンスを持つ人は暗黙知のレベルが高く、「なぜ自分がこうするのか」を言語化することが苦手なケースがあります。

OJTトレーナーに必要なのは「教えること・関わることへの関心」と「忍耐強く付き合える姿勢」です。これは仕事のパフォーマンスとは別の能力です。OJTトレーナーの選定基準に「育成適性」を加えることが大切です。

失敗2:OJTトレーナーに何も教えずに任命する

「あなたが今年の新人のOJTトレーナーです。よろしく」と伝えるだけで、何をすれば良いかを教えないケースがよくあります。トレーナー向けの事前研修・マニュアル・チェックリストがないと、トレーナーは自己流で対応するしかありません。

失敗3:OJTの進捗を人事が確認しない

OJTを現場に丸投げして、3ヶ月後に「うまくいきませんでした」と報告を受けるパターンです。月1回でいいので「OJTどうですか?」という確認の機会を設けるだけで、早めに問題に気づいて対処できます。


プロの人事はこう考える

知る:OJTトレーナーが「困っていること」を把握する

OJTトレーナー育成を設計する前に、今現在のOJTトレーナーが何に困っているかを知ることが先決です。

「新人に何を教えればいいかわからない」「フィードバックをすると落ち込まれてしまう」「褒め方・叱り方がわからない」「自分の仕事が滞っている」——これらの困りごとに対応する研修・サポートを設計することが、効果的なOJTトレーナー育成につながります。

考える:OJTの「型」を作る

OJTを機能させるには、「型」を作ることが重要です。トレーナーによってやり方がバラバラだと、新人の成長にムラが生まれます。

型の骨格は3つのサイクルです。

  1. 「やって見せる」(モデリング):まずトレーナーが実際にやっている姿を見せる。ポイントを声に出しながら実演することで、暗黙知が可視化されます。

  2. 「一緒にやる」(スキャフォールディング):次に新人と一緒にやります。「ここはどうすると思う?」という問いかけを入れながら、考える機会を作ります。

  3. 「やらせてみる+フィードバック」(練習と振り返り):新人に一人でやらせ、その後に「良かったこと」と「改善点」をセットでフィードバックします。良かった点を先に伝えることが、次の挑戦への意欲につながります。

動く:OJTトレーナー向け半日研修を設計する

人事が設計すべきは、OJTトレーナー向けの「スターター研修」です。内容は以下の3部構成が有効です。

①OJTの目的と自社での期待(30分):「なぜOJTが大切か」「今年の新人に期待すること」を人事から共有します。

②教え方の基本(60分):「やって見せる→一緒にやる→やらせる+FB」の型を実習形式で体験します。ロールプレイを取り入れると効果的です。

③OJT計画を立てる(30分):トレーナー同士で、今期の新人に対するOJL計画を作ります。「最初の1ヶ月で何を教えるか」を具体的に書き出すことで、現実的な計画になります。

振り返る:OJTの成果をトレーナーにフィードバックする

半年後・1年後に新入社員の成長を確認したとき、そのフィードバックをOJTトレーナーに届けることが大切です。「あなたが丁寧に教えた結果、〇〇さんはこんな成長をしました」という事実は、トレーナーにとって大きな喜びになります。そして翌年以降も良いトレーナーとして関わってもらうための動機づけになります。


明日からできる3つのこと

1. 今年のOJTトレーナーに15分ヒアリングする(30分)

今のOJTトレーナーに「実際にOJTをやっていて、困っていることはありますか?」と聞きます。この一歩が、サポートのスタート地点になります。

2. OJTの「型」を1ページにまとめる(1時間)

「やって見せる→一緒にやる→やらせる+FB」の3ステップを1ページのチェックリストにまとめます。簡単なものでいいです。OJTトレーナーが「何をすればいいか」を確認できるツールがあるだけで、行動が変わります。

3. OJT月次チェックインを設ける(15分×月1回)

月1回、人事担当者がOJTトレーナーと新入社員にそれぞれ短時間話す機会を設けます。「今月のOJT、どうですか?」という軽いチェックインだけでも、問題の早期発見と、トレーナーへの応援メッセージになります。


まとめ

OJTを「現場に任せる」だけでは、育成の質は運任せになります。人事がOJTトレーナーを育て、支援し、評価する仕組みを作ることで、会社全体の育成力が底上げされます。

「すべての組織に人事のプロを」という言葉があります。OJTトレーナーを育てることは、組織の中に「育てる力を持つ人」を増やすことです。それは人事のプロが果たすべき役割の一つだと思っています。


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吉田洋介

人事図書館 代表 / 著書『「人事のプロ」はこう動く』

リクルートマネジメントソリューションズで14年間・500社以上の組織人事コンサルティングに従事。 上海駐在を経て2021年に独立。2024年に人事図書館を設立(会員740名超)。 「すべての組織に人事のプロを」を理念に、経営と現場をつなぐ人事の実践知を発信している。

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