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OJTが機能しない組織に共通すること。「担当をつけた」だけで終わらせないための仕組みの考え方

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OJTが機能しない組織に共通すること。「担当をつけた」だけで終わらせないための仕組みの考え方

「OJT担当をつけたのに、3ヶ月で新人が辞めてしまって……何がいけなかったのか」

こういう言葉を、人事担当の方からお聞きすることがあります。新入社員の採用に時間をかけ、いざ入社してもらったにもかかわらず、3ヶ月も経たないうちに退職の申し出があった。「OJT担当の先輩はちゃんとついていたのに」「制度として整えていたはずなのに」という戸惑いと、自分自身が何をどう間違えたのかわからないという焦り——そういった感情を抱えながら、原因を探っている方が少なくありません。

OJTが機能しない理由は、「OJT担当者の意識が低い」とか「先輩社員が教え下手だった」という個人の問題に帰着しがちです。でも実際には、そこには構造的な問題が潜んでいることがほとんどです。「人をつけた」ことで仕組みができたと思ってしまう。担当者への事前説明がない。ゴールを誰も定義していない。人事がフォローアップを設計していない。これらが重なったとき、OJTは形だけの制度になってしまいます。

今回の記事では、OJTが機能しない組織に共通するパターンを整理しながら、「担当をつけた」だけで終わらせないための仕組みをどう考えるか、一緒に考えてみたいと思います。


なぜ「OJT担当をつける」だけでは機能しないのか

ある企業の人事担当者から聞いた話

ある企業の人事担当の方からお話を伺いました。

「入社2年目の新人が3ヶ月で辞めてしまったんです。OJT担当の先輩も一生懸命やってくれていたと思うんですよ。でも退職理由を聞いたら、『わからないことが聞けなかった』『何をゴールにすればいいのかわからなかった』という言葉が出てきて。先輩は悪い人じゃなくて、ただ忙しくしていただけで、新人のほうがその忙しさを見て声をかけられなくなっていたみたいで」

「振り返ってみると、OJT担当に任命するときに渡したのって、新入社員のプロフィールシートだけだったんです。『よろしくお願いします』と伝えた30秒が、私とOJT担当者の唯一の打ち合わせで」

「先輩社員は自分なりに一生懸命やってくれていたんだと思います。でも、何を教えればいいか、どう関わればいいか、何も渡せていなかった」

この話を聞いたとき、「これは先輩社員の問題ではなく、人事の設計の問題だ」とはっきり感じました。OJTを機能させるための設計が、組織の中に存在していなかった。それが根本的な原因だったのではないかと私は思っています。

「人をつけた」ことと「仕組みを作った」ことは別のこと

多くの組織で、OJTの「制度」はすでに存在しています。新入社員には先輩社員をつける。それが当たり前のやり方として根付いている。でも「人をつけた」ことと「仕組みを作った」ことは、まったく別のことです。

仕組みというのは、「誰がやっても一定以上の品質が担保されるように設計されたもの」だと私は理解しています。OJTに当てはめると、次のような問いに答えがある状態が「仕組みがある」ということになるのではないでしょうか。

  • 「入社後3ヶ月で、新入社員は何ができるようになっているべきか」が定義されているか
  • 「OJT担当者は、どんなふうに新入社員に関わればいいか」が共有されているか
  • 「OJTがうまくいっているかどうか」を誰が、どのタイミングで確認しているか

この3つに対して明確な答えがない状態で「OJT担当をつける」だけをやっていても、機能するかどうかは担当者の個人的なセンスと経験値に依存してしまいます。

「背中を見て覚えろ」が再生産される構造

OJT担当に任命された先輩社員は、何も渡されなければどうするか。自分が新人だったときに受けた教育を、そのまま再現しようとします。これは責めるべきことではありません。他に参照できるものがないのだから、自分の経験を頼りにするのは自然なことです。

でもその先輩社員が経験してきたのが「背中を見て覚えろ」スタイルの教育だったとしたら、意図せずしてその文化を引き継ぐことになります。「自分は見て覚えたから、この子も見て学べるはずだ」という無意識の前提が、新入社員には「何も教えてもらえない」「聞いていいのかわからない」という体験として伝わっていくわけです。

これは悪循環です。しかも組織の中では「OJTをやっている」という認識があるため、なぜうまくいかないのかが見えにくい。OJT担当の先輩も、新入社員も、人事も、誰も意地悪をしているわけじゃない。でも結果として新入社員が育たない、あるいは辞めてしまうという事態が繰り返されます。

OJTが失敗する3つの構造的要因

この構造を整理すると、OJTが機能しない組織には共通して以下の3つの要因があると私は見ています。

① ゴールが不明確

「入社後3ヶ月で何ができるようになっているか」が誰にも定義されていない。OJT担当者も新入社員も、何を目指して走っていいかわからない状態でいる。「なんとなく業務に慣れてくれれば」という曖昧なゴールしかないため、何が達成されたのかもわからないまま時間が過ぎていく。

② 関わり方が定義されていない

OJT担当者に「どう関わるか」が伝えられていない。結果として担当者ごとに関わり方がバラバラになる。積極的に話しかける先輩もいれば、「困ったら聞いてね」とだけ言って待ちのスタイルになる先輩もいる。新入社員にとって、OJTの質が「誰が担当になるか」という運次第になってしまっている。

③ 振り返りが設計されていない

OJTの途中で「うまくいっているか」を確認する仕組みがない。1ヶ月後、3ヶ月後に何かを確認する場が設計されていないから、問題が起きていても誰も気づかない。退職の申し出があって初めて「何かおかしかったのかな」と振り返ることになる。

この3つが重なると、OJTは形式として存在しているだけで、実質的には機能していない状態になります。


よくある失敗パターンと、なぜそれが起きるのか

「とりあえず導入する」という罠

OJTに限らず、人事の施策でよく見られる失敗のパターンがあります。「目的を共有しないまま形だけ導入する」というものです。

たとえば、1on1ミーティングを全社導入したケースで考えてみましょう。「他社でうまくいっているらしい」「社員の満足度が上がるらしい」という話を聞いて、とりあえず週1回の1on1を義務化した。確かに最初のうちは「話を聞いてもらえてよかった」という声が上がります。でも数ヶ月後に業績を確認しても変化がない。1on1をやっていること自体が目的化してしまって、何のためにやっているのかが共有されていなかった。

OJTも同じことが起きやすい施策です。「OJTをやっている」という事実が目的になってしまい、「OJTを通じて新入社員が自律して動けるようになる」という本来の目的が曖昧になる。そこに、冒頭で挙げた3つの構造的要因(ゴール不明確・関わり方未定義・振り返りなし)が加わると、形だけのOJTが出来上がります。

失敗パターン①:OJT担当者への事前説明がない

「OJT担当に任命するときに30秒で伝えただけだった」という話は、決して珍しいものではありません。OJT担当に任命された先輩社員は、多くの場合、自分の通常業務を抱えながらOJTを担当することになります。

人事側からすれば「頼もしい先輩社員に任せた」という感覚かもしれませんが、先輩社員側からすれば「突然責任だけを渡された」という感覚になることもある。「何を教えればいいか」「どのくらい時間をとるべきか」「難しい局面でどう対応するか」——こういった疑問に対する答えを持たないまま、「よろしくね」と送り出されているわけです。

担当者に「OJTのやり方」を事前に伝えていないにもかかわらず、うまくいかなかったときに「あの先輩の教え方が良くなかった」と評価されるのは、担当者にとっては理不尽な話です。問題の所在は担当者ではなく、設計にあります。

失敗パターン②:ゴールの共有がない

「業務に慣れてほしい」「早く一人前になってほしい」という言葉は、OJT担当者にとっては「で、何をすればいいんですか?」という疑問に答えていません。

具体的なゴールがないと、OJT担当者は「自分が知っていることを教える」というアプローチをとりがちになります。自分の専門領域や好きな仕事については詳しく教えてくれるけど、新入社員が本当に習得すべきスキルは別にあった——こういうことが起きます。

また、ゴールが共有されていないと、新入社員自身も「自分は今どのくらいできるようになっているのか」「何が足りていないのか」を把握できません。達成感も危機感も持ちにくく、モチベーションが下がりやすい状態になります。

失敗パターン③:人事のフォローアップがない

OJTを導入した後、「担当者に任せた」で終わってしまうケースがあります。定期的な進捗確認がない。新入社員に直接話を聞く場がない。OJT担当者へのフォローアップの機会がない。

この状態では、問題が生じても誰も気づけません。OJT担当者は「うまくやれている」と思っていても、新入社員は「聞けなくて困っている」という乖離が生じていても、それが表に出るのは退職の申し出や、突然のパフォーマンス低下のときです。

人事がOJTを「制度として導入した」で手放してしまうのではなく、「動いているかどうかを確認する設計」もセットで考えることが、OJTを機能させるうえで欠かせない部分だと私は思っています。


人事のプロはどうしているか——4つの工夫

では、OJTを機能させている組織では何が違うのか。私がこれまで見聞きしてきた中で、「これが違う」と感じた工夫を4つ紹介します。どれも大がかりなものではありません。明日から動けるものばかりです。

工夫①:育成計画とゴールの明文化

OJTを機能させる第一歩は、「3ヶ月後に何ができるようになっているか」を具体的に定義することだと思っています。

「業務に慣れてほしい」という曖昧なゴールではなく、「入社3ヶ月後には、一人で○○の業務を担当できる状態にする」という具体的な言葉にする。その手前に、「1ヶ月後には○○を理解している」「2ヶ月後には○○を補助的にできる」という段階的なマイルストーンを置く。

この「育成計画とゴールの明文化」が持つ効果は、ゴールを設定するだけでなく、関係者の認識を揃えることにもあります。人事・OJT担当・新入社員の三者が同じゴールを見ているとき、「今どのくらいか」という確認が共通の言語でできるようになります。

育成計画は最初から完璧である必要はありません。「最初の2週間は職場環境と業務の全体像を理解する」「3〜4週目は基本業務を実際にやってみる」「2ヶ月目からは一人でできる業務を増やしていく」という大きな流れが示されているだけで、OJT担当者の動き方は格段に変わります。

私が見てきた中で特に効果的だったのは、「ゴールをOJT担当者と一緒に作る」アプローチです。人事が一方的に定義したものを渡すだけでなく、「あなたから見て、3ヶ月後にどんな状態になっていてほしいと思いますか?」とOJT担当者に聞きながら育成計画を作る。担当者が「自分が作ったもの」として感じられると、実行へのコミットメントが変わってくるように思います。

また、育成計画の中に「新入社員自身がチェックする項目」を入れることも有効です。「今週、自分で○○ができたか確認してみてください」という欄があることで、新入社員が自分の成長を自覚しやすくなります。受け身で教えてもらうだけでなく、自分の成長を追いかける意識を最初から育てられます。

工夫②:OJT担当者への事前レクチャー

OJT担当者に任命するとき、30分の時間を作ってください。

「研修を開く」「資料を大量に用意する」という話ではありません。30分の対話と、1枚のシートで始められるものです。伝えることはシンプルで構いません。

最初の1週間に意識してほしいこと、具体的には「まずは歓迎の気持ちを伝えることを最優先してください」という話をします。新入社員が最初の1週間で感じるのは、「ここにいていいのか」「受け入れてもらえているか」という安心感の有無です。業務を教える前に、まずその安心感を作ることが、後のOJTの質を大きく左右するという話を共有するだけでも違います。

次に「わからないことを聞ける雰囲気をどう作るか」という話をします。「何かわからないことがあったら聞いてね」という言葉は、新入社員が自分から声をかけなければいけないという意味になります。でも新入社員は、「先輩が忙しそう」「こんなことを聞いていいのかわからない」という状態にあることが多い。なので「毎日5分でいいので、『今日どう?何か困ったことある?』と声をかけてみてください」というような、担当者からアクションするスタイルを伝えます。

そして「うまくできたことを、具体的にほめる」という話をします。「よかったよ」という曖昧なフィードバックより、「さっきの電話対応、相手の話をしっかり聞いていたね」というような具体的な観察を伝えることが、新入社員にとってどれだけ違うかを共有します。

この3点だけでも伝えれば、OJT担当者の動き方は変わります。「何をすればいいかわからない」という不安が、「こうすればいい」という方針に変わるからです。

加えて、「自分が新人だったとき、何に困ったか」を振り返ってもらう時間を作ることも有効です。次の工夫③に続く話ですが、担当者自身の経験を言語化することで、「新入社員がどういう状態にいるか」をリアルに想像できるようになります。「自分は早く覚えられたから普通のことだと思っていたけど、あれって難しかったんだ」という気づきが、新入社員への関わり方を変えることがあります。

OJT担当者へのレクチャーは、一回だけでなく「OJTの途中」にも行うことをお勧めします。1ヶ月後に「最初の1ヶ月どうでしたか?」と担当者に話を聞く場を作る。担当者が「こういうことで迷った」という話を共有することで、次の1ヶ月の動き方をアップデートできます。人事が担当者を「サポートする立場」であることを、担当者が実感できる関係を作っておくことが大切だと思います。

工夫③:OJT担当者自身の経験を引き出す

工夫②の中でも触れましたが、OJT担当者への事前レクチャーの中で「あなた自身が新人だったとき、何に困りましたか?」という問いを立てることは、思っている以上に効果があります。

この問いが効果的な理由は、「新入社員の立場でものを考える」というスイッチを入れられるからです。

OJT担当になった先輩社員は、すでにその業務に習熟しています。「当たり前にできること」が増えている分、「新入社員には何がわからないか」を想像しにくくなっています。自分が苦労したことも、時間が経つと「あれは大変だったけど仕方なかった」と記憶が薄れていく。

「新人のとき、何に困りましたか?」と聞くと、担当者から様々な答えが返ってきます。「誰に何を聞けばいいかわからなかった」「失敗したときに報告するのが怖かった」「覚えることが多すぎてパニックになった」「先輩の機嫌を読むのに疲れた」。これらはすべて、今の新入社員が感じている可能性のある感情と重なっています。

担当者自身がその感情を思い出すことで、「自分の新人時代に困っていたことを、この子には経験させないようにしよう」という姿勢が生まれます。これは人事が外から指示するより、担当者が自分の内側から動機を持つという点でまったく異なるものです。

この問いは、事前レクチャーの中でやってもいいですし、OJT開始前に担当者に「新人時代の困ったこと、3つ書いてみてください」というような簡単なシートを渡しておくだけでも構いません。大切なのは、「担当者が新入社員の気持ちを想像するための材料」を意識的に作ることです。

工夫④:人事の定期チェックイン設計

OJTを機能させるために、人事が果たせる役割の中で特に重要なのが「定期チェックイン」の設計です。

具体的には、「入社1ヶ月後」と「入社3ヶ月後」の2回、人事が新入社員と直接話す場を設けます。OJT担当者が同席しない形で、新入社員と1対1で話す時間を作ることがポイントです。

OJT担当者に対して「正直に言えないこと」が、新入社員には必ずあります。「先輩が忙しそうで声をかけにくい」「業務の説明がよくわからなかったけど聞き直せなかった」「もしかして自分は期待に応えられていないんじゃないかと不安」——こういったことを、担当者本人に直接伝えるのは難しい。

でも人事が「OJT担当者の評価をするために聞いている」ではなく、「あなたが困っていることがないか、人事としてサポートしたくて話を聞かせてほしい」という姿勢で話を聞けば、新入社員は本音を話しやすくなります。

このチェックインで聞くべき内容は、シンプルで構いません。

  • 「今の業務で、一番やりがいを感じていることは何ですか?」
  • 「逆に、今一番難しいと感じていることは?」
  • 「OJT担当者とのやりとりで、何か困っていることはありますか?」
  • 「会社や業務について、入社前と入社後で違った部分はありますか?」

これらの問いへの答えを聞くことで、人事はOJTの状態をリアルに把握できます。そしてもし問題があれば、早期に対処できます。

大切なのは、このチェックインが「問題を見つけるためだけのもの」ではないということです。新入社員にとっては「人事が気にかけてくれている」という安心感につながります。「何かあったら人事に言えばいい」という感覚を持ってもらうことで、深刻な問題になる前に話が上がってくるようになります。

また、1ヶ月後のチェックインが終わったあとは、その内容をもとにOJT担当者との短い対話をすることをお勧めします。新入社員が話した内容をそのまま伝えるのではなく、「最初の1ヶ月、どうでしたか?」と担当者の視点も聞きながら、「こういう部分をもう少し意識してもらえると良さそうです」というフィードバックを届ける。人事がOJT担当者と新入社員の両方と関わることで、両者の間に生じているすれ違いに気づけるようになります。


明日からできる3つのアクション

「仕組みの設計」と聞くと、大きなプロジェクトのように感じるかもしれませんが、最初の一歩は小さくて構いません。ここでは、明日から動けるアクションを3つ挙げます。それぞれに「所要時間・必要なもの・最初の一歩」を添えています。

アクション①:OJT担当者への事前レクチャーを設ける

所要時間:30分(担当者1名あたり)

必要なもの:

  • 育成計画の概要(1枚のシート)
  • 伝える3点のメモ(最初の1週間の関わり方・聞きやすい雰囲気の作り方・具体的なほめ方)

最初の一歩: 次にOJT担当者を任命するタイミングで、「30分だけ時間をもらえますか?」と声をかけることから始めます。特別な資料がなくても、「新人が最初の1週間で感じる不安って何だと思いますか?」という対話から入れば、自然とレクチャーの場になります。「研修を開かなければいけない」という固定観念を外すことが、最初の一歩です。


アクション②:「3ヶ月ゴール」をA4一枚で言語化する

所要時間:30分〜1時間(初回)

必要なもの:

  • 対象ポジションの業務一覧(なければ箇条書きで構わない)
  • 過去にOJTを経た先輩社員の成長の軌跡(記憶でもよい)

最初の一歩: 「入社3ヶ月後、この新入社員に何が『できる』状態になってほしいか」を、箇条書きで5〜10項目書き出すことから始めます。書き出したものを見て「これはOJT担当者が知っているか?」を確認する。知らなければそれを伝えることが最初のアクションです。

完璧なフォーマットは後回しにして、まず「言葉にする」ことを優先してください。言葉にした時点で、ゴールは存在しなかったときと比べて格段に明確になります。


アクション③:入社1ヶ月後のチェックインを日程に入れる

所要時間:30分(新入社員との対話)

必要なもの:

  • カレンダー(入社日から1ヶ月後に予定を入れるだけ)
  • 聞く内容の簡単なメモ(4〜5問の問いをあらかじめ用意しておく)

最初の一歩: 次の新入社員の入社日が決まった時点で、入社後1ヶ月のカレンダーに「新入社員チェックイン(30分)」という予定を入れてしまうことです。

「後でやろう」では必ずタイミングを逃します。「入社日に予定を入れる」というルールにしておくだけで、実行率は大きく変わります。最初のチェックインで聞く問いは、前章で挙げた4問をそのまま使って構いません。最初から洗練された面談をしようとしなくていい。「話を聞きに来た人事がいた」という事実が、新入社員にとっての安心感になります。


まとめ

OJTが機能しない組織に共通しているのは、「OJT担当者の意識やスキルの問題」よりも「仕組みが設計されていないことの問題」です。

先輩社員は悪意を持ってOJTをさぼっているわけではない。人事も「なんとかしたい」と思っている。でもゴールが定義されていない、担当者への事前説明がない、人事がフォローアップをしていない——この3つが重なったとき、OJTは形だけの制度になってしまいます。

逆に言えば、この3つを少しずつ整えていくことで、OJTは変わり始めます。育成計画とゴールを言語化する。OJT担当者に30分のレクチャーをする。担当者自身の「新人時代の困り事」を引き出す。人事が1ヶ月後・3ヶ月後にチェックインする。これらは、大きな予算や大がかりなプロジェクトがなくても始められるものです。

OJTの設計は、一度作って終わりではありません。今年のOJTを振り返り、うまくいかなかったことを改善して、来年のOJTをより良くする。このサイクルを回すことで、組織の中に「新入社員を育てる力」が少しずつ積み上がっていきます。「小さく始めて毎年改善する」——そのスタンスが、長い目で見て組織の育成力を高めていくのではないかと私は思っています。

担当者の問題として個人に帰着させるより、仕組みの問題として設計を見直す。その視点の転換が、OJTを変える最初の一歩になるのではないでしょうか。


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