
採用広報が「発信すること」だけになっていませんか
目次
- なぜ採用広報は難しいのか
- 「伝えたい情報」と「候補者が知りたい情報」がズレる
- 効果測定が難しい
- 継続的なコンテンツ制作が負担
- よくある失敗パターン
- 失敗①:「会社の良いところだけ」を発信する
- 失敗②:ターゲットが曖昧なまま発信する
- 失敗③:採用広報と採用活動が連携していない
- プロの人事はこう考える
- 知る:「候補者がどこで何を見ているか」を把握する
- 考える:「コンテンツの目的と指標」を設計する
- 動く:「現場社員の声」を採用広報の素材にする
- 振り返る:採用広報の効果を定期的に測る
- 明日からできる3つのこと
- 1. 直近6ヶ月の入社者に「どのコンテンツを見たか」を聞く(30分)
- 2. 採用サイトを「候補者視点」で読み直す(30分)
- 3. 「社員に語ってもらいたいテーマ」を3つ決める(15分)
- まとめ
採用広報が「発信すること」だけになっていませんか
「採用広報に力を入れています」——こう言いながらも、「SNSで社員インタビューを投稿している」「採用サイトを更新した」という段階で止まっているケースは多いと思います。
採用広報(Recruitment Marketing)は「発信すること」ではなく、「採用したい人材に届き、志望意向を高めること」が目的です。発信量を増やしても、「届いていない」「響いていない」なら意味がありません。
「自社の魅力を伝えたい」という思いで動き始めると、「自社から見た魅力の発信」になりがちです。でも採用広報で重要なのは「候補者が見て、自分のキャリアと重ねられるかどうか」です。この視点の転換が、採用広報の質を大きく変えます。
この記事では、採用広報の効果を高めるための考え方をお伝えします。
なぜ採用広報は難しいのか
「伝えたい情報」と「候補者が知りたい情報」がズレる
人事・採用担当者が「伝えたいこと」——会社の理念・成長性・福利厚生——と、候補者が「知りたいこと」——実際の仕事内容・職場の雰囲気・入社した人のリアル——は、ズレていることが多い。
「キラキラした社員インタビュー」や「会社の強みをまとめたコンテンツ」は、「発信する側が伝えたい情報」になりがちです。「候補者が何を不安に思っているか」「何を知りたがっているか」から発想することが、響く採用広報につながります。
効果測定が難しい
採用広報のコンテンツが「最終的な採用につながっているか」を測ることは難しい。「SNSのフォロワーが増えた」「採用サイトのPVが上がった」という数字は出るものの、「それが志望者数・内定承諾率にどう影響したか」の接続が見えにくい。
「投資対効果がわからない」という状態では、採用広報への予算・人員配分の判断が感覚的になります。「どの指標を追うか」を最初に設計することが重要です。
継続的なコンテンツ制作が負担
採用広報は「一度記事を書いて終わり」ではなく、継続的なコンテンツ制作が必要です。でも採用担当者の本業は「採用すること」であり、コンテンツ制作に割ける時間は限られています。
「最初は意欲的に発信していたが、続かなくなった」という状態は多くの組織で起きています。「持続可能なコンテンツ制作の仕組み」を設計することが重要です。
よくある失敗パターン
失敗①:「会社の良いところだけ」を発信する
「会社の魅力を最大化して伝える」という意識が強いと、「きれいすぎる採用広報」ができあがります。
でも候補者は「本当のことを知りたい」と思っています。「つらいこと・難しいこと・失敗した経験」も含めたリアルな声の方が、信頼感を生みます。
「実際に入社した人が感じたギャップ」を正直に出せる採用広報の方が、「入社後のミスマッチ」が少なくなることもあります。「良い面も難しい面も含めたリアルを伝える」という姿勢が、採用広報の質を高めます。
失敗②:ターゲットが曖昧なまま発信する
「幅広く認知を広げたい」という思いで、「すべての人に届けようとする広報」をすると、「誰にも刺さらないコンテンツ」になることがあります。
採用広報は「誰に届けたいか」を明確にすることで、「その人が響くコンテンツ」を設計できます。「どんな経験を持つ人に来てほしいか」「どんな価値観・志向性の人と働きたいか」——このターゲット定義が、コンテンツの方向性を決めます。
失敗③:採用広報と採用活動が連携していない
「採用広報で発信しているメッセージ」と「実際の採用面接で語る会社の姿」が一致していないことがあります。
「採用サイトでは成長機会が豊富と書いてあったが、面接では具体的な話が出なかった」——候補者にとって、この不一致は不信感を生みます。採用広報と採用の実態の整合性を保つことが重要です。
プロの人事はこう考える
知る:「候補者がどこで何を見ているか」を把握する
採用広報を設計する前に、「採用したいターゲット人材が、転職・就職活動の中でどこで何を見ているか」を把握することが重要です。
情報収集の手段: ・入社者へのインタビュー(「どのコンテンツを見て志望度が上がったか」) ・採用プロセスでの候補者アンケート ・競合他社の採用広報の分析 ・採用媒体の候補者行動データ
「人事の仕事の質の7-8割は"知る"の質で決まる」——採用広報でも、「候補者の行動と関心を知ること」が設計の起点です。
考える:「コンテンツの目的と指標」を設計する
採用広報のコンテンツを設計するとき、「このコンテンツの目的は何か」と「その目的を測る指標は何か」を最初に決めることが重要です。
採用広報の目的のレイヤー: ・認知拡大(自社の名前を知ってもらう) ・理解促進(自社でどんな仕事ができるかを知ってもらう) ・志望喚起(「ここで働きたい」という気持ちを高める) ・応募促進(実際に応募してもらう)
どの目的のコンテンツが不足しているかを確認し、優先的に投資することが重要です。
動く:「現場社員の声」を採用広報の素材にする
採用広報の最も信頼できる素材は「実際に働いている社員の生の声」です。
「社員インタビュー」「1日の仕事の様子」「入社してよかったこと・大変なこと」——これらを社員自身の言葉で発信することで、「制作側が作ったコンテンツ」よりもリアリティが生まれます。
「発信を続けられる仕組み」として、社員が自分の言葉で発信できる環境(会社公式SNSでの社員投稿・社内ブログ等)を作ることが、持続可能な採用広報につながります。
振り返る:採用広報の効果を定期的に測る
採用広報のコンテンツが「採用の成果にどう貢献しているか」を定期的に確認することが重要です。
確認指標: ・採用サイトのPV・滞在時間・離脱率 ・応募数・応募経路の変化 ・入社者の「志望動機になったコンテンツ」のアンケート ・内定承諾率の変化
「効果が出ているコンテンツ」を増やし、「効果が出ていないコンテンツ」を見直すサイクルが、採用広報の質を高めます。
明日からできる3つのこと
1. 直近6ヶ月の入社者に「どのコンテンツを見たか」を聞く(30分)
直近半年で入社した方に「どのコンテンツ・チャネルで自社を知り、志望意向が上がったか」を聞いてみましょう。「実際に効いているコンテンツ」を知ることが、採用広報の投資先を決める材料になります。
着手ポイント:採用時のアンケートにこの質問が含まれていない場合は、次のタイミングから追加することをおすすめします。
2. 採用サイトを「候補者視点」で読み直す(30分)
自社の採用サイトを「転職を考えているAさんが初めて見たとして、何を感じるか」という視点で読み直してみましょう。「会社の強みの羅列」になっていないか、「候補者の疑問・不安に答えているか」を確認することがポイントです。
着手ポイント:「わからないこと・疑問に思いそうなこと」が残る箇所がコンテンツの改善余地です。
3. 「社員に語ってもらいたいテーマ」を3つ決める(15分)
採用広報に使えそうな「社員の声のテーマ」を3つ考えてみましょう。「入社してよかったこと」「仕事でやりがいを感じた瞬間」「職場の雰囲気のリアル」——こうしたテーマが、候補者が知りたい情報にマッチしやすいです。
着手ポイント:テーマが決まったら、語ってもらう社員1人に声をかけてみてください。「社員1人の声」から採用広報は始まります。
まとめ
採用広報は「発信量を増やすこと」ではなく、「採用したい人材に届き、志望意向を高めること」が目的です。そのためには「候補者が何を知りたいか」から発想し、「リアルな声」を「継続的に発信する仕組み」を作ることが重要です。
「手段ありきで人事を動かしてはいけない」——採用広報でも、「誰に届けたいか」「何のために発信するか」という目的から逆算することが大切です。
まず「入社者が実際に何を見て志望してくれたか」を知ることから始めてみてください。
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吉田洋介
人事図書館 代表 / 著書『「人事のプロ」はこう動く』
リクルートマネジメントソリューションズで14年間・500社以上の組織人事コンサルティングに従事。 上海駐在を経て2021年に独立。2024年に人事図書館を設立(会員740名超)。 「すべての組織に人事のプロを」を理念に、経営と現場をつなぐ人事の実践知を発信している。
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