「本音が聞けていない」と感じたら——エンプロイーリスニングの実践
組織開発

「本音が聞けていない」と感じたら——エンプロイーリスニングの実践

#エンゲージメント#組織開発#経営参画#離職防止#データ活用

「本音が聞けていない」と感じたら——エンプロイーリスニングの実践

「うちの社員はみんな満足していると思います」——その根拠は何ですか。

離職が相次いで初めて「こんなに不満があったとは知らなかった」という経験をした人事担当者の方は少なくありません。本音は、聞こうとしなければ聞こえません。エンプロイーリスニング(従業員の声を継続的に聞く仕組み)は、「問題が起きてから対応する」のではなく「問題が起きる前に気づく」ための投資です。


なぜ本音は出てこないのか

社員が本音を言わない理由は「不満がないから」だけではありません。

「言っても変わらない」という諦め:過去に意見を言ったが何も変わらなかった、という経験が積み重なると、発言することへの意欲が失われます。

「言ったことが上司に伝わるかもしれない」という恐れ:匿名のはずのサーベイでも、「特定されるかもしれない」という不安があると、本音の回答を避けます。

「どうせ人事は自分たちの味方じゃない」という不信感:人事が「経営の代弁者」に見えていると、社員は人事を信頼しません。

エンプロイーリスニングの設計では、この「本音が出てこない構造」を解除することが先決です。


エンプロイーリスニングの3つの手法

手法1:パルスサーベイ(短い頻度の高いサーベイ)

月次や隔月で5〜10問の短いサーベイを実施します。年1回の大規模サーベイよりも変化を素早くキャッチできます。「先週の仕事の充実感は?」「今週、上司からフィードバックを受けましたか?」という形の質問で、現在の状態を数値化します。

手法2:個別ヒアリング・スモールグループ対話

数値データでは見えない「なぜそう感じるか」を掘り下げるために、少人数での対話が有効です。人事が現場を訪問して話を聞く「現場ランチ」、退職者へのオフボードインタビューなど、定性的な声を集める機会を作ります。

手法3:常時フィードバックチャンネル

「いつでも意見を言える場所」として、匿名の意見箱・社内SNSのチャンネルを設けます。重要なのは「言ったことが見えている」形にすること。「この意見を受けて、こう対応しました」という返答が、発言する意欲を育てます。


聞いた後が本番

エンプロイーリスニングは「聞くこと」ではなく「聞いて動くこと」が目的です。

聞いた声に対して、「対応できるもの」「対応できないもの」「検討中のもの」を分類して、社員に返すことが信頼構築につながります。「全ての声に応えられるわけではないが、全ての声を真剣に受け取っている」という姿勢を示すことが重要です。


退職者インタビューの活用

「辞める人の本音」は、在職中よりも率直に聞ける貴重な情報源です。退職者インタビューを「形式的な挨拶」で終わらせず、「なぜ辞めるのか」「何があれば残っていたか」「組織に伝えたいことは何か」を丁寧に聞くことで、エンゲージメント施策の改善材料が得られます。

退職者インタビューの結果は、匿名化した上で経営にフィードバックすることで、「離職を防ぐための投資」につながります。


小さく始めるエンプロイーリスニング

「大規模なシステムを入れなくてもできること」から始めることをお勧めします。

まず「四半期に一度、各部門から1〜2名と人事が直接話す場を設ける」というシンプルな仕組みから始めるだけでも、現場の声が見えてきます。


おわりに

「本音が聞けていない」と感じたなら、それは聞く仕組みがないか、聞いても安全と感じてもらえていないかのどちらかです。まず「退職者に1時間のインタビューをする」——そこから始めてみてください。

エンゲージメントと従業員の声の活かし方をもっと深く学びたい方は、人事のプロ実践講座でご一緒しましょう。

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吉

吉田洋介

人事図書館 代表 / 著書『「人事のプロ」はこう動く』

リクルートマネジメントソリューションズで14年間・500社以上の組織人事コンサルティングに従事。 上海駐在を経て2021年に独立。2024年に人事図書館を設立(会員740名超)。 「すべての組織に人事のプロを」を理念に、経営と現場をつなぐ人事の実践知を発信している。

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