「部下にやる気がない」と感じたとき。マネジメントで変えられること
目次
- 「やる気がない」を問い直す
- 「やる気がない」を問い直す
- やる気が出ない環境の構造
- よくある失敗パターン
- 失敗パターン①:「やる気がない部下を変える」という問いのまま対処しようとする
- 失敗パターン②:モチベーション研修を入れて終わりにする
- 失敗パターン③:管理職の関わり方を変えずに個人の問題にする
- 人事のプロはどうしているか
- 工夫①:「やる気が出にくい環境」を診断する視点を持つ
- 工夫②:管理職が「仕事の意味」を言葉にできるよう支援する
- 工夫③:小さな成功体験のサイクルを設計する
- 工夫④:人事が「現場の状態を把握する」仕組みを持つ
- 明日からできる具体的アクション
- アクション①:管理職に「観察できること」を確認する
- アクション②:エンゲージメント/1on1の現状データを確認する
- アクション③:管理職に「意味を伝える1on1」を一度試してもらう
- まとめ
「部下にやる気がない」と感じたとき。マネジメントで変えられること
「管理職から『部下がやる気を見せない』という相談が来るんですが、人事としてどう対応すればいいか、正直悩んでいます…。研修を提案すればいいのか、1on1を勧めればいいのか、そもそも管理職の話をどこまで受け止めていいのか、判断が難しくて。経営から『エンゲージメントを上げろ』とも言われていて、何から手をつければいいかわからないんです」
こういった相談を、人事として受けたことのある方は多いのではないでしょうか。「部下にやる気がない」という言葉は、組織のあちこちで聞こえてきます。でも、いざ人事として動こうとすると、何をすれば効果があるのか、どこに働きかければいいのかが見えにくい。研修の案内を送っても根本が変わる気がしないし、管理職に「もっと1on1をやってください」と言うだけでは心もとない。そんな感覚を持ちながら、毎日仕事をしている方もいるかもしれません。
この課題は、「部下のやる気」という個人の問題として捉えると、対策が表面的になりがちです。「やる気がない」という状態は、多くの場合、個人の内面だけではなく、仕事の設計・マネジメントのあり方・評価の仕組み・職場の心理的安全性といった「環境の側の問題」として現れています。人事が「どう管理職を支援するか」「どんな仕組みを整えるか」という視点で考えることで、初めて組織的な変化が生まれます。
「部下のやる気がない」という管理職の言葉を受けたとき、人事はどう考え、何を変えることができるのか。ペルソナA(若手・一人人事)の方が「明日から動ける」感覚を持てるよう、構造的な理解と具体的な手立てを一緒に考えてみたいと思います。
「やる気がない」を問い直す
ある中堅メーカーで一人人事を担当している方が話してくれました。「半年前に初めて管理職から『部下のやる気がなくて困っている』と相談を受けたとき、何をすればいいかわからなくてモチベーション研修の案内を送ったんですが、その管理職から『でも根本は変わらないですよね』と返ってきて。そのとき初めて、私は問いを立て間違えていたんだと気づきました。やる気がない部下をどうにかしようとしていたんですが、本当に変えなければいけないのはその管理職自身の関わり方だったんです」
この言葉には、人事が陥りやすい構造的な落とし穴が含まれています。「やる気がない部下をどうにかする」という問いを立てた瞬間に、原因が「部下の個人的な問題」にすり替わってしまいます。でも実際には、「やる気が出にくい職場環境」「仕事の意味が伝わっていないマネジメント」「評価への不満や不信」など、組織の側に原因があることが多い。
「やる気がない」という表現は、感情的な評価です。「あの部下はやる気がない」という言葉が管理職の口から出るとき、その管理職は観察・分析をしているのではなく、部下への不満や戸惑いを言語化しています。人事としてまず取り組むべきことは、その言葉の奥にある「何が起きているのか」を解きほぐすことです。
「やる気がない」を問い直す
「やる気がない」という評価の前に確認すべき問いがあります。「やる気がないのか、やる気が出ない状態になっているのか」という違いです。
人が「やる気が出ない」状態になるとき、その背景にはいくつかの構造があります。
仕事の意味が見えていない:「この仕事が何の役に立っているのかわからない」という感覚は、内発的動機を大きく削ぎます。マネジャーが「指示を出すだけ」で「なぜその指示なのかを伝えない」職場では、仕事が単なる作業の連続になってしまいます。
評価への不満・不信:「どんなに頑張っても正当に評価されない」「評価の基準がわからない」という状態では、努力が報われない感覚が積み重なります。内発的動機があっても、外部環境がそれを否定し続けると、やる気は維持できません。
心理的安全性の欠如:「失敗すると責められる」「発言しても無視される」「上司の顔色を読みながら動かなければいけない」——こういった環境では、人は守りに入ります。「やる気がない」ように見える行動は、実は「安全を保つための適応行動」です。
仕事の負荷と本人の能力のミスマッチ:仕事が難しすぎても簡単すぎても、やる気は低下します。本人の成長曲線に合ったチャレンジがなければ、「できても嬉しくない」「どうせ無理」という状態になります。
これらの構造を理解した上で、管理職の言葉を聞くと見え方が変わります。「部下がやる気を見せない」という言葉は、「マネジメントの何かが機能していないサイン」として受け取ることができます。
やる気が出ない環境の構造
エンゲージメント研究の分野では、仕事への意欲(エンゲージメント)を高める要因として「仕事の意味・やりがい」「自律性」「成長の実感」「人間関係の質」「公平感」などが繰り返し確認されています。
ギャラップ社の調査では、エンゲージメントの低い従業員(アクティブ・ディスエンゲージド)は、生産性・品質・欠勤率・離職率のすべてで高エンゲージメント従業員に劣ることが示されています。エンゲージメントの低下は「個人の気持ちの問題」ではなく、事業成果に直接影響する経営課題です。
また、離職コストの観点でも見逃せません。一般的に、一人の中途採用コストは年収の20〜30%程度とされています(採用費・入社後の定着支援・生産性の立ち上がり期間を含むと、より高くなるケースも多い)。エンゲージメントが低い状態が続いて離職につながった場合、その損失は個人の「やる気」問題をはるかに超えた経営インパクトを持ちます。
人事が「やる気がない部下の問題」と「環境・マネジメントの問題」を切り分けて捉えられるかどうかは、組織への介入の質を大きく左右します。
よくある失敗パターン
失敗パターン①:「やる気がない部下を変える」という問いのまま対処しようとする
管理職から「部下にやる気がなくて困っている」と相談を受けたとき、つい「では、どんな研修やプログラムで部下に変わってもらうか」を考えてしまいがちです。でもこの問いの立て方には落とし穴があります。
「やる気がない部下を変える」という発想は、問題の原因を「部下の個人的な問題」に置いています。でも前述の通り、「やる気が出ない」状態の多くは環境・マネジメントの側に原因があります。個人に働きかけるアプローチだけを取り続けると、「何をやっても変わらない」という無力感を管理職にも人事にも生み出します。
また、この問いの立て方は、管理職自身の変化を促しにくい構造でもあります。「部下に変わってほしい」と思っている管理職は、自分自身のマネジメントの見直しを求められると、往々にして防衛的になります。「私のせいですか?」という反応が来ることもあります。だからこそ、人事は「部下の問題か、環境の問題か」を整理するプロセスを管理職と一緒に踏むことが大切です。
問いを「やる気が出にくい環境をどう変えるか」「管理職がどう関わり方を変えられるか」に立て直すことで、初めて有効な手が打てます。
失敗パターン②:モチベーション研修を入れて終わりにする
「モチベーションを上げたい」というニーズに応えるため、研修を提供すること自体は悪くありません。でも研修を実施して「やった」と感じてしまうのは危険です。
研修の限界は、職場に戻った瞬間に環境が変わらないことです。研修で「仕事の意味を考える」ワークをしても、職場に戻れば「指示されたことをこなすだけ」の日々が続く。研修で「自分の強みを活かす」ことを学んでも、実際の業務では強みを発揮できる場がない——こういった構造が変わらない限り、研修効果は一時的なものにとどまります。
また、「エンゲージメントが低い状態」は、個人の知識不足よりも「職場の関係性・仕組み」の問題であることが多い。研修で知識やマインドセットを変えようとするアプローチは、原因と対策がずれています。
人事として「研修を提案しました」で終わらず、「研修の前後で何が変わるかを設計する」「研修とセットで職場環境の何を変えるかを管理職と合意する」という一手が必要です。
失敗パターン③:管理職の関わり方を変えずに個人の問題にする
「やる気がない部下」への対応として、個人面談・キャリア面談・ストレスチェックの結果対応などを実施することがあります。でも管理職のマネジメントのあり方が変わらないまま個人への支援だけを行っても、状況は改善しにくい。
たとえば、エンゲージメントサーベイの結果を受けて「スコアが低かった個人に人事が面談する」という対応は、症状への対処であって原因への対処ではありません。スコアが低かった背景に「管理職との関係性」「評価の不透明感」「仕事の裁量の低さ」があるならば、それに対してアプローチしなければ変化は生まれません。
個人の問題と環境の問題を切り分け、「環境・マネジメントの側に原因があるなら、そこを変える働きかけをする」という姿勢が、人事のプロとしての基本軸になります。
人事のプロはどうしているか
工夫①:「やる気が出にくい環境」を診断する視点を持つ
人事のプロが「部下にやる気がない」という相談を受けたとき、まず行うのは「現状の診断」です。「何がやる気を下げているのか」を特定しないまま施策を打っても、当たりません。
診断の切り口として使えるのは以下のような観点です。
仕事の意味・つながりの有無:部下は「自分の仕事が何の役に立っているか」を理解しているか。管理職はそれを言葉で伝えているか。仕事の目的が見えていない職場では、「言われたことをやるだけ」の状態になります。
評価・フィードバックの質:評価の基準は明確か。フィードバックは具体的か。「頑張ってもよく評価されない、サボっても大差ない」という感覚が広がると、努力が報われない職場になります。
心理的安全性:「失敗を話せる雰囲気か」「意見を言いやすいか」「管理職との関係はどうか」——これらは観察やサーベイで確認できます。心理的安全性が低い職場では、部下は「やる気がない」のではなく「動けない」状態になっています。
成長実感・キャリアの展望:「この仕事を続けることで自分は成長できるか」「数年後にどうなれるか」——これが見えない職場では、特に若い世代のエンゲージメントが低下しやすい。
診断は、管理職との対話・エンゲージメントサーベイ・1on1の観察・離職率・休職率などの数字から行います。「どのデータをどう読むか」の視点を持つことで、管理職の主観的な「やる気がない」発言を、客観的な「何が起きているか」に変換できます。
エンゲージメントが10%改善すると、生産性が5〜8%改善するという研究知見もあります。人事がこの数字を持って経営や管理職と対話できると、「やる気の話」が「事業成果の話」に変わります。
工夫②:管理職が「仕事の意味」を言葉にできるよう支援する
エンゲージメント研究の一致した知見として、「仕事の意味・やりがいを感じているか」が内発的動機の根幹であることが示されています。そして「部下が仕事の意味を感じられるかどうか」は、管理職が「意味を言語化して伝えているか」に大きく左右されます。
ところが多くの管理職は、「仕事の意味を伝える」ことを意識的にやっていません。「言わなくてもわかるだろう」「業務の説明はしているから伝わっている」と思っています。でも部下側は、「なぜこの仕事が重要なのか」「この仕事がどんな人の役に立っているのか」を説明されたことがないことがほとんどです。
人事が管理職に対してできる支援の一つは、「仕事の意味を言語化するトレーニング」です。具体的には以下のような支援が考えられます。
1on1の場で「意味の伝達」を実践するよう促す:管理職に「今週の1on1で、この仕事がお客様にどんな価値をもたらしているかを部下に伝えてみてください」という具体的な行動を依頼します。「意味を伝えること」を習慣化するきっかけを作ります。
「なぜこの目標か」を言語化する練習をする:目標設定の場面で、管理職が「この目標の背景にある事業上の理由」を言語化できるよう、人事が質問を通じて引き出す練習をします。管理職が自分で言語化する経験を積むことで、部下への伝達が自然にできるようになります。
「チームのストーリー」を整理するワークを設ける:チーム合宿や研修の機会に、「自分たちの仕事が誰の役に立っているか」「どんな価値を生み出しているか」をチーム全体で整理する場を設けます。管理職だけでなく、部下も含めて「仕事の意味」を言語化することで、共通認識が生まれます。
この支援は、管理職の「変われ」という圧力ではなく、「こんなやり方があります」という提案として行うことが重要です。管理職が「自分でもできそうだ」と感じられる形で支援することが、実践につながります。
工夫③:小さな成功体験のサイクルを設計する
やる気が低下している状態の人に対して、「大きな目標を与えてモチベーションを上げる」というアプローチは逆効果になることがあります。今の状態で達成できそうにない目標を渡されると、さらにやる気が落ちます。
心理学の「フロー理論」(チクセントミハイ)では、「能力と課題の難しさが適切にマッチしたとき、人は最もやりがいを感じる」ことが示されています。やる気が低下している人に対しては、「確実に達成できる小さなチャレンジ」から始めて、達成→認める→少し難しいチャレンジ→達成→認める……というサイクルを設計することが効果的です。
人事としてこのサイクルを支援するために考えられることを整理します。
管理職が「確実に達成できる仕事のかけ方」を学ぶ機会を作る:「目標設定の粒度」「フィードバックのタイミング」「進捗の可視化」——これらは管理職が意識することで変えられます。人事が管理職研修・管理職向けの個別支援でこのポイントを取り上げることが有効です。
短いサイクルのフィードバックを制度として組み込む:月1回の1on1だけでなく、週1回の短いチェックイン・日次の進捗共有など、「小さな達成を確認し合う頻度」を高める仕組みを検討します。フィードバックの頻度が高いほど、達成感の積み重ねが生まれやすくなります。
「できたことを認める」文化を評価制度に組み込む:半期・年度末の評価だけでなく、「途中での承認・認定の仕組み」を設けることで、小さな達成が見える化されます。表彰制度・サンクスカードの文化・マネジャーからの積極的なフィードバックの奨励など、組織の慣行として「認める行動」を増やすことが、エンゲージメントの底上げにつながります。
この工夫のポイントは、「個人のやる気に任せない」という発想です。制度・仕組み・習慣として「小さな成功体験のサイクル」を埋め込むことで、やる気が出やすい環境が組織全体に広がります。
工夫④:人事が「現場の状態を把握する」仕組みを持つ
人事が管理職の相談に受動的に応じるだけでは、問題が深刻になってから動く「後手の人事」になってしまいます。「やる気がない部下」の問題が表面化する前に、現場の状態をモニタリングする仕組みを持つことが、プロとしての人事の姿勢です。
現場の状態を把握する手段としては以下が考えられます。
エンゲージメントサーベイの定期実施と読み解き:半期・年1回のサーベイを実施し、スコアの推移・部門間の差異・設問ごとの低スコア傾向を分析します。「どの部門で何の指標が下がっているか」を早期に察知することで、深刻化する前に手を打てます。
1on1の状況をモニタリングする:管理職が1on1を実施しているかどうか、どんなテーマで話しているかを把握します。実施率・実施頻度・部下側の満足度(サーベイ等で確認)——これらを人事がモニタリングすることで、「管理職がちゃんとやっているかどうか」の感覚値ではなくデータで状況を把握できます。
離職率・休職率・入社後の定着率などの数字を追う:「やる気がない状態」が長く続いた末に離職・休職につながることは多い。これらの数字を人事が定期的に追い、部門別・年次別・入社年別などの切り口で分析することで、リスクが高い職場を早期に発見できます。
離職コストの試算を持っておくことも重要です。たとえば年収500万円の中堅社員が離職した場合、採用コスト・入社後の育成コスト・生産性の立ち上がりコストを含めると、1人あたり数百万円規模の損失になることもあります。「エンゲージメント施策への投資」と「離職による損失回避」を比較できると、経営への説明力が増します。
管理職との定期的な人事面談を持つ:管理職が困りごとを抱えているとき、人事に相談しにくい環境では問題が表面化しにくい。人事が積極的に管理職と話す場を設けることで、「相談しやすい人事」という関係性を作ります。
これらの仕組みが機能することで、「やる気がない部下が出てから動く」ではなく、「やる気が出やすい職場を継続的に維持する」という人事の役割が実現します。
明日からできる具体的アクション
アクション①:管理職に「観察できること」を確認する
所要時間:管理職との面談30分 必要なもの:質問メモ(以下参照) 最初の一歩:「少しお時間いただいてもいいですか?部下の状況をもう少し詳しく聞かせてください」と一声かける
「部下にやる気がない」という相談が来たとき、すぐに「ではどんな研修を…」と動くのではなく、まず「具体的にどんな行動・言動を見てそう感じているか」を確認します。
以下の質問を管理職に聞いてみてください。
- 「『やる気がない』と感じたのは、どんな場面でしたか?」
- 「その部下は、いつ頃からそういう状態ですか?」
- 「その部下が生き生き動いていたと感じたのは、どんな仕事のときですか?」
- 「今の仕事は、その部下の得意なことや希望とどれくらい合っていますか?」
- 「最近1on1や個別面談はしていますか?そこで何を話しましたか?」
これらの質問を通じて、「やる気がない」という主観的評価を「具体的な出来事・状況」に変換します。この会話自体が、管理職が部下の状況を整理するきっかけになります。
人事は「答えを出す」のではなく「問いを一緒に立て直す」ことが、この場面での役割です。
アクション②:エンゲージメント/1on1の現状データを確認する
所要時間:1〜2時間(データ収集と整理) 必要なもの:既存のサーベイデータ・1on1実施記録・離職率データ 最初の一歩:手元にあるデータを「部門別」「チーム別」に切り直してみる
「やる気がない部下がいる」という相談を受けたとき、その管理職のチーム・部門で何が起きているかをデータで確認します。
確認するポイント:
- 直近のエンゲージメントサーベイで、そのチームのスコアはどうか
- 設問別に見て「仕事の意味・やりがい」「評価の納得感」「上司との関係」などが特に低い項目はないか
- 直近1年の離職率・休職率はどうか
- 1on1の実施率はどうか(実施記録がある場合)
データがない場合でも、「データを取る仕組みを作る」ことが次の一手です。小規模なアンケートでも、「現状を把握している人事」と「していない人事」では、経営・管理職への信頼度が大きく変わります。
データを持って管理職と話すと、「人事は現場をわかってくれている」という関係性が生まれます。
アクション③:管理職に「意味を伝える1on1」を一度試してもらう
所要時間:管理職への依頼5分 + 管理職が1on1を実施する30分 必要なもの:1on1で使える「意味を伝える質問リスト」(人事が作成) 最初の一歩:「次の1on1で一つだけ試してほしいことがあります」と管理職に伝える
管理職に、次の1on1で以下の一言を試してもらいます。
「今あなたがやっているこの仕事、私はこういう理由で重要だと思っています。チームにとっても、お客様にとっても、こんな意味があると思う」
たったこれだけですが、多くの管理職がこれをやっていません。「伝えなくてもわかるだろう」という思い込みがあるからです。
人事から管理職への依頼は「これをやってください」という指示ではなく、「こんなことを試してみませんか。部下の反応が変わるかもしれません」という提案として行うのがポイントです。
この一言が1on1の中で出たとき、部下側にどんな変化があったかを次回の管理職との対話で確認します。「変化があった」という経験が、管理職が主体的に関わり方を変えるきっかけになります。
まとめ
「部下にやる気がない」という言葉は、よく聞きますが、そのまま受け取ると対策が表面的になります。「やる気がない部下」ではなく、「やる気が出にくい環境・マネジメント」があるのかもしれないという視点を持つことが、人事としての第一歩です。
人事のプロとしてできることは大きく四つあります。「やる気が出にくい環境の診断」「管理職が仕事の意味を伝えられるよう支援する」「小さな成功体験のサイクルを設計する」「現場の状態を把握する仕組みを持つ」——これらは一度にすべてやる必要はありません。今の状況で取り組めるものから始めることで、少しずつ職場の空気が変わっていきます。
エンゲージメントの低下は、「気持ちの問題」ではなく「事業成果に直結する経営課題」です。離職コスト・生産性・採用力——すべてにやる気の低下は影響を与えます。人事がこの課題を「現場の問題」として見るのではなく、「組織全体で取り組む課題」として設計できるかどうかが、一人人事の存在感を大きく変えます。
「やる気がない部下を変えよう」とするのではなく、「やる気が出やすい環境を整えよう」という問いで動き出す。その一歩が、管理職にも経営にも「人事がいてくれてよかった」と感じてもらえる仕事につながります。
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