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事業計画と人員計画がずれていると、必ずどこかで「人材不足」が爆発する

#採用#組織開発#経営参画

事業計画と人員計画がずれていると、必ずどこかで「人材不足」が爆発する

「急に採用が必要になったと言われても、すぐには対応できない」「事業部が想定していた人数と、実際に確保できた人数が全然違う」「どの部署に何人採用するかは、経営が決めることだと思っていた」——事業計画と人員計画の連動について、こういったモヤモヤを感じている人事の方は多いのではないでしょうか。

人事が「採用の実務」をこなしているだけでは、事業成長に必要な人材を適切なタイミングで確保することはできません。事業計画から逆算した人員計画を作り、それを採用・異動・育成の計画につなげることが、「経営に貢献できる人事」の仕事です。

今日は、事業計画と人員計画の連動の考え方と、人事が実践できるアプローチについて一緒に考えてみたいと思います。


「事業計画と人員計画のズレ」が起きる理由

人員計画が「現状維持」から出発している

人員計画でよくある問題は、「今の人数をベースに増減を考える」という現状維持の発想から出発してしまうことです。

「今年は10人採用したから、来年も10人くらい」「あの部署は退職者が出たから、補充で2人採用」——こういった発想では、「事業成長に必要な人員を確保する」という目的から外れてしまいます。

「来期の事業目標を達成するために、どんな人材が何人必要か」という問いから出発することが、事業計画と連動した人員計画の作り方です。

「採用リードタイム」が計算されていない

「急に採用が必要になった」という問題の多くは、「採用には時間がかかる」という現実が計画に組み込まれていないことが原因です。

中途採用の平均的なリードタイムは、採用開始から入社まで3〜6ヶ月程度。管理職や専門性の高い人材は半年〜1年かかることも珍しくありません。「来月から必要だから今月採用を始める」では間に合わないのです。

「事業計画を立てるタイミングで人員計画も立て、必要な採用を6〜12ヶ月前から始める」という逆算が必要です。

人事が事業計画策定プロセスに入っていない

多くの企業では、事業計画(売上目標・投資計画など)は経営・事業部門が作り、そこから人件費予算が決まったところで「じゃあ人事、この人数を採用してください」となります。

でも本来、「この事業計画を実現するためにどんな人材が何人必要か」という人員計画は、事業計画策定と同時並行で検討されるべきです。人事が事業計画のプロセスに入れていないと、「後から無理な採用目標を出される」問題が起きやすくなります。


よくある失敗パターン

失敗パターン1:採用計画が「事業部の要望」の集合になる

各事業部から「〇人必要です」という要望を集めて合算したものが採用計画になるパターンです。

各事業部は「自分たちの仕事を増やしたい」という視点で人員要望を出すため、合算すると会社全体の人件費予算を超えることが多い。また、「本当に事業成長に必要か」という検証がされないまま要望が通ってしまうリスクもあります。

失敗パターン2:人員計画に「育成・異動」の視点がない

採用だけが人員確保の手段と思っていると、「採用できなかったら人材不足」という状態になりがちです。

「既存社員の育成・異動・配置転換」も人員確保の重要な手段です。「この部署が必要としている能力を持っている人材が、他の部署にいないか」という視点が人員計画には必要です。

失敗パターン3:計画を作って終わり、修正しない

年初に人員計画を作って、その後は修正しない——事業環境が変化しても計画が変わらないパターンです。

事業計画は期中に修正されることがあります。事業計画が変われば、人員計画も変える必要があります。四半期ごとに「計画通り進んでいるか」を確認・修正するサイクルが必要です。


プロの人事はこう考える:事業計画と人員計画の連動

「事業計画を読む力」を磨く

人員計画を事業計画と連動させるためには、人事が「事業計画を読む力」を持つことが必要です。

売上目標が〇%増なら、営業は何人必要か。新規事業を立ち上げるなら、どんなスキルセットを持つ人材が必要か。既存事業の自動化が進むなら、どの職種の人数が減り、どの職種が増えるか——こういった「事業計画から人員への影響」を読み解く力が人事に求められます。

「経年変化を眺める→アイディア→人事施策→費用対効果→選択」という5ステップがあります。人員計画も、事業の数字の経年変化を眺め、「来期の計画を達成するためには何が必要か」を考えるところから始まります。

「供給の視点」も持つ

人員計画には「需要(事業に必要な人材)」だけでなく、「供給(どうやって人材を確保するか)」の視点も必要です。

  • 社外採用(新卒・中途・業務委託)
  • 社内育成(既存社員のスキルアップ・役職変更)
  • 社内異動(他部署からの配置転換)
  • 外部連携(派遣・業務委託・アウトソーシング)

これらの「供給オプション」を組み合わせて人員確保を設計することが、戦略的な人員計画です。

事業部と「共同で人員計画を作る」プロセスを作る

人員計画は人事が「作って事業部に提示する」のではなく、「事業部と一緒に作る」プロセスを設計することをおすすめします。

「来期の事業計画を達成するために、どんな人材が必要で、いつ頃から必要になりますか?」という問いを事業部門長に向けて、対話しながら計画を作る。このプロセスを通じて、「事業部が必要としているものを人事が深く理解する」と同時に、「採用の現実(時間がかかること・市場の状況)を事業部が理解する」という相互理解が生まれます。


明日からできる3つのこと

1. 「採用リードタイム」を過去の実績から計算する(所要時間:1〜2時間)

過去1〜2年の採用実績から、「採用開始から入社まで平均何ヶ月かかっているか」を職種別に計算してみましょう。「採用リードタイムの実績値」を持っておくことで、「いつ採用を開始すれば、いつ入社できるか」を事業部に伝えられるようになります。

2. 来期の事業部長3人に「来期の人員ニーズ」をヒアリングする(所要時間:各30〜60分)

「来期の事業計画を達成するために、人材面でどんな変化が必要だと思っていますか?」「いつ頃どんな人材が何人必要になりそうですか?」——来期の計画策定前に、事業部長に聞いてみましょう。この情報が、先手を打った採用計画・育成計画につながります。

3. 「事業計画と人員計画を連動させた資料」を1枚作ってみる(所要時間:2〜3時間)

来期の事業目標と、それを達成するために必要な人材(採用・育成・異動)を1ページにまとめた資料を試作してみましょう。完璧でなくていい。「人事が事業計画から人員計画を考えようとしている」というシグナルを経営に示すことが第一歩です。


まとめ:「人員計画の共同設計」が経営パートナーへの道

事業計画と人員計画を連動させることは、「人事が経営の一部になる」ための重要な一歩です。

「経営数字からの発想×組織状況からの発想=両利きの人事」という言葉があります。人員計画の策定は、この「両利き」を実践する場そのものです。「事業の成長に何人が必要か(経営数字から)」と「今の組織にいる人材をどう活かせるか(組織状況から)」の両方を見ながら計画を作る。

最初から完璧な連動はできません。まず「採用を決める前に、事業部長と話す機会を作る」という小さな変化から始めてみてください。


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