人材ポートフォリオを設計できる人事が、経営の信頼を勝ち取る
目次
- 人材ポートフォリオとは何か
- 「必要な人材の全体像」を見る視点
- 「現状分析」と「将来設計」の2つの視点
- よくある失敗パターン
- 失敗パターン1:「職種・人数」しか管理していない
- 失敗パターン2:「現状把握」で終わって「将来設計」がない
- 失敗パターン3:人事だけで完結させる
- プロの人事はこう考える:人材ポートフォリオの設計
- 「事業戦略から必要な人材を逆算する」
- 「9ボックス・グリッド」を活用する
- 「ポートフォリオのGAP」を定期的に確認する
- 明日からできる3つのこと
- 1. 「職種別・等級別の人材マップ」を作る(所要時間:2〜3時間)
- 2. 「3年後に増やしたいスキルセット・職種」を経営に聞く(所要時間:60分)
- 3. 「9ボックス・グリッド」を1部署で試してみる(所要時間:部長との対話1時間)
- まとめ:人材ポートフォリオは「人材戦略の設計図」
- もっと深く学びたい方へ
人材ポートフォリオを設計できる人事が、経営の信頼を勝ち取る
「経営から"人材戦略を示してほしい"と言われたが、何を示せばいいのか」「今の組織に必要な人材と、実際にいる人材のギャップをどう把握すればいいか」——こういった問いに向き合っている人事の方に、「人材ポートフォリオ」という考え方を紹介したいと思います。
人材ポートフォリオとは、「組織に必要な人材の種類・数・質」を体系的に整理し、「現状の人材と必要な人材のギャップ」を可視化したものです。これができると、「どの人材を採用すべきか」「誰を育成すべきか」「どの人材に異動・配置転換を進めるべきか」という意思決定の根拠が生まれます。
人材ポートフォリオとは何か
「必要な人材の全体像」を見る視点
人材ポートフォリオは、「個人」ではなく「組織全体として必要な人材の組み合わせ」を考える視点です。
「A職種は今5人いるが、来期の事業計画では8人必要」「Bのスキルセットを持つ人材が社内に不足している」「Cという役割を担う人材が特定の部署に偏っている」——こういった「人材の過不足・偏り」を把握することが、人材ポートフォリオの目的です。
「経営数字からの発想×組織状況からの発想=両利きの人事」という考え方があります。人材ポートフォリオは、「事業計画から逆算した必要人材(経営数字からの発想)」と「現状の人材の状況把握(組織状況からの発想)」を組み合わせたものです。
「現状分析」と「将来設計」の2つの視点
人材ポートフォリオには「現状分析(今の人材の全体像)」と「将来設計(将来に必要な人材の全体像)」の2つの視点があります。
現状分析:今の組織にどんな人材が、どのくらいいるのか。職種別・スキル別・等級別・年齢別などで整理する。
将来設計:3〜5年後の事業を実現するために、どんな人材が何人必要か。現状との差(Gap)が採用・育成・配置の計画につながる。
よくある失敗パターン
失敗パターン1:「職種・人数」しか管理していない
「営業は20名、マーケティングは5名、エンジニアは30名」という「頭数」だけを管理している状態です。
人数だけでは「必要な仕事をこなせる人材がいるか」「次世代リーダーがいるか」「特定のスキルに偏りがないか」という問いに答えられません。「人数」だけでなく「スキル・経験・等級・成長段階」などの質的な情報もポートフォリオに含めることが必要です。
失敗パターン2:「現状把握」で終わって「将来設計」がない
「うちの組織の人材の状況はこうです」という現状分析だけで終わり、「だから何をするか」という将来設計につながっていないパターンです。
人材ポートフォリオは「現状分析+将来設計+GAP分析+行動計画」という一連の流れとしてはじめて価値を持ちます。
失敗パターン3:人事だけで完結させる
人材ポートフォリオを人事だけで作って、経営や現場と共有しないパターンです。
人材ポートフォリオは「経営と人事が人材戦略を共有するためのツール」です。人事だけで持っていても価値は限定的です。経営が「この人材の過不足を解消するために、採用・育成に投資する」という意思決定をするための材料として活用できてはじめて機能します。
プロの人事はこう考える:人材ポートフォリオの設計
「事業戦略から必要な人材を逆算する」
人材ポートフォリオの将来設計の出発点は、「事業戦略から必要な人材を逆算すること」です。
「3年後に売上を〇〇億円にする計画なら、営業は何名必要か」「新規事業を立ち上げるために、どんなスキルを持つ人材が必要か」「DXを推進するために、どんな技術・経験を持つ人材が必要か」——事業計画の数字と方向性から、「必要な人材像」を具体的に描きます。
「9ボックス・グリッド」を活用する
人材ポートフォリオの定番ツールとして「9ボックス・グリッド」があります。縦軸に「将来のポテンシャル(成長可能性)」、横軸に「現在のパフォーマンス(業績・成果)」を取り、組織の全人材を9つのセグメントに分類するツールです。
各セグメントに分類された人材に対して、「どんな育成施策・配置転換が適切か」を判断する。「ハイパフォーマー×ハイポテンシャル」の人材は「次世代リーダー候補」、「ハイパフォーマー×ローポテンシャル」の人材は「現職での活躍継続」——こういった分類が、育成・配置の意思決定の根拠になります。
「ポートフォリオのGAP」を定期的に確認する
人材ポートフォリオは年1〜2回、「現状の人材ポートフォリオ」と「将来に必要な人材ポートフォリオ」のGAPを確認する場を作ることが重要です。
「今年、GAPを埋めるために何をしたか」「GAPが縮まっているか、広がっているか」——この確認と経営へのフィードバックが、人材戦略の進捗管理になります。
明日からできる3つのこと
1. 「職種別・等級別の人材マップ」を作る(所要時間:2〜3時間)
まず「今の組織に何人のどんな人材がいるか」を職種別・等級別に整理した「人材マップ」を作ってみましょう。1〜2ページの表で十分です。「見える化」することで、「どこに過不足があるか」が見えてきます。
2. 「3年後に増やしたいスキルセット・職種」を経営に聞く(所要時間:60分)
経営幹部1〜2名に、「3年後の事業計画を実現するために、今の組織で不足しているスキル・人材は何だと思いますか?」を聞いてみましょう。この対話が、「事業計画と人材戦略の連動」の第一歩になります。
3. 「9ボックス・グリッド」を1部署で試してみる(所要時間:部長との対話1時間)
まず1つの部署の管理職と、「部署のメンバーを9ボックスで分類するとしたら」という対話をしてみましょう。完璧な結果でなくていい。「この人はどのボックスだと思いますか?それはなぜですか?」という対話が、「育成すべき人材・方向性」を具体化するヒントになります。
まとめ:人材ポートフォリオは「人材戦略の設計図」
人材ポートフォリオを描くことができると、「今どこに人材が過不足しているか」「将来に何が必要か」「それを埋めるために何をするか」という人材戦略の全体像が見えます。
「人事の仕事の質の7〜8割は"知る"の質で決まる」という言葉があります。人材ポートフォリオは、「自社の人材の現状と将来を深く知るための仕組み」です。これを持つ人事は、経営に対して「人材の視点から事業戦略を議論できるパートナー」になれます。
もっと深く学びたい方へ
タレントマネジメントと人材戦略の設計を体系的に学びたい方には、「人事のプロ実践講座」がお役に立てるかもしれません。
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