福利厚生を「全員同じ」にしている限り、誰にも刺さらない
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福利厚生を「全員同じ」にしている限り、誰にも刺さらない
「充実した福利厚生を揃えているのに、社員から評価されない」「福利厚生にコストをかけているのに、採用でも定着でも効果が見えない」——こういった悩みを持つ人事の方は多いのではないでしょうか。
福利厚生は「全員に同じものを提供する」という考え方でずっと設計されてきましたが、社員の多様性が増した現代では、「一律の福利厚生」が誰にも刺さらないという状況が生まれやすくなっています。
今日は、福利厚生の最適化という視点から、「使われる福利厚生」をどう設計するかについて考えてみたいと思います。
福利厚生が「使われない」理由
ニーズが多様化している
20代独身社員、30代子育て中の社員、50代親の介護が始まった社員——それぞれが「有難い」と感じる福利厚生は違います。
「会社の保養所が使える」という福利厚生は、家族旅行を楽しめる30〜40代には有難いかもしれませんが、独身の20代には刺さりにくい。「社員食堂」はオフィスに毎日来る社員には価値があっても、リモートワーク中心の社員には価値が薄い。
「全員に同じものを提供する」という発想では、多様なニーズには対応できません。
「使い方がわからない」という問題
福利厚生の利用率が低い原因の一つが、「どんな制度があって、どう使えるかがわからない」ことです。
制度を作っても、「周知が不十分」「手続きが煩雑」「使ってもいいのかという雰囲気」——こういった障壁があると、利用されません。「作って終わり」ではなく、「使われる仕組みを作る」ことが必要です。
福利厚生最適化の考え方
「選択型福利厚生(カフェテリアプラン)」の導入
多様なニーズに対応するための考え方として、「カフェテリアプラン(選択型福利厚生)」があります。
各社員に一定のポイントを付与し、そのポイントを使って「自分に必要な福利厚生を選択できる」という仕組みです。「運動施設利用」「スキルアップ支援(研修・書籍費)」「育児支援」「旅行・レジャー」「健康診断オプション」——様々なメニューから選べる形にすることで、各社員が「本当に役立つ」福利厚生を使えます。
ただし、カフェテリアプランは運用コストがかかるため、「導入前にコストと効果を試算する」ことが重要です。
「採用・定着への効果」で絞り込む
福利厚生を最適化する際の判断軸として、「採用に効く(候補者の入社意思を高める)」と「定着に効く(在籍社員の満足・定着を高める)」を分けて考えることが有効です。
採用時に候補者が重視する福利厚生(リモートワーク制度、育児支援、フレックス)と、在籍社員が価値を感じる福利厚生(健康支援、スキルアップ支援、家族手当)は必ずしも同じではありません。「採用のための福利厚生」と「定着のための福利厚生」を意識して投資することで、限られたコストを効果的に使えます。
「不要な福利厚生を廃止する」勇気も必要
長年続けてきた福利厚生の中には、「ほとんど使われていないが、慣習として続けている」ものがあるかもしれません。
利用率の低い福利厚生を廃止することは社員の反発を生みやすいですが、「廃止分のコストをより効果的な福利厚生に振り向ける」ことで、全体の満足度を上げることができます。廃止を検討する際は、事前に社員への丁寧な説明と代替案の提示が必要です。
明日からできる3つのこと
1. 「現在の福利厚生の利用率」を確認する(所要時間:1〜2時間)
現在の福利厚生メニューそれぞれの「利用率(利用人数/対象社員数)」を計算してみましょう。「10%以下の利用率」の福利厚生は、「なぜ使われないか」を調査する必要があります。
2. 社員に「どんな福利厚生があると嬉しいか」を聞く(所要時間:アンケート設計1時間、回収・集計1〜2時間)
短いアンケートで「今の福利厚生で最も役立っているもの」「あったら嬉しい福利厚生を3つ選んでください(選択肢から)」を聞いてみましょう。社員のニーズを把握することが、福利厚生最適化の出発点です。
3. 「福利厚生の周知状況」を確認する(所要時間:30分)
新入社員や入社1〜2年の社員に「会社の福利厚生制度を把握していますか?」を聞いてみましょう。「知らない制度が多い」なら、「制度の充実」より「周知の改善」が優先課題です。
まとめ:福利厚生は「誰のための投資か」を考える
福利厚生は「会社の費用」ですが、「社員への投資」として考えると、その効果を測る視点が変わります。
「施策の効果は売上伸長・コスト削減・リスク低減の3つで整理する」という考え方があります。福利厚生も「採用力向上(売上)」「定着率改善(コスト削減)」「社員の健康・ウェルビーイング維持(リスク低減)」として整理できます。「使われる福利厚生」を設計することが、投資の価値を最大化する道です。
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