人事のプロになるには何が必要か。5年目の壁を越えるための考え方
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人事のプロになるには何が必要か。5年目の壁を越えるための考え方

#1on1#採用#評価#組織開発#経営参画

人事のプロになるには何が必要か。5年目の壁を越えるための考え方

「人事歴5年になるのに、自分は"プロ"と呼べないような気がして」

採用も評価も1on1も、一通りはやってきた。でも「人事のプロ」と胸を張って言えるかというと、自信がない。隣の同僚の方がすごく見えるし、SNSを見れば「すごい人事」がたくさんいる。「このまま続けていていいのだろうか」という迷いが頭をよぎる——そんなモヤモヤを抱えている人事の方は、想像以上に多いです。

「5年間ずっと採用担当をしてきたのに、自分が何を武器にしているのかわからなくなった」という声を聞いたことがあります。採用目標は毎年達成してきた。採用媒体の使い方も知っている。でも「もし他の会社に行ったとして、自分に何ができるか」と問われると、答えが出てこない、と。

「スキルを積み重ねてきた」という感覚はある。でも「プロとして自信がある」とは言えない——この乖離はどこから来るのでしょうか。

今日は「人事のプロ」とは何かという問いから出発して、5年目・10年目の人事担当者が「次のステージ」に進むための考え方をお伝えします。


「プロ」と「経験者」は何が違うのか

80を超えるバンドを組んだ経験の中で気づいたことがあります。「技術がある人」と「バンドがうまくいく人」は必ずしも一致しない、ということ。

一番うまいギタリストが集まったバンドが必ずしも成功するわけじゃない。方向性を共有して、互いの役割を理解して、少しずつ積み上げていくバンドの方が、長く続いて、結果として良い音楽を作り出す。

人事も同じだと私は思っています。「採用・評価・育成のスキルがある人」と「人事のプロ」は別物です。スキルは「手段」であって、「目的」ではない。「組織と人が良い状態になること」という目的に向けて、スキルを適切に使いこなせる人が、人事のプロだと思っています。

別の言い方をすると、経験者は「何をやったか」を語り、プロは「なぜそれをやったか」「どんな成果につながったか」を語れる。採用実績が100人いても、「その採用が事業にどう貢献したか」を語れるかどうかが、プロと経験者を分ける一つの境界線です。

人事のプロに必要な「4つの知る」

人事の仕事の質の7〜8割は"知る"の質で決まるという考え方があります。

「知る」には4つあります。

① 事業を知る:自社がどんなビジネスをしていて、どこで勝負していて、何が課題かを理解する。「人事として何ができるか」は、「事業が何を必要としているか」を理解してはじめて見えてきます。

② 組織を知る:今の組織の状態・強み・課題・雰囲気を理解する。「制度を変えれば解決できる問題か、文化を変えなければ解決できない問題か」を見分けるには、組織を深く知る必要があります。

③ 人を知る:社員一人ひとりの状況・強み・不満・期待を理解する。「全員への一律施策」より「この人のこの課題に応じた対話」の方が、長期的な成果を生む場合が多いです。

④ 歴史(先人の知恵)を知る:人事・組織論・心理学の知見を学ぶ。100年前に書かれたドラッカーの組織論が今の現場にそのまま当てはまることがあります。先人の知恵を借りることで、「車輪の再発明」を防ぎ、成長を加速できます。

「採用の経験がある」「評価制度を作ったことがある」は「やったことがある」であって、「知っている」とは違います。人事のプロは、経験から学び、先人の知恵と統合して、自社の文脈に適用できる人です。

「両利きの人事」という視点

もう一つ、人事のプロを定義する言葉として「両利きの人事」という考え方があります。

「経営数字からの発想×組織状況からの発想=両利きの人事」——つまり、「事業を伸ばすために人や組織をどう動かすか(経営数字から)」と「今の組織の状態から何が必要かを見極める(組織状況から)」の両方の視点を持てる人事です。

「人にとって良いから」だけを根拠にした施策では、経営の支持を得にくいです。「この施策が事業の〇〇課題を解決する」という経営数字との接続が、人事が経営から信頼される鍵です。この両利きの発想が持てるようになることが、5年目の壁を越える重要な要素だと思っています。


人事のプロに近づく3つの習慣

習慣1:「なぜうまくいったのか・いかなかったのか」を言語化する

人事の仕事で一番大切な習慣は「振り返り」です。

施策を実行した後に、「何がうまくいったか」「何がうまくいかなかったか」「次回どう改善するか」を短くてもいいので言語化する。手帳でもメモアプリでも、媒体はなんでもいい。

この習慣を続けると、「観(かん)」が磨かれていきます。人間観・仕事観・組織観——物事をどう見るかという視点が深まる。同じ経験をしても、振り返りをする人とそうでない人では、5年後の見え方が全く違います。

「経験年数」は誰でも積み重ねられますが、「経験から学ぶ力」は意識的に育てなければ身につきません。振り返りの習慣が、経験を「成長の資産」に変える最も重要な装置です。

習慣2:「先人の知恵」を積極的に取り入れる

100年以上前に書かれた組織論の本が、今の現場にそのまま当てはまることがあります。「車輪の再発明をしない」という姿勢が、人事のプロへの道を短縮してくれます。

本を読む、研究論文を読む、セミナーに参加する——これらすべてが「先人の知恵を借りる」ことです。「実務経験だけで学ぶ」より、「実務+先人の知恵」で学ぶ方が、圧倒的に速く深く成長できます。

先人の知恵を学ぶことで得られるのは「知識」だけではありません。「自分の経験を抽象化して語る言葉」が増えます。「あの時あの人事施策がうまくいったのは、こういう理論的な背景があったからだ」という言語化ができるようになることで、経験が再現可能な知識に変わります。

習慣3:「仲間と学ぶ」場を作る

人事の悩みは機密性が高く、社内では相談しにくいことが多い。「本当は話したいのに、話せる場がない」という孤独を感じている人事担当者はとても多いです。

だからこそ、社外に「仲間と学ぶ場」を持つことが大切です。同じ悩みを持つ人事担当者と話すと、「自分だけじゃないんだ」という安心感が生まれます。そして他社の事例から学ぶことが、自社の課題を新しい角度から見るきっかけになります。

「一人で本を読む学び」と「仲間と対話して学ぶ」では、気づきの質が変わります。他社の事例を聞いて「うちでも同じことが起きている」と気づく体験、自分の取り組みを話すことで「なんで自分はそう思っていたんだろう」という自己理解が深まる体験——これらは一人では得られない学びです。


まとめ

人事のプロとは、「採用・評価・育成のスキルが全部ある人」ではありません。「事業・組織・人・先人の知恵を深く知り、それを組み合わせて組織と人が良い状態になることを実現し続ける人」だと私は思っています。

5年目の壁は、「スキルの不足」より「視点の不足」から来ることが多いです。「手段(スキル)」から「目的(事業・組織への貢献)」へ視点を広げることが、壁を越える鍵になります。

プロになるには時間がかかります。でも「振り返る」「先人の知恵を借りる」「仲間と学ぶ」という3つの習慣を続けることで、確実に近づいていける。「すべての組織に人事のプロを」——それが私たちのビジョンです。あなたの一歩を、応援しています。


もう少し深く学びたい方へ

人事図書館では、人事担当者が仲間と学び合える場を提供しています。 「先人の知恵を学ぶ・仲間と振り返る」という2つの習慣を、同じ志を持つ人事仲間と一緒に続けられます。

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吉田洋介

人事図書館 代表 / 著書『「人事のプロ」はこう動く』

リクルートマネジメントソリューションズで14年間・500社以上の組織人事コンサルティングに従事。 上海駐在を経て2021年に独立。2024年に人事図書館を設立(会員740名超)。 「すべての組織に人事のプロを」を理念に、経営と現場をつなぐ人事の実践知を発信している。

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