人事のキャリアパスが「なんとなく」だと、プロとして成長しにくい
キャリア・人事の成長

人事のキャリアパスが「なんとなく」だと、プロとして成長しにくい

#採用#評価#研修#組織開発#経営参画

人事のキャリアパスが「なんとなく」だと、プロとして成長しにくい

「人事のキャリアって、どこに向かえばいいのかわからない」——こういう悩みを持つ人事担当者はいるのではないかと思います。採用・労務・評価・研修・組織開発……と様々な機能があり、「何かを一通りこなせるようになっても、プロと呼べる自信がない」という感覚を持つ方も少なくないように思います。

人事のキャリアパスは、他の職種と比べて「わかりにくい」という特徴があります。営業なら「プレイヤー→リーダー→マネジャー」という階段が比較的見えやすいですが、人事は「何が深まったら一人前か」の基準が曖昧になりやすい。

でも、人事のプロとしてのキャリアには、確かな方向性があります。この記事では、人事のキャリアパスの考え方と、意図的なキャリア設計のためのヒントをお伝えします。


なぜ人事はキャリアパスが見えにくいのか

「ゼネラリスト」か「スペシャリスト」かが曖昧

人事には様々な機能があります。採用・労務・研修・評価・組織開発・HRBP・CHRO……。日本の多くの企業では「人事はゼネラリスト的に一通り経験する」というキャリアパスが主流ですが、近年は「採用のプロ」「組織開発のスペシャリスト」という方向性も注目されています。

「ゼネラリストとスペシャリストのどちらを目指すべきか」という問いへの答えは、「どちらが正解」ではなく「自分は何で価値を出したいか」という自分軸の明確化から始まります。

「業務をこなすこと」と「プロとして価値を出すこと」の違いが見えにくい

「採用の書類選考・面接調整・オファー提示……という業務をこなしている」状態と、「採用戦略を設計し、組織の成長に貢献している」状態は、全く異なるプロのレベルです。

でも、「業務をこなすこと」に追われていると、「自分がプロとして成長しているのか、単に業務をこなしているだけか」の区別がつきにくくなります。

「人事の仕事の質の7-8割は"知る"の質で決まる」という観点からすれば、プロとしての成長は「業務の処理能力」だけでなく、「事業・組織・人・歴史をどれだけ深く知れているか」の蓄積だと思っています。

キャリアを「会社に任せる」という習慣

多くの会社では、「人事配置は会社が決める」という文化があります。「どこに異動するか、何を経験するかは会社が決める」という状態では、自分のキャリアを設計するという発想が育ちにくいです。

でも、自分のキャリアに対して主体性を持つことは、「自律的なプロとしての成長」に不可欠です。会社が用意してくれる機会を受け身に待つだけでなく、「自分はこういう方向に成長したい」を表明し、機会を作っていくことが重要です。


人事キャリアの方向性を考える3つの軸

軸1:深さ(スペシャリティ)vs 広さ(ゼネラリティ)

人事のキャリアを考えるとき、「どの領域を深めるか」という専門性の軸と、「どの機能を横断的に経験するか」という幅の軸があります。

「採用のプロ」として採用戦略・チャネル設計・候補者体験を深めるのか、「組織開発のスペシャリスト」として組織診断・変革推進を専門にするのか、あるいは「HRBP(HR Business Partner)」として事業に伴走するゼネラリストを目指すのか。

「自分は何で価値を出したいか」「どんな貢献をしたいか」という問いへの答えが、軸の選択を決めます。

軸2:個人貢献者(IC)vs マネジャー

人事のキャリアには、「プレイヤーとして深い専門性を磨き続ける個人貢献者(IC)」と「チームをマネジメントしながら組織への影響力を広げるマネジャー」という方向性があります。

どちらが良いかは個人の強みと志向によりますが、「マネジャーになることが出世」という一元的な評価が強い組織では、IC志向の人事担当者が正当に評価されにくいという問題もあります。

「マネジャーとしての力を磨くのか、専門職として深みを増すのか」という選択は、早めに自覚しておくと良いと思っています。

軸3:社内キャリア vs 外部展開

人事のキャリアは、「同一企業内でのキャリアアップ」だけでなく、「人事コンサルタント・HR Tech企業への転職・独立・副業」という外部展開も選択肢として広がっています。

「自社内でのキャリアを深めるか」「外に出て幅広い組織に貢献するか」という軸も、キャリア設計で考えておきたい視点です。


プロの人事はこう考える

知る:「4つを知る」がキャリア成長の基盤

プロの人事が深めるべき「知る」の4領域があると思っています。

事業を知る:自社の事業モデル・競合・市場・経営数字。「人事の仕事の質の7-8割は"知る"の質で決まる」という観点から、事業への理解がプロ人事の基盤です。

組織を知る:自社の組織の特性・文化・課題・強み。組織を知ることで、人事施策の設計の精度が上がります。

人を知る:社員一人ひとりの特性・強み・悩み・動機。「人を知ること」がすべての人事施策の起点です。

歴史を知る:人事・組織に関する先人の知恵・研究・事例。「車輪の再発明」を防ぐために、先人の知恵を学び続けることが重要です。

この4つを深める習慣が、プロとしての成長の土台になります。

考える:意図的な「経験の設計」

キャリアは「偶然の積み重ね」ではなく、「意図的な経験の積み重ね」で形成されます。

「今の自分に不足している経験は何か」「どんな機会があれば成長できるか」を定期的に考え、機会を求める行動が重要です。

社内での異動提案、プロジェクトへの参画、社外コミュニティへの参加、副業・独立の検討——これらは「自分のキャリアを自分で動かす」ための具体的な行動です。

「仲間と学びで、未来を拓く」——人事のコミュニティや学習の場に積極的に参加することが、キャリア形成の大きな推進力になります。

動く:自分の「強みと深めたい領域」を言語化する

キャリアを設計するための最初の一歩として、「自分の今の強みは何か」「次に深めたい領域はどこか」を言語化してみることをおすすめします。

「採用の経験が一番長いが、組織開発は浅い」「評価制度の運用は得意だが、経営との対話が弱い」——こうした自己認識が、「次にどんな経験を求めるか」の判断軸になります。

振り返る:年に一度のキャリアレビュー

年に一度、「今年どんな経験をして、何が成長したか」「来年はどんな経験を積みたいか」を振り返る時間を持つことをおすすめします。

「振り返り」で「観(人間観・仕事観・組織観)」を磨き続けることが、長期的なキャリア成長の核心です。


明日からできる3つのこと

1. 「今の自分の強み3つ・弱み3つ」を書き出す(30分)

今の自分の人事としての「強みと弱み」を3つずつ書き出してみましょう。この自己認識が、キャリア設計の出発点です。

着手ポイント:「自分がやっていること」ではなく「自分がそれによって価値を出せているか」を基準に考えると、より正確な強み・弱みが見えてきます。

2. 「3年後にどんな人事でありたいか」を一文で書く(15分)

「3年後、自分はどんな人事の仕事をしていたいか・どんな価値を提供していたいか」を一文で書いてみましょう。漠然としていてもいいです。「書こうとする行為」自体が、自分のキャリアに向き合うきっかけになります。

着手ポイント:「○○会社の人事部長になりたい」という役職ではなく、「○○という価値を提供できる人事でありたい」という価値の視点で書くと、方向性が明確になります。

3. 「自分が最も学びたい領域」の本や情報源を一つ見つける(15分)

今の自分が最も深めたい人事の領域(採用・組織開発・経営参画・等)について、「次に読む本・参加するコミュニティ・フォローする情報源」を一つ特定してみましょう。

着手ポイント:人事図書館のような人事専門コミュニティへの参加も、同じ課題を持つ仲間との対話が得られる有効な方法です。


まとめ

人事のキャリアパスは、「なんとなく業務をこなす」だけでは見えてきません。「自分は何で価値を出したいか」「どんな人事でありたいか」という問いに向き合い、意図的に経験を積み重ねることで形成されます。

「仲間と学びで、未来を拓く」——人事のプロとして成長し続けるために、学び続ける場と仲間を持つことを大切にしてほしいと思っています。


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吉田洋介

人事図書館 代表 / 著書『「人事のプロ」はこう動く』

リクルートマネジメントソリューションズで14年間・500社以上の組織人事コンサルティングに従事。 上海駐在を経て2021年に独立。2024年に人事図書館を設立(会員740名超)。 「すべての組織に人事のプロを」を理念に、経営と現場をつなぐ人事の実践知を発信している。

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