評価・等級制度

MBOとOKR、どちらを選ぶか迷ったら「目的」から考えてほしい

#評価#組織開発#経営参画#制度設計

MBOとOKR、どちらを選ぶか迷ったら「目的」から考えてほしい

「OKRに切り替えようかと思っているんですが……」「MBOでは限界を感じていて」——目標管理の仕組みを見直そうとしている人事の方から、こういった相談を受けることがあります。

MBO(目標による管理)とOKR(Objectives and Key Results)——どちらも「目標を使って組織を動かす」仕組みですが、設計思想が異なります。「どちらが優れているか」という問いに、唯一の正解はありません。自社の状況と目的に合った選択が必要です。

今日は、MBOとOKRの違いを整理しながら、「自社に合う目標管理をどう選び、どう運用するか」について一緒に考えてみたいと思います。


MBOとOKRの根本的な違い

MBOの特徴:「達成可能な目標」で評価する

MBO(Management by Objectives)は、ピーター・ドラッカーが提唱した概念で、「個人の目標設定と達成度評価」を軸とした目標管理の仕組みです。

MBOの特徴は、「達成可能な目標」を設定し、その達成度を評価に連動させることです。「売上〇〇万円達成」「プロジェクト〇〇を期日までに完了」——こういった具体的な目標を設定し、「達成した/しなかった」を評価の基準にします。

MBOの強みは、「評価の基準が明確になる」「目標に向かって個人が動きやすくなる」という点です。一方で弱点は、「達成可能な目標しか設定しない」「数値化しにくいことが評価されにくい」「個人の目標と組織の方向性がズレやすい」という点です。

OKRの特徴:「野心的な目標」で方向性を揃える

OKR(Objectives and Key Results)は、Googleなどのシリコンバレーの企業が普及させた目標管理の手法です。

OKRの特徴は、「野心的な目標(Objective)」を設定し、「それが達成されたことを示す結果指標(Key Results)」をセットで管理することです。目標は「60〜70%達成できれば成功」くらいのストレッチした目標を設定し、「全員の目標が同じ方向を向いていること」を重視します。

OKRの強みは、「チームや組織の方向性を揃えやすい」「挑戦的な目標設定を促せる」「透明性が高まる(全員の目標が見える)」という点です。弱点は、「評価との連動が難しい」「野心的な目標を設定する文化がないと形骸化しやすい」という点です。

どちらが「優れているか」という問いは立て方が違う

MBOとOKRを「どちらが優れているか」で比べることは、「スプーンと箸はどちらが優れているか」を比べるようなものかもしれません。用途が違えば、使うべき道具も変わります。

「MBOは古い」「OKRにしなければ時代遅れ」という論調を聞くことがありますが、それは「目的に合わない道具を使ってしまう可能性」のある考え方だと思っています。大切なのは「何のために目標管理を使うのか」という目的から、適した手法を選ぶことです。


よくある失敗パターン

失敗パターン1:「流行っているからOKRに切り替える」

「大企業がOKRを導入した」「OKRが話題になっている」——こういった外部の動向を受けて、「うちもOKRにしよう」と決めてしまうパターンです。

「手段ありきで人事を動かしてはいけない」という考え方があります。OKRを導入する前に、「なぜ今の目標管理に問題があるのか」「OKRで何を解決したいのか」を明確にしないと、導入して失敗します。

失敗パターン2:評価に連動させてOKRを形骸化させる

OKRを評価に連動させてしまうと、社員は「評価を下げたくない」という心理が働いて、野心的な目標を設定しなくなります。「絶対に達成できる目標しか設定しない」という状態になってしまう。これはOKRの設計思想と矛盾します。

OKRは「評価ツール」ではなく「方向性を揃えるツール」として設計されています。評価への連動は慎重に検討する必要があります。

失敗パターン3:全社一斉に切り替えようとする

目標管理の仕組みを全社で一斉に切り替えようとすると、混乱が大きくなりがちです。

「まず一つの部署でパイロット運用する」「3ヶ月試してみて振り返る」——小さく始めて、うまくいったら広げる、という進め方が現実的です。


プロの人事はこう考える:目標管理の選択と設計

「何のために目標管理を使うのか」から始める

MBOとOKRの選択の前に、「自社は何のために目標管理を使いたいのか」を明確にすることが大切です。

評価の公平性・納得感を高めたい→MBOの改善が優先されることが多い 組織全体の方向性を揃えたい・チームの一体感を高めたい→OKRが合っている可能性がある 個人の挑戦を促したい→OKRのストレッチゴール的な考え方が参考になる 現場の裁量を高めたい→どちらの手法でも「目標の設定プロセス」の設計が重要

「経営数字からの発想×組織状況からの発想=両利きの人事」という考え方があります。目標管理の選択も、「経営課題(業績改善・組織変革)から何が必要かを考えること」と「組織の現状(管理職の力量・文化)から何が使えるかを考えること」の両方が必要です。

ハイブリッドで設計する

多くの企業では、「MBOとOKRのいいとこどり」が現実的な選択です。

「個人の評価はMBOベースで行う(達成可能な目標×評価連動)」、「チーム・部署・会社のレベルではOKRの考え方で方向性を揃える(野心的な目標×透明性)」——このように層を分けて使い分けることで、両方の強みを活かせます。

「目標設定の質」を上げることに集中する

MBOでもOKRでも、根本的な問題は「目標の設定の質」にあることが多いです。

「良い目標とは何か」「目標設定のプロセスはどうあるべきか」「上司は部下の目標設定をどうサポートするか」——これらを管理職トレーニングで丁寧に扱うことが、目標管理の成否を決める重要な要素です。


明日からできる3つのこと

1. 「現在の目標管理で何が問題か」を管理職3〜5人に聞く(所要時間:各30分)

目標管理の改善を検討する前に、まず現状の問題を正確に把握しましょう。「目標設定のプロセスで一番大変なのはどこですか?」「目標が達成できなかった時の評価面談で、どんな課題を感じますか?」という質問が有効です。

2. 「OKRを試したい」なら1部署・1四半期から(所要時間:設計に半日)

OKRを試してみたいなら、1部署・1四半期のパイロット運用から始めましょう。「試してみてどうだったか」を評価してから、全社展開を判断する。この「小さく試す」アプローチが、失敗リスクを下げます。

3. 目標設定プロセスを「上司との対話」で始める(所要時間:部下一人あたり30〜60分)

目標はトップダウンで「はい、これが今期の目標です」と伝えるのではなく、「今期の会社・部署の方向性をふまえて、あなたはどんな目標が良いと思いますか?」という対話から始める。このプロセスの改善だけでも、目標管理の質は大きく変わります。


まとめ:大切なのは「仕組み」より「文化」

MBOでもOKRでも、「仕組みさえ入れれば成果が上がる」ということはありません。

どんな目標管理の仕組みも、「目標について上司と部下が真剣に対話できているか」「目標が組織の方向性と連動しているか」「目標の達成に向けてチームで動けているか」——こういった「文化」がなければ機能しません。

仕組みを変える前に、「目標について対話できる文化があるか」を確認することをおすすめします。仕組みは文化の土台があってはじめて機能します。


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