組織ネットワーク分析で「見えない組織の力」を可視化する
目次
- 「公式組織図」と「実際の組織」のギャップ
- 組織図は「建前」を示す
- 「隠れたキーパーソン」が組織を動かしている
- 組織ネットワーク分析の活用場面
- 変革推進のキーパーソン特定
- 離職リスクの早期発見
- 部門間連携の「断絶点」を発見する
- プロの人事はこう考える:ONA活用の注意点
- 「プライバシー」と「信頼」の問題を丁寧に扱う
- 「分析」より「対話」を重視する
- 「継続的な測定」で変化を追う
- 明日からできる3つのこと
- 1. 「誰が情報ハブになっているか」を直感で書き出す(所要時間:30分)
- 2. 「部門間の連携状況」をヒアリングする(所要時間:各30分×3〜5人)
- 3. 「ONA活用事例」を3つ調べる(所要時間:1〜2時間)
- まとめ:「見えない組織」を見ることが、組織開発の精度を上げる
- もっと深く学びたい方へ
組織ネットワーク分析で「見えない組織の力」を可視化する
「公式の組織図通りには仕事が進んでいない気がする」「影響力のあるキーパーソンが誰なのか、データでわかれば」「部門間の連携が悪い原因が、組織図ではわからない」——こういった悩みを持つ人事・組織開発担当者に最近注目されているのが、「組織ネットワーク分析(ONA: Organizational Network Analysis)」です。
組織ネットワーク分析は、「誰が誰と仕事上のやり取りをしているか」という関係性のデータを収集・分析することで、「公式組織図では見えない組織のダイナミクス」を可視化する手法です。
今日は、組織ネットワーク分析の考え方と、人事・組織開発にどう活かせるかを考えてみたいと思います。
「公式組織図」と「実際の組織」のギャップ
組織図は「建前」を示す
多くの会社の組織図は、「誰が誰の上司か」「どのチームがどの部署に属するか」という正式な報告ラインを示しています。
しかし、実際の仕事の流れは、必ずしも組織図通りではありません。「別部署のAさんに相談すると何でも解決する」「プロジェクトが進む際は、いつも非公式にBさんが調整役になっている」「Cさんが退職したら、部門を跨いだ連携が一気に弱まった」——こういった「非公式な影響力・コネクション」が、実際の組織を動かしています。
「隠れたキーパーソン」が組織を動かしている
組織ネットワーク分析をすると、「組織図上は中間管理職だが、情報のハブになっており多くの人が相談に来ている」「新しい取り組みが始まるとき、必ずあの人が関わっている」という「隠れたキーパーソン」が見えてきます。
こういった人材の「退職リスク管理」「適切な役割付与」「組織変更時の影響検証」において、ネットワーク分析は有効な情報を提供します。
組織ネットワーク分析の活用場面
変革推進のキーパーソン特定
組織変革・文化変革を進める際、「誰から変えていくか」という問いは重要です。
「公式のリーダー(役職者)」に変化を求めるだけでなく、「非公式に影響力を持つ人材」にも変革の担い手になってもらうことで、変革の浸透が加速します。組織ネットワーク分析は、「変革の伝播に最も効果的な人材」を特定するためのデータを提供します。
離職リスクの早期発見
「組織ネットワーク上でのつながりが急激に薄まっている人材」は、「組織から気持ちが離れている(離職意向が高まっている)」サインである場合があります。
「特定の社員とのやり取りが減った」「特定チームのネットワーク密度が下がった」という変化を早期に検知することで、「予防的な関わり」が可能になります。
部門間連携の「断絶点」を発見する
「部門間連携が悪い」という課題がある組織で、「どこで情報の流れが止まっているか」「どの組織間に連携がほとんどないか」を可視化できます。
「営業と開発の間で情報が流れていない」「本社と支社の連携が薄い」という課題を数値・グラフで示すことで、「どこを改善すべきか」の議論が具体的になります。
プロの人事はこう考える:ONA活用の注意点
「プライバシー」と「信頼」の問題を丁寧に扱う
組織ネットワーク分析には、「誰が誰とコミュニケーションしているか」というデータが必要です。このデータ収集・活用においては、「プライバシーへの配慮」と「社員の信頼」が最重要です。
「メールやチャットの内容を監視するのでは?」という不安を社員が持つと、分析以前に組織の信頼が壊れます。「分析の目的・方法・利用範囲を透明に説明する」「個人の特定ができない形での集計・分析を行う」「データの利用は組織改善目的に限定する」——こういったガイドラインを明確にすることが前提です。
「分析」より「対話」を重視する
組織ネットワーク分析の結果は「現状の可視化」であり、「そこから何をすべきか」という意思決定の材料です。
「ネットワーク分析でこう出た→だからこうする」という機械的な対応ではなく、「分析結果を基に、現場のマネージャーや当事者と対話する」というプロセスが重要です。データは「対話の出発点」であり、「答え」ではありません。
「継続的な測定」で変化を追う
組織ネットワークは「一時点のスナップショット」だけでなく、「時系列変化を追う」ことで価値が増します。
「組織変革施策の前後でネットワーク構造がどう変わったか」「特定部署の離職率増加と同時期にネットワークの変化があったか」——時系列データとして蓄積することで、「施策の効果検証」に活用できます。
明日からできる3つのこと
1. 「誰が情報ハブになっているか」を直感で書き出す(所要時間:30分)
まず、「組織内で最も多くの人から相談を受けている人は誰か」「チームを跨いで調整役になっている人は誰か」を直感で書き出してみましょう。ネットワーク分析ツールを使わなくても、「組織の非公式なキーパーソン」を意識的に把握することから始められます。
2. 「部門間の連携状況」をヒアリングする(所要時間:各30分×3〜5人)
「他部署との仕事のやり取りはスムーズですか?」「情報が流れにくいと感じる部門はありますか?」という質問を複数の社員にヒアリングしてみましょう。定性的な情報からでも、「連携の断絶点」が見えてきます。
3. 「ONA活用事例」を3つ調べる(所要時間:1〜2時間)
組織ネットワーク分析を実際に活用している企業の事例を3つ調べてみましょう。「どんな課題に使ったか」「どんなデータを収集したか」「どんな結果が得られたか」を学ぶことで、自社への適用イメージが湧いてきます。
まとめ:「見えない組織」を見ることが、組織開発の精度を上げる
組織の課題の多くは、「公式な組織図や制度では見えない部分」にあります。
組織ネットワーク分析は、「組織の実際の動き方」を可視化することで、「より精度の高い組織開発・人材配置・離職リスク管理」を可能にします。
ただし、データだけが答えではありません。「データを基に人と対話し、組織の実態を理解する」——この姿勢が、組織ネットワーク分析を「使いこなす」ための核心です。
もっと深く学びたい方へ
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