チームビルディングを人事はどう支援するか——「イベント開催」を超えた関わり方
組織開発

チームビルディングを人事はどう支援するか——「イベント開催」を超えた関わり方

#1on1#評価#研修#組織開発#経営参画

チームビルディングを人事はどう支援するか——「イベント開催」を超えた関わり方

「チームビルディングの研修やイベントをやってみたが、翌週には元の空気に戻ってしまった」——こんな体験を持つ人事の方は多いのではないでしょうか。

チームビルディングと言えば、合宿や懇親会、グループワーク研修を思い浮かべる方が多いと思います。でもそれらは「チームビルディングのきっかけ」にはなっても、「チームが機能するようになる」ことには直結しないケースが多い。

この記事では、チームビルディングが本当に機能するとはどういうことか、人事がどう関わるべきかについてお伝えします。


なぜチームビルディングは難しいのか

「良い雰囲気」と「良いパフォーマンス」は別物

チームビルディングで最も多い誤解が、「仲良くなれば成果が出る」という思い込みです。

チームが仲良くなることは大切ですが、それだけでは高いパフォーマンスは生まれません。「仲は良いが、誰も言いにくいことを言わない」「雰囲気は良いが、重要な意思決定が避けられている」——こういったチームは「ぬるま湯」に陥ります。

高いパフォーマンスを出すチームに必要なのは、「互いへのリスペクト」と「率直な対話」の組み合わせです。表面的な仲良さではなく、「この人には本音を言える」「互いの違いを活かせる」という関係性こそが、チームの強さの源泉です。

チームの問題はマネージャーの課題

多くの場合、チームがうまく機能していない根本には「マネージャーの課題」があります。

目標の共有ができていない、役割分担が曖昧、フィードバックがない、メンバーへの関心が薄い——これらはすべてマネージャーのリーダーシップ・マネジメントの問題です。チームビルディングのイベントを開催しても、マネージャーが変わらなければ、翌週には元に戻ります。

チームビルディングの支援において、人事が「チームのメンバー」ではなく「チームのリーダー(マネージャー)」を支援することが、より高いレバレッジを持ちます。

組織全体の構造がチームを邪魔している

もう一つの問題が、組織全体の構造やシステムがチームの機能を妨げているケースです。

「各自の目標が部門内で完結していて、チームとしての共通目標がない」「評価制度が個人の成果だけを見ていて、チームへの貢献が評価されない」——こういう構造では、どんなにチームビルディングイベントをやっても、「チームで成果を出す」インセンティブが生まれません。

チームビルディングの問題を「チームの問題」として扱うより、「組織設計・評価設計の問題」として扱う必要があるケースも多いです。


よくある失敗パターン

失敗1:「楽しいイベント」で終わる合宿・懇親会

チームビルディングの定番である合宿や懇親会は、「楽しい思い出」を作ることには役立ちますが、「チームとして機能するスキル」を養うことには直結しません。

「バーベキューをして仲良くなれた」という体験はあっても、「職場に戻ったら以前と同じように対立が起きた」という話はよく聞きます。楽しいイベントを否定するわけではありませんが、それを「チームビルディングの完結」と捉えると、問題の本質が見えにくくなります。

失敗2:一度の介入で「完成」しようとする

「チームビルディング研修を実施したから完了」という考え方も問題です。

チームのダイナミクスは、メンバーの入れ替わり・プロジェクトの変化・組織構造の変化などによって常に変化します。一度のイベントや研修でチームが「完成」することはなく、継続的なメンテナンスが必要です。

失敗3:「うまくいっていないチーム」だけに介入する

問題が表面化したチームにだけチームビルディングの支援をすると、「困ったときだけ来る」という人事への印象につながります。

また、すでに問題が大きくなった後の介入は、コストも労力も大きくなります。問題が表面化する前の「予防的なチームビルディング」の方が、長期的なコストパフォーマンスが高いです。


プロの人事はこう考える

「チームが機能する条件」を知っておく

プロの人事がチームビルディングを支援するとき、「高いパフォーマンスを出すチームはどんな特徴を持っているか」という知識を持っておくことが重要です。

Googleのアリストテレス・プロジェクト(2012〜2015年)が特定した高いパフォーマンスを出すチームの特徴は、技術的な優秀さよりも「心理的安全性」「相互信頼」「構造と明確さ」「仕事の意味」「インパクト」の5要素でした。

これは特定のフレームワークへの依存を意味するわけではありませんが、「チームが機能するために何が必要か」という複数の視点を持っておくことが、支援の質を高めます。

マネージャーのマネジメントスキルを支援する

人事がチームビルディングで最もレバレッジを発揮できる関わり方は、「マネージャーの目標設定・フィードバック・会話の質を上げること」です。

具体的には、マネージャーへのコーチング、1on1の質を上げるためのトレーニング、チームの目標設定プロセスへの伴走——こうした「マネージャーを通じた間接的な介入」が、チームの機能改善に最も効果的です。

「人事の仕事の質の7-8割は"知る"の質で決まる」という観点でいえば、人事がまずマネージャーの「チームへの関わり方の実態」を知ることが出発点です。

チームの健全性を定期的に確認する

高いパフォーマンスを出すチームを維持するためには、チームの健全性を定期的にモニタリングする仕組みが必要です。

四半期ごとの短いパルスサーベイ、定期的なチーム振り返り(レトロスペクティブ)、マネージャーへのフィードバック——これらを組み合わせることで、問題が小さいうちに発見し対処できます。

評価設計でチームワークを「報われる」ようにする

チームビルディングと評価設計をセットで考えることが重要です。

個人の成果だけが評価される設計では、「チームへの貢献」「他者の成長支援」「知識の共有」というチームの機能に不可欠な行動が報われません。評価基準に「チームへの貢献」を組み込むことで、チームワークを発揮することが個人の評価にプラスになる設計にする。これが「チームビルディング」の構造的な支援です。


明日からできる3つのこと

1. チームの「健全性サイン」を3つ観察する(継続的に)

日常業務の中で、チームの健全性を示す3つのサインを観察してください。 ①メンバーが会議で率直に意見を言えているか ②困ったときに互いに助けを求めているか ③失敗を報告する心理的安全性があるか

この観察を意識的に続けることが、問題の早期発見につながります。

2. 最も機能していないチームのマネージャーと話す(1時間)

現在、チームとして機能していないと感じるマネージャーと1on1で話してみてください。「チームで最近うまくいっていることとうまくいっていないことは何か」を率直に聞く。マネージャー自身が何を困っているかを知ることが支援の起点になります。

3. チームの目標がメンバー全員に共有されているかを確認する(30分)

あるチームのメンバー3人に「このチームの今期の最も重要な目標は何ですか」を聞いてみてください。全員が同じ答えを言えるかどうかが、チームとしての目標共有度を測るバロメーターです。


まとめ

チームビルディングは「楽しいイベントを開催すること」ではありません。チームが継続的に機能するための条件を整え、マネージャーの力を高め、組織設計でチームワークを促進する——この複合的な取り組みです。

「上手な人だけが集まってもうまくいかないバンドがある」——チームビルディングの本質は、個々の優秀さではなく、互いの関係性と共通の方向性にあります。人事がこの視点でチームに関わることで、組織全体のパフォーマンスを底上げできます。


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吉田洋介

人事図書館 代表 / 著書『「人事のプロ」はこう動く』

リクルートマネジメントソリューションズで14年間・500社以上の組織人事コンサルティングに従事。 上海駐在を経て2021年に独立。2024年に人事図書館を設立(会員740名超)。 「すべての組織に人事のプロを」を理念に、経営と現場をつなぐ人事の実践知を発信している。

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