
チームビルディングを人事はどう支援するか——「イベント開催」を超えた関わり方
目次
- なぜチームビルディングは難しいのか
- 「良い雰囲気」と「良いパフォーマンス」は別物
- チームの問題はマネージャーの課題
- 組織全体の構造がチームを邪魔している
- よくある失敗パターン
- 失敗1:「楽しいイベント」で終わる合宿・懇親会
- 失敗2:一度の介入で「完成」しようとする
- 失敗3:「うまくいっていないチーム」だけに介入する
- プロの人事はこう考える
- 「チームが機能する条件」を知っておく
- マネージャーのマネジメントスキルを支援する
- チームの健全性を定期的に確認する
- 評価設計でチームワークを「報われる」ようにする
- 明日からできる3つのこと
- 1. チームの「健全性サイン」を3つ観察する(継続的に)
- 2. 最も機能していないチームのマネージャーと話す(1時間)
- 3. チームの目標がメンバー全員に共有されているかを確認する(30分)
- まとめ
- もっと深く学びたい方へ
チームビルディングを人事はどう支援するか——「イベント開催」を超えた関わり方
「チームビルディングの研修やイベントをやってみたが、翌週には元の空気に戻ってしまった」——こんな体験を持つ人事の方は多いのではないでしょうか。
チームビルディングと言えば、合宿や懇親会、グループワーク研修を思い浮かべる方が多いと思います。でもそれらは「チームビルディングのきっかけ」にはなっても、「チームが機能するようになる」ことには直結しないケースが多い。
この記事では、チームビルディングが本当に機能するとはどういうことか、人事がどう関わるべきかについてお伝えします。
なぜチームビルディングは難しいのか
「良い雰囲気」と「良いパフォーマンス」は別物
チームビルディングで最も多い誤解が、「仲良くなれば成果が出る」という思い込みです。
チームが仲良くなることは大切ですが、それだけでは高いパフォーマンスは生まれません。「仲は良いが、誰も言いにくいことを言わない」「雰囲気は良いが、重要な意思決定が避けられている」——こういったチームは「ぬるま湯」に陥ります。
高いパフォーマンスを出すチームに必要なのは、「互いへのリスペクト」と「率直な対話」の組み合わせです。表面的な仲良さではなく、「この人には本音を言える」「互いの違いを活かせる」という関係性こそが、チームの強さの源泉です。
チームの問題はマネージャーの課題
多くの場合、チームがうまく機能していない根本には「マネージャーの課題」があります。
目標の共有ができていない、役割分担が曖昧、フィードバックがない、メンバーへの関心が薄い——これらはすべてマネージャーのリーダーシップ・マネジメントの問題です。チームビルディングのイベントを開催しても、マネージャーが変わらなければ、翌週には元に戻ります。
チームビルディングの支援において、人事が「チームのメンバー」ではなく「チームのリーダー(マネージャー)」を支援することが、より高いレバレッジを持ちます。
組織全体の構造がチームを邪魔している
もう一つの問題が、組織全体の構造やシステムがチームの機能を妨げているケースです。
「各自の目標が部門内で完結していて、チームとしての共通目標がない」「評価制度が個人の成果だけを見ていて、チームへの貢献が評価されない」——こういう構造では、どんなにチームビルディングイベントをやっても、「チームで成果を出す」インセンティブが生まれません。
チームビルディングの問題を「チームの問題」として扱うより、「組織設計・評価設計の問題」として扱う必要があるケースも多いです。
よくある失敗パターン
失敗1:「楽しいイベント」で終わる合宿・懇親会
チームビルディングの定番である合宿や懇親会は、「楽しい思い出」を作ることには役立ちますが、「チームとして機能するスキル」を養うことには直結しません。
「バーベキューをして仲良くなれた」という体験はあっても、「職場に戻ったら以前と同じように対立が起きた」という話はよく聞きます。楽しいイベントを否定するわけではありませんが、それを「チームビルディングの完結」と捉えると、問題の本質が見えにくくなります。
失敗2:一度の介入で「完成」しようとする
「チームビルディング研修を実施したから完了」という考え方も問題です。
チームのダイナミクスは、メンバーの入れ替わり・プロジェクトの変化・組織構造の変化などによって常に変化します。一度のイベントや研修でチームが「完成」することはなく、継続的なメンテナンスが必要です。
失敗3:「うまくいっていないチーム」だけに介入する
問題が表面化したチームにだけチームビルディングの支援をすると、「困ったときだけ来る」という人事への印象につながります。
また、すでに問題が大きくなった後の介入は、コストも労力も大きくなります。問題が表面化する前の「予防的なチームビルディング」の方が、長期的なコストパフォーマンスが高いです。
プロの人事はこう考える
「チームが機能する条件」を知っておく
プロの人事がチームビルディングを支援するとき、「高いパフォーマンスを出すチームはどんな特徴を持っているか」という知識を持っておくことが重要です。
Googleのアリストテレス・プロジェクト(2012〜2015年)が特定した高いパフォーマンスを出すチームの特徴は、技術的な優秀さよりも「心理的安全性」「相互信頼」「構造と明確さ」「仕事の意味」「インパクト」の5要素でした。
これは特定のフレームワークへの依存を意味するわけではありませんが、「チームが機能するために何が必要か」という複数の視点を持っておくことが、支援の質を高めます。
マネージャーのマネジメントスキルを支援する
人事がチームビルディングで最もレバレッジを発揮できる関わり方は、「マネージャーの目標設定・フィードバック・会話の質を上げること」です。
具体的には、マネージャーへのコーチング、1on1の質を上げるためのトレーニング、チームの目標設定プロセスへの伴走——こうした「マネージャーを通じた間接的な介入」が、チームの機能改善に最も効果的です。
「人事の仕事の質の7-8割は"知る"の質で決まる」という観点でいえば、人事がまずマネージャーの「チームへの関わり方の実態」を知ることが出発点です。
チームの健全性を定期的に確認する
高いパフォーマンスを出すチームを維持するためには、チームの健全性を定期的にモニタリングする仕組みが必要です。
四半期ごとの短いパルスサーベイ、定期的なチーム振り返り(レトロスペクティブ)、マネージャーへのフィードバック——これらを組み合わせることで、問題が小さいうちに発見し対処できます。
評価設計でチームワークを「報われる」ようにする
チームビルディングと評価設計をセットで考えることが重要です。
個人の成果だけが評価される設計では、「チームへの貢献」「他者の成長支援」「知識の共有」というチームの機能に不可欠な行動が報われません。評価基準に「チームへの貢献」を組み込むことで、チームワークを発揮することが個人の評価にプラスになる設計にする。これが「チームビルディング」の構造的な支援です。
明日からできる3つのこと
1. チームの「健全性サイン」を3つ観察する(継続的に)
日常業務の中で、チームの健全性を示す3つのサインを観察してください。 ①メンバーが会議で率直に意見を言えているか ②困ったときに互いに助けを求めているか ③失敗を報告する心理的安全性があるか
この観察を意識的に続けることが、問題の早期発見につながります。
2. 最も機能していないチームのマネージャーと話す(1時間)
現在、チームとして機能していないと感じるマネージャーと1on1で話してみてください。「チームで最近うまくいっていることとうまくいっていないことは何か」を率直に聞く。マネージャー自身が何を困っているかを知ることが支援の起点になります。
3. チームの目標がメンバー全員に共有されているかを確認する(30分)
あるチームのメンバー3人に「このチームの今期の最も重要な目標は何ですか」を聞いてみてください。全員が同じ答えを言えるかどうかが、チームとしての目標共有度を測るバロメーターです。
まとめ
チームビルディングは「楽しいイベントを開催すること」ではありません。チームが継続的に機能するための条件を整え、マネージャーの力を高め、組織設計でチームワークを促進する——この複合的な取り組みです。
「上手な人だけが集まってもうまくいかないバンドがある」——チームビルディングの本質は、個々の優秀さではなく、互いの関係性と共通の方向性にあります。人事がこの視点でチームに関わることで、組織全体のパフォーマンスを底上げできます。
もっと深く学びたい方へ
組織開発・チームビルディング・マネジメント支援を体系的に学びたい方へ。
人事のプロ実践講座では、組織開発の実践知識を経営目線で習得できます。
チームビルディングや組織開発に悩む人事仲間と情報交換したい方は、人事図書館もどうぞ。
吉田洋介
人事図書館 代表 / 著書『「人事のプロ」はこう動く』
リクルートマネジメントソリューションズで14年間・500社以上の組織人事コンサルティングに従事。 上海駐在を経て2021年に独立。2024年に人事図書館を設立(会員740名超)。 「すべての組織に人事のプロを」を理念に、経営と現場をつなぐ人事の実践知を発信している。
著者の実践講座を見る →関連記事
組織開発エンゲージメントサーベイを「施策につながるデータ」にする
エンゲージメントサーベイを年1回実施しているが、スコアを見て終わりになっているスコアが下がっても、何を改善すれば良いかわからない——サーベイを実施しているが活用しきれていない人事担当者の声をよく聞きます。
組織開発心理的安全性は本当に成果につながるのか——「居心地」より「挑戦」を生む設計
心理的安全性を高めましょうというメッセージが浸透するにつれ、心理的安全性が高い=みんなが仲良くて否定されない職場という誤解が広まっています。
組織開発組織文化を「見える化」する——測定と活用の実践
うちの会社の文化をどう変えたいか、経営はわかっているが、今どんな文化なのかを把握できていない組織文化を変えようとしているが、どこから変えれば良いかわからない——組織文化の変革に取り組む企業で繰り返し聞く課題です。
組織開発組織変革への抵抗と向き合う——人事が知っておくべき「変化の心理学」
新しい制度を導入しようとすると、必ず抵抗が起きる変革を進めようとすると、中間管理職が壁になる——組織変革を推進している人事担当者なら、誰もが経験する悩みです。