組織開発

組織課題の発見が難しい理由。「群盲象をなでる」を脱して全体像を見るための問い方

#1on1#エンゲージメント#採用#評価#研修

組織課題の発見が難しい理由。「群盲象をなでる」を脱して全体像を見るための問い方


「組織課題を特定しようと話を聞けば聞くほど、何が本当の問題かわからなくなってしまって……」

こんな感覚を持ったことはありませんか。

現場マネージャーに聞けば「マネジメントが問題だ」と言う。採用担当者に聞けば「採用基準がずれている」と言う。人事部門の同僚に聞けば「評価制度が機能していない」と言う。どの声も真剣で、どの声も「そうかもしれない」と思える。なのに、話を聞けば聞くほど課題の輪郭がぼやけていく。ノートに書き出したはずの課題リストが、いつの間にか5ページにも6ページにもなって、どこから手をつければいいのかまったく見えなくなってしまった——。

これは、あなたの力量の問題ではありません。むしろ、丁寧に話を聞こうとした結果として起きている現象です。組織課題の特定が難しいのには、構造的な理由があります。そしてその構造を知らずに「もっと話を聞こう」「もっと丁寧に分析しよう」とするだけでは、混乱がさらに深まるだけになってしまうことがあります。

この記事では、組織課題がなぜ見えにくいのかという背景と構造を整理したうえで、よくある失敗パターン、そして「課題の全体像を見る」ための具体的な問い方をお伝えします。明日からすぐに試せるアクションも添えています。

「組織課題と向き合い方が変わるかもしれない」というくらいの気持ちで、一緒に考えてみたいと思います。


なぜ組織課題は「一部からしか見えない」のか

ある研修での会話

ある研修の場での話です。

「御社が今、一番感じている組織の課題はなんですか?」という問いに対して、参加者の一人——ちょうど複数部門の人事を兼務しているベテランの担当者——がこんなことを言いました。

「先週、採用部門・現場・人事と三者にそれぞれ課題を聞いてきたんです。採用部門の人は『採用基準が曖昧だから、そもそも入ってくる人材がズレている』と言う。現場のマネージャーは『マネジメントができていない管理職ばかりだから、せっかく入った人が活躍できない』と言う。人事の同僚は『評価制度が機能していないから、モチベーションが保てない』と言う。全員が真剣で、全員が正しいと思います。でも全部同時に解決なんてできないし、一体どれが本当の問題なのか……」

「みんな正しいんですよ」と答えました。「でも一部しか見えていない。象をなでているんです」

「群盲象をなでる」という話があります。目の見えない人たちが、象の体のそれぞれ違う部分を触って、「これは柔らかい板のようだ(耳)」「いや、太い柱だ(足)」「細長いヘビのようだ(鼻)」と言い合っている。どれも嘘をついていない。でも象の全体像にはたどり着けない——という教訓の話です。

組織課題の特定で起きていることは、まさにこれです。採用部門は採用の観点から正しいことを言っている。現場は現場から正しいことを言っている。人事は人事の立場から正しいことを言っている。全員が象の「一部」を正確に触っている。でも誰も象の全体像を見ていない。

「象の全体像を見ようとすることが人事の役割だ」——これが書籍の中で繰り返し語られているメッセージです。

「症状」と「原因」を混同する構造的な問題

組織課題の特定をさらに難しくしているのが、「症状」と「原因」の混同です。

「離職率が高い」——これは症状です。 「エンゲージメントスコアが低い」——これも症状です。 「採用充足率が下がっている」——これも症状です。

症状は「何かがおかしい」というシグナルであって、「なぜおかしいのか」の答えではありません。「離職率が高い」の原因は、マネジメントの問題かもしれないし、採用のミスマッチかもしれないし、給与水準の問題かもしれないし、職場の人間関係かもしれないし、成長機会の欠如かもしれない。複数の原因が重なっていることも多い。

ところが、組織課題の特定の場面では、「症状」が「課題(=解決すべきこと)」として扱われることが非常に多い。「離職率が高い→離職を防ぐための施策を打とう」という流れになってしまう。

原因を検証しないまま症状に施策をぶつけるのは、熱が出たときに体を冷やすタオルだけを当て続けるようなものです。一時的に楽になることはあるかもしれないけれど、熱の原因が感染症であれば根本的な治療にはならない。

書籍の言葉を借りれば、「問題現象→即・解決手段」はあてずっぽうです。「症状→原因の仮説→原因の検証→解決策」という順番を省略してしまうと、施策を打てば打つほど現場が疲弊し、経営からの信頼が失われていくという悪循環に入ってしまいます。

「一部からしか見えない」のはなぜか

では、なぜ組織課題は「一部からしか見えない」のでしょうか。

理由の一つは、立場が違えば「見えているもの」が違うということです。採用担当者は採用活動の中で見えているものを語る。現場マネージャーは日々の業務の中で感じていることを語る。経営陣は事業の数字を通して見えているものを語る。誰も嘘をついていないし、誰も手を抜いていない。ただ、それぞれが触っている「象の部位」が違う。

理由のもう一つは、話を聞くとき、聞いている側も「フィルター」を持っているということです。人事担当者が評価制度の専門家であれば、どんな話を聞いても「評価制度の問題として見える」傾向が出てしまう。採用担当者であれば採用の文脈で解釈しやすい。無意識のうちに、自分の専門領域や過去の経験から課題を「翻訳」してしまっている。

そして三つ目の理由は、**課題が「重なり合っている」**ことです。採用のミスマッチとマネジメントの問題と評価制度の機能不全は、それぞれ独立して存在しているのではなく、互いに影響しあいながら複合的に問題を生み出していることが多い。ひとつを解決しても、残りの問題が影響して元に戻ってしまうということが起きます。

この構造を理解せずに「もっとたくさん話を聞こう」とするだけでは、課題リストが増えるだけで全体像には近づけません。何かを変えるためには、問い方そのものを変える必要があります。


よくある失敗パターン

構造を理解したうえで、よく見られる失敗パターンを整理しておきます。自分の過去の動き方と照らし合わせながら読んでみてください。

失敗①「一番声の大きい部門の言う原因」を課題にしてしまう

話を聞くとき、「一番熱量を持って語ってくれた人の言葉」が記憶に残りやすい。ある部門長が「マネジメントの問題です」と強く主張すれば、その言葉が「課題の答え」に見えてしまう。あるいは、経営陣が「採用がうまくいっていない」と言えば、それが最重要課題として動き出してしまう。

これは「声の大きさ」や「権限の強さ」に引っ張られた課題設定です。声が大きいことと「本質的な課題に近いこと」は、必ずしも一致しません。

この落とし穴にはまると、施策が特定の部門の主張に対応するものになってしまい、「あの部門のために動いている人事」という印象を与えてしまうことがあります。結果として、ほかの部門からの信頼を失うという副作用も生まれやすい。

ここで思い出したいのが、EP-N01のエピソードです。1on1の時間を年間1万時間確保するという施策を推進した人事担当者が、経営から「コストばかりかかって効果がわからない」と言われてしまったという話があります。「現場の声に応えた」はずの施策が、なぜ経営に届かないのか。

それは、施策が「現場の症状(コミュニケーション不足の体感)」に対応したものであって、「原因(なぜコミュニケーションがうまくいかないのか)」の検証を経ていなかったからです。1on1という手段が目的になってしまい、その施策が事業に対してどのような効果をもたらすかという接続が弱かった。

施策を打つ前に「この施策はどの原因に対して、どんなメカニズムで効くのか」を言語化できていないと、効果の評価もできず、経営への説明もできなくなります。

失敗②「症状に対して大きな施策を一気に打つ」

「エンゲージメントが低い」という症状に対して、「全社エンゲージメント施策」を一気に展開する。「マネジメントが弱い」という声に対して、「全管理職向けの研修プログラム」を半年かけて設計する。

こういった動き方には、いくつかのリスクがあります。

まず、原因の検証なしに大きな施策を打っても、効果が出ない可能性がある。「マネジメントが弱い」の原因が「管理職のスキル不足」であれば研修は効くかもしれないけれど、原因が「そもそも管理職に権限が与えられていない構造」であれば、研修をどれだけやっても変わらない。

次に、大きな施策は動かし始めてから「やはり方向を変えよう」と言いにくい。関係者が増え、予算が確保され、スケジュールが決まってしまうと、「この方向性が正しいかどうか」の問い直しができなくなる。

そして、大きな施策は現場への負荷も大きい。「また人事が何かやり始めた」と受け取られてしまうと、現場の協力が得られにくくなり、結果として施策の効果が出にくくなるという悪循環に入ります。

失敗③「なぜ」を問わずに「解決策」に飛びつく

「問題は何ですか」という問いに「マネジメントが問題です」という答えが返ってきたとき、「ではマネジメント研修をやりましょう」と動き出してしまうパターンです。

「マネジメントが問題」というのは、まだ症状に近い言葉です。そこから「なぜマネジメントがうまくいかないのか」を問わないと、原因に近づけません。

解決策に飛びつくのは、「早く動きたい」という焦りからくることが多い。経営から「早急に対処してほしい」と言われていたり、現場から「いつまで待てばいいんですか」というプレッシャーをかけられていたりすると、「まず動くこと」自体が目的化してしまいやすい。

でも、方向性がズレた施策を素早く実行することは、正しい方向に向かうことよりも状況を悪化させることがあります。「とりあえずやってみました」が繰り返されると、現場は「人事の施策には乗らないほうがいい」という学習をしてしまいます。


人事のプロはどうしているか

では、「象の全体像を見ようとする」人事は、実際にどのように動いているのでしょうか。四つの工夫を紹介します。

工夫①「複数の立場」から同じ課題を聞く

同じ課題について、少なくとも三つの立場から話を聞くことを習慣にしています。

現場マネージャーには、「日々の業務の中で一番困っていること」「部下との関係で難しいと感じること」「もし自分に権限があるとしたら真っ先に変えたいこと」を聞きます。マネージャーは「現場を動かす側」の視点を持っており、施策が機能するかどうかの現実的な感覚を持っています。

現場メンバーには、「仕事の中で何がやりにくいか」「上司や組織に対してどんな不満や要望があるか」「一年前と比べて何かが変わったと感じることはあるか」を聞きます。メンバーは「動かされる側」の視点を持っており、施策が現場にどう伝わっているかという実態を知っています。

経営・事業部長には、「今期の事業を進める上で、人材・組織面でのボトルネックをどこに感じているか」「三年後の組織の姿として何を期待しているか」「人事に対して一番変えてほしいことは何か」を聞きます。経営は事業の数字と連動した視点で組織を見ており、「人事施策が事業にどう効くか」という接続の視点を持っています。

三者の話を聞き終わったとき、「共通して出てくるキーワード」が本質的な課題に近い可能性が高い。たとえば三者全員が「コミュニケーション」という言葉を使っていたとしても、マネージャーは「部下への指示が通らない」という意味で使い、メンバーは「上司に相談できない」という意味で使い、経営は「現場の状況が経営に上がってこない」という意味で使っているかもしれない。それぞれが「コミュニケーション」という言葉で指しているものが何かを丁寧に紐解くと、課題の構造が見えてきます。

逆に「一者だけが強く主張していること」は、その立場特有の課題か、あるいはその人の個人的な経験に引っ張られている可能性がある。「声の大きさ」ではなく「複数の立場を横断して出てくるテーマ」を重視する——これが「象の全体像を見る」ための第一歩です。

複数の立場から聞くことには、もう一つの効果があります。「人事が一方の声だけで動いている」という印象を与えにくくなるということです。「あなたの話も、ほかの立場の人の話も、ちゃんと聞こうとしています」という姿勢が伝わると、各部門からの信頼を得やすくなります。

工夫②「なぜ」を3回繰り返す

「マネジメントが問題です」という答えが出たとき、そこで止まらずに「なぜマネジメントがうまくいかないのですか?」と問い直します。

「管理職の能力が足りていないから」という答えが返ってきたら、「なぜ能力が足りていない状態になっているのですか?」と問います。

「管理職になった後のトレーニングが用意されていないから」という答えが返ってきたら、「なぜトレーニングが用意されていないのですか?」と問います。

「予算がつかなかったから」「誰が担当するか決まっていないから」「そもそも管理職向けの育成は人事の仕事だと認識されていなかったから」——ここまで来ると、「管理職の能力不足」という症状の背景にある、組織の構造的な問題が見えてきます。

この「なぜ」を繰り返すプロセスは、話を聞いた後に自分で行うこともできます。ヒアリングで得た情報をもとに「なぜそうなっているのか」を自分に問い続けて、仮説を深掘りしていく作業です。

注意点があります。「なぜ」を繰り返すことは、原因の追求であって、責任の追及ではありません。「なぜトレーニングがないのか」を問うとき、「担当者が悪かったから」という人への帰属ではなく、「どういう構造や仕組みがそれを生み出しているのか」という構造への帰属を探ることが目的です。「なぜ」を問うことで相手が防衛的になってしまうと、正直な答えが返ってこなくなります。

「なぜ」という言葉そのものではなく、「どんな事情があったのですか?」「背景に何があったと思いますか?」という言い方を使うと、相手が話しやすくなることがあります。目的は原因の構造を理解することであって、問いの形式は状況に合わせて変えていい。

「なぜ」を3回繰り返すことで、最初の答えが「症状」であり、その背景に別の原因があり、さらにその背景に構造的な問題がある、という層の構造が見えてきます。最初の答えが真の原因であることは少ない。

工夫③「数字の経年変化」と「現場の声」を組み合わせる

課題の全体像を見るためには、「数字のデータ」と「現場の声」の両方が必要です。どちらか一方だけでは、見えるものに限界があります。

数字のデータとして活用できるのは、エンゲージメントサーベイのスコア、離職率の推移、採用充足率の変化、残業時間の推移、組織内の異動・配置転換の頻度など、継続的に取得されているものです。これらを3年分〜5年分、横に並べて眺めてみると、「変化のタイミング」が見えてきます。

数字が変化したタイミングは重要なヒントです。「離職率が2年前から急上昇している」なら、「2年前に何があったか」を現場に聞くことで、原因の仮説が立てやすくなります。「エンゲージメントスコアが特定の部門だけ低い」なら、その部門で何が起きているかを丁寧に聞く手がかりになります。

書籍の中で「経年変化を眺めてアイディアを出す」というエピソードがあります。難しい分析ツールを使わなくても、数字を時系列で並べて「この時期に何かある」と気づくだけで、問いの方向性が変わる。データは「答え」ではなく、「問いを立てるためのヒント」として使うということです。

数字だけを見ていると、「何が起きているか」はわかっても「なぜ起きているか」はわかりにくい。逆に、現場の声だけを聞いていると、「体感」はわかっても「全体像」が見えにくい。数字が「地図」だとすれば、声は「現地の案内人の話」です。地図を持ちながら案内人の話を聞くと、地図の意味がわかる。案内人の話を聞きながら地図を確認すると、体感が全体像の中に位置づけられる。

実際に動いている人事担当者の多くは、ヒアリングの前に数字データを準備して「この数字について、現場ではどう感じていますか?」と聞くことで、より深い話を引き出しています。「データを見せながら聞く」という形式は、「何となく感じていること」を言語化する手助けにもなります。

工夫④「仮説→小さな施策→検証」のサイクルを回す

課題の全体像を把握したら、次は解決策の設計です。ここでも「大きな施策を一気に打つ」のではなく、「仮説→小さな施策→検証」のサイクルを意識します。

全社に展開する前に、まず一つの部門や一つのチームで試してみる。そこで効果があれば、なぜ効いたのかを言語化する。なぜ効いたかが言語化できれば、別の部門でも同じ効果が出るかどうかを予測できる。予測が立てられれば、横展開の際に「この部門ではこういう条件が揃っているから同じ効果が期待できる」という説明ができる。

「小さく試す」ことのメリットは、失敗したときの損失が小さいということだけではありません。「成功の要因を言語化できる」「横展開の際に説明ができる」「経営への報告の際に数字で語れる」という、複数のメリットがあります。

逆に「全社展開からスタート」すると、効果が出なかったときに「なぜ効かなかったのか」の検証が難しくなります。一部門でうまくいかなかったなら「この部門の何が違ったのか」を比較できるけれど、全社展開してうまくいかなかった場合は比較対象がないためです。

「小さく試す」ことへの抵抗感として、「小さい取り組みは評価されない」「経営から『本格的な施策を打ってくれ』と言われている」というものがあります。でも、経営が期待しているのは「大きな施策」そのものではなく、「事業への効果」です。「小さく試して効果を確認してから全社展開する」という動き方は、「無駄なコストを使わずに確実に効果を出す」動き方として、経営には理解されやすい。

むしろ「とりあえず全社展開します」と言われるよりも、「まずA部門で試して検証し、3ヶ月後に結果を持ってきます」と言われるほうが、経営からの信頼を得やすいことが多い。


明日からできる具体的アクション

理解を行動に変えるために、明日からすぐに試せるアクションを三つ挙げます。それぞれに所要時間・必要なもの・最初の一歩を添えています。

アクション①「三者ヒアリング」を一課題について実行する

所要時間: 1回あたり30〜60分 × 3回(計1.5〜3時間)

必要なもの: ヒアリング相手のアポイント、ヒアリングシート(課題、なぜそう思うか、いつから感じているか、背景に何があるか)

最初の一歩: 今、社内で「なんとなく課題だと感じているが、まだ整理できていないテーマ」を一つ決める。それについて、現場マネージャー・現場メンバー・経営または事業部長の三者それぞれに30分ずつヒアリングのアポを入れる。

ヒアリングの前に「この課題について、三つの立場から聞いてみる」という目的を自分の中で明確にしておくことが大切です。ヒアリングが終わったら、三者の話で「共通して出てきたキーワード」と「一者だけが言っていたこと」を書き出してみてください。そこに、課題の全体像の手がかりがあります。

アクション②「数字の経年変化」を3年分並べて眺める

所要時間: 2〜3時間(データ収集・整理含む)

必要なもの: 社内の人事データ(離職率、エンゲージメントスコア、採用充足率など、継続的に取得しているデータ)

最初の一歩: 手元にある人事データのうち、3年以上継続して取得しているものを一つ選ぶ。エクセルやスプレッドシートに年次・月次で並べて、折れ線グラフにする。グラフを眺めて「数字が大きく変化しているタイミング」に印をつける。そのタイミングに何があったかを、自分の記憶やメモから探してみる。

「なぜこの時期に数字が変わったのか」という問いを持ちながら現場に聞きに行くと、「そういえばあの時期に……」という話が出てきやすくなります。データは「問いを立てるための材料」として使う、というのが核心です。

アクション③「仮説カード」を一枚書く

所要時間: 30分

必要なもの: メモ帳またはドキュメント(1ページ)

最初の一歩: 今、取り組もうとしている(または取り組んでいる)課題について、「仮説カード」を一枚書く。仮説カードに書く内容は次の通りです。

  • 症状(何が起きているか): ___
  • 仮説(なぜ起きていると思うか): ___
  • 根拠(なぜそう思うか): ___
  • 検証方法(どうすれば仮説が正しいか確かめられるか): ___
  • 小さな施策(まず何を試すか): ___
  • 評価方法(効果をどう測るか): ___

この「仮説カード」を書こうとすると、「症状」と「原因の仮説」が分けて整理されていない、根拠が曖昧、検証方法が思いつかない、という状況が見えてきます。書けない部分こそが、まだ解像度が低い部分です。書けない部分を埋めるために何を確認すればいいかが、次のアクションになります。


まとめ

組織課題の特定が難しいのは、「課題を見つける力が足りないから」ではありません。組織の課題は構造として「一部からしか見えない」ものであり、「症状」と「原因」が混在していて、複数の要因が絡み合っているからです。

「群盲象をなでる」状態から抜け出すには、「複数の立場から聞く」「なぜを繰り返す」「数字と声を組み合わせる」「小さく試して検証する」という四つの工夫が効いてきます。どれも、難しいスキルではありません。問いの立て方と情報の集め方を変えるということです。

「課題の全体像を見ることが人事の役割だ」と言っても、最初から完璧な全体像が見える人はいません。複数の立場から話を聞き、なぜを繰り返し、数字のデータと照らし合わせ、小さな施策を試してみる——そのサイクルを繰り返すことで、少しずつ課題の解像度が上がっていきます。

「症状から原因へ、小さく試して改善する」。この視点が、人事の仕事に対する経営からの信頼をつくっていく基盤になります。

一人で抱え込まずに、仲間と一緒に考えながら実践を積み重ねていくことが、この問い方を自分のものにしていく一番の近道だと思っています。


▶ 人事のプロ実践講座

組織課題の特定から施策設計まで、「症状から原因へ」の思考プロセスを仲間と実践的に学べます。「なぜを問う」「複数の立場から見る」「仮説検証を回す」——こうした人事の思考法を、ケーススタディと対話を通じて深めていける場です。

講座の詳細・申込みはこちら


人事図書館は、人事をはじめとする「人・組織課題に向き合うすべての人」のための学びと交流の場です。仲間と学びで、未来を拓く。あなたの一歩を応援しています。

#人事 #組織開発 #組織課題 #人事施策 #人事図書館

0

経営視点で考える人事の実践力を磨きませんか?

書籍『「人事のプロ」はこう動く』著者による実践講座。現場で使える経営視点の人事力を身につけます。

関連記事

組織開発

「教え合える組織」を作るためにピアラーニングをどう設計するか

研修を実施しても、日常業務に活かされない知識・スキルが特定の人に集中していて、組織としての力になっていない先輩から後輩への技術伝承がうまくいかない——こういった学習・育成の課題を抱えている組織では、ピアラーニング(仲間同士で学び合う仕組み)への注目が高まっています。

#評価#研修#組織開発
組織開発

組織の見える化ができていないと、課題への打ち手が「感覚頼み」になる

なんとなく雰囲気が悪い気がするけど、何が問題かよくわからない経営から"組織の問題を解決してほしい"と言われたが、何から手をつければいいかわからない——こういったモヤモヤを抱えながら仕事をしている人事の方は多いのではないでしょうか。

#1on1#エンゲージメント#採用
組織開発

組織文化を変えようとして「空振り」する人事に足りていないもの

会社の文化を変えたいもっとチャレンジできる組織にしたい心理的安全性の高い文化を作りたい——組織文化の変革は、多くの人事が取り組みたいと思っているテーマです。でも同時に、どうすればいいかわからないやってみたけど何も変わらなかったという声もよく聞きます。

#エンゲージメント#採用#評価
組織開発

人事部門の組織設計。「オペレーション人事」から「戦略人事」への転換

人事部門がいつも忙しくて、なかなか戦略的な仕事ができない。こんな状態で本当にいいのかな

#1on1#エンゲージメント#採用