
エンゲージメントを上げる鍵はマネジャーにある——人事が支援できること
目次
エンゲージメントを上げる鍵はマネジャーにある——人事が支援できること
「エンゲージメントサーベイで、部門によってスコアがこんなに違う理由はなんですか?」
この問いへの答えは、多くの場合「マネジャーの違い」です。
エンゲージメント研究で繰り返し確認されていることがあります。「社員のエンゲージメントに最も影響を与えるのは、直属の上司との関係」というデータです。給与・福利厚生・会社のブランドよりも、「今の上司と働き続けたいか」の方が、エンゲージメントへの影響が大きいことが示されています。
人事としてエンゲージメントを上げたいなら、「マネジャーを支援すること」が最も効果的な打ち手のひとつです。この記事では、人事がマネジャーにどう関わるかを考えます。
なぜマネジャーがエンゲージメントの鍵なのか
社員が「この会社で働き続けたい」と思う理由の多くは、「今のチームが好き」「上司に信頼されている」「自分の仕事が認められている」という体験に基づいています。
これらは全て、マネジャーの行動によって左右されます。
- 1on1で話を聞いてくれているか
- 良い仕事を具体的に認めてくれるか
- キャリアについて一緒に考えてくれるか
- 困ったときにアクセスしやすいか
- 部下の仕事に過度に干渉しないか
エンゲージメントスコアが高い部門のマネジャーに共通するのは、「部下を信頼し、適切に関与している」ことです。
マネジャーが「エンゲージメントを下げてしまう」パターン
意図せずエンゲージメントを下げているマネジャーのパターンを把握することが、人事の介入設計に役立ちます。
パターン1:マイクロマネジメント
細かいことまで指示・確認する上司の下では、「自律性」が奪われます。「自分で考えて動ける」という感覚が薄れると、エンゲージメントが低下します。
パターン2:フィードバックを与えない
「仕事を任せるが、何も言わない」というマネジャーは、部下に「自分の仕事が正しいかわからない」「評価されているのかわからない」という不安を与えます。
パターン3:キャリアの話を避ける
「キャリアの話は人事に任せている」というマネジャーは多い。でも、日常の業務の中でキャリアの話ができる上司の存在は、社員の「成長実感」に大きく影響します。
パターン4:感情的なコミュニケーション
「怒鳴る・無視する・感情的に責める」という行動は、即座にエンゲージメントを下げ、退職リスクを高めます。これはハラスメントとも隣接する問題です。
人事がマネジャーを支援するための3つのアプローチ
アプローチ1:データを渡す
マネジャーが自分のチームのエンゲージメントスコアを把握できていることが出発点です。「全社平均と比べて自分のチームはどうか」「昨年と比べてどう変わったか」というデータを、個々のマネジャーにフィードバックします。
「データを見せることで、マネジャーが自分の行動を変えるきっかけになる」——これが人事からの最初の介入です。
アプローチ2:スキルを高める機会を作る
エンゲージメントに影響する「マネジャーのスキル」——1on1の進め方、フィードバックの仕方、キャリア対話の仕方——を高める機会を設けます。
研修・勉強会だけでなく、「マネジャー同士が悩みをシェアし合う場」も有効です。「うちのチームもそういう問題がある」という共通経験が、「自分だけが失敗しているわけではない」という安心感につながります。
アプローチ3:個別にサポートする
スコアが特に低い部門のマネジャーに対して、人事が個別に関わります。「サーベイ結果を見て、何か気になることはありますか?」という問いかけから対話を始め、「何が起きているか」「何をしたらいいか」を一緒に考えます。
「人事が責める」ではなく「一緒に考える」姿勢が、マネジャーが人事を頼れる関係を作ります。
マネジャーも「支援が必要な存在」
「管理職が大変すぎる」「管理職になりたくない若手が増えている」という声は、多くの企業で聞かれます。
マネジャーは「エンゲージメントの鍵」である一方で、自身もプレッシャーにさらされています。「マネジャーのエンゲージメント」が低い状態では、部下のエンゲージメントを高める余裕もありません。
人事として、マネジャーが「支援される側」でもあることを忘れないことが重要です。
経営への説明:マネジャー支援投資の効果
「マネジャー研修・支援に○万円かける」という提案を経営にする際、エンゲージメントと離職コストの相関で語ると説得力が上がります。
「エンゲージメントスコアが低い部門は離職率が○%高い。離職コストを試算すると年間○百万円。マネジャー支援で1部門のスコアが改善されれば、離職○名の抑制が期待できる」という形です。
おわりに
エンゲージメントを高めるための「全社施策」も重要ですが、「マネジャー一人ひとりの行動変容」にこそ、最大のレバレッジがあります。人事がマネジャーを孤立させず、データ・スキル・対話で支援すること——それが、組織のエンゲージメントを底上げする道だと思っています。
エンゲージメント施策とマネジャー支援の実践をもっと深く学びたい方は、人事のプロ実践講座でご一緒しましょう。
吉田洋介
人事図書館 代表 / 著書『「人事のプロ」はこう動く』
リクルートマネジメントソリューションズで14年間・500社以上の組織人事コンサルティングに従事。 上海駐在を経て2021年に独立。2024年に人事図書館を設立(会員740名超)。 「すべての組織に人事のプロを」を理念に、経営と現場をつなぐ人事の実践知を発信している。
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